低価格化が止まらない中国に「500元スマホ時代」がやってくる山根康宏の中国携帯最新事情(2/2 ページ)

» 2013年12月09日 16時22分 公開
[山根康宏,ITmedia]
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3Gなら3000円台のスマートフォンも

 1000元以下の低価格スマートフォンはどれくらい販売されているのだろうか。中国の大手ショッピングサイト「中関村在線」(ZOL)で価格別の製品数を調べてみた。2013年に発売、または、発売予定のスマートフォン製品総数は639モデル。最も多いのが501元から1000元の価格帯で186モデルある。なんと、500元以下のモデルも71機種と少なくない。これら1000元以下のモデルは257機種と、全製品数の40パーセントに及んでいる。最低価格モデルは200元(約3360円)で、フィーチャーフォンより安いという逆転現象が起きている。

ZOLで販売している2013年11月時点の中国国内販売スマートフォンの価格とモデル数。1000元以下の製品は257モデル確認できた(写真=左)。最安値だったモデルは海信(Haisense)の「T912」で200元。4インチディスプレイで480×800ピクセルの解像度。OSはAndroid 2.3で3Gと無線LANが利用できる

 ここまでスマートフォンの低価格化が進むと、通信事業者側も端末をプリペイドの2年契約縛りで販売する必要がなくなってくる。単体一括購入で500元前後のスマートフォンならば、月給が1000元程度の工場勤務者であっても買えないことはない。通信事業者も最近は契約不要で購入できる低価格品の販売(中国語では「免合約」という)にも注力しており、中低所得者層のスマートフォン移行を促している。

 一方、スマートフォンメーカーとしても、低価格モデルを用意することで、ユーザーに注目してもらえるようになる。オンラインショッピングの利用が増える中国では、各メーカーが自社製品をオンライン販売しているが、1000元以下という低価格はアピールしやすくユーザーに与えるインパクトも大きい。

中国移動では契約不要のスマートフォンを単体一括購入価格339元(約5700円)から販売している(写真=左)。各メーカーはオンライン販売も重視している。その販売施策では「低価格」がユーザーに最も効果のある訴求ポイントになる(写真=右)

999元以下モデルに特化する「小辣椒」

 ここ1〜2年で次々と中国で登場したスマートフォン新興メーカーのラインアップは1000元台のミドルレンジモデルと1000元以下のエントリーモデルの2本立てとするケースが多い。しかし、「小辣椒」(Xiao)ブランドでスマートフォンをオンライン販売する深セン語信時代通信は、取り扱うすべてのモデルで実売価格を999元以下に設定している。その中にはクアッドコアプロセッサ搭載モデルもある。

 最上位モデルの「小辣椒Q1」は動作クロック最大1.3GHzのクアッドコアプロセッサと、4.7インチHDディスプレイを搭載して、800万画素(メイン)200万画素(イン)のカメラを内蔵、システムメモリとして使うRAMが1Gバイトにストレージとして使うフラッシュROMが4Gバイトというスペックだ。このスペックで999元という価格は、Xiaomiが1999元でハイエンドスマートフォンを発表したときと同じ衝撃を関係者とユーザーに与えている。2013年の夏には、Qualcommのエントリープロセッサ「MSM8225Q」を搭載した「小辣椒M1」を699元で発売している。

 Xiaoのスマートフォンは、携帯電話のオンライン販売大手の北斗星が取り扱っており、深セン語信時代通信は、ECサイトの構築すら自社で行わず、新製品はネット上で先行予約で受付するなどXiaomiと同じ手法で売り上げを伸ばしている。なお、北斗星もXiaoブランド以外のスマートフォンメーカーと提携するなど、数量限定で低価格モデルの売り切りという新たな販売方法の確立を目指している。

999元でクアッドコアCPU搭載の小辣椒Q1(写真=左)。携帯電話オンライン販売大手の北斗星が取り扱う小旋風F9。499元で1.3GHzクアッドコアプロセッサと4.5インチFWVGAディスプレイを搭載する(写真=右)

山寨機に打撃を与え、さらに海外に進出も

 中国メーカーの低価格スマートフォンが増えたことで打撃を受けているのが山寨機だ。コピー品というイメージのある山寨機だが、それは正しい認識ではなく、政府の認可を受けない「未認可ゲリラ製造端末」を意味する。その山寨機は、大手メーカーには太刀打ちできない低価格品で一時期シェアを大きく伸ばしていったが、低価格スマートフォン時代となったことで山寨機市場が一気に縮小している。

 かろうじていくつかのメーカーが製造を続けているものの、正規メーカー品が1000元や500元で購入できる状況で、保証もなく品質も悪い山寨機を選ぶメリットはいまやなにもない。山寨機の主たる販路だったオンライン販売も正規メーカーが参入してきたいまでは、山寨機は製品を売る場所すら失ってしまった。今や中国の地方都市の屋台が正規メーカーの500元のスマートフォンを販売する状況で、山寨機が生き残る道はない。

 山寨機をも駆逐する低価格のスマートフォンは、中国以外の新興国や途上国で需要が高まっている。先進国のようにSIMロックをかけ、あとから利用料金で端末割引代金を回収する販売モデルができない国にとって、単体で1万円以下の製品は大きな魅力だ。

 すでに東南アジアでは中国製のスマートフォンを自国ブランドで販売する企業が増えている。今後、ローカルブランドのスマートフォンが新興国では一気に増えていくだろう。低価格モデルで力をつけたメーカーが、いずれはミドルレンジ、そしてハイエンドモデルで大手メーカーに対抗する時代がくるかもしれない。

深センの山寨機問屋ビル。Androidスマートフォンもあるものの、店舗そのものが毎月のように撤退している(写真=左)。フィリピンでは中国メーカーのOEMによる低価格スマートフォンがこの1年で急激に増えた(写真=右)

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