端末と通信を分離するワイモバイル、統合するフリービット――その理由は?石野純也のMobile Eye(11月10日〜21日)(2/3 ページ)

» 2014年11月21日 21時28分 公開
[石野純也,ITmedia]

2台目、3台目需要を掘り起こす「シェアプラン」

 Nexus 6を同社の“顔”に据える一方で、発表会では新たに「シェアプラン」の詳細も明かされた。シェアプランは、ワイモバイル契約者が自身の契約しているデータ量を、ほかのSIMカードと分け合えって使えるプランのことで、追加で3枚、合計4枚のSIMカードを発行できる。3枚まで追加可能なSIMカードは、データプランのみ。音声通話には利用できない。

photophoto プラス3回線までデータ通信量を分け合える「シェアプラン」を導入する

 ここまでの内容は他社と大きな差はない。ドコモやソフトバンクは新料金プランとともに家族や個人でシェアできる料金プランを開始し、KDDIも「データシェア」をキャンペーンとして提供中だ(このキャンペーンは延長に延長を重ね、いまだに正式プラン化していない)。ただし、いずれも基本使用料が比較的高い。ドコモの場合、個人で2回線シェアする場合は、「2台目プラス」への加入が必要で、この定額料が月額500円。さらに、2台目の端末は、いずれかの料金プランに加入しなければならず、基本使用料がスマートフォンなら2700円、タブレットなら1700円、ルーターやデータカードなら1200円かかる。特定のデバイスだけを対象にした「デバイスプラス500」や「デバイスプラス300」なら、それぞれ500円、300円と料金は安いが、通常は、シェアのために1700円から3200円のお金がかかる。インターネットに接続するために、さらにspモードやmoperaUを契約しなければならない。

 ほか2社の詳細は割愛するが、「それなりの料金がかかる」という点はドコモと同じだ。これに対し、ワイモバイルのシェアプランは、よりユーザーフレンドリーな料金設定になっている。シェアプランには980円という基本使用料が設定されているが、月7Gバイトまでデータを使える「スマホプランL」にひもづけると、割引がかかり料金が相殺される。つまり、無料で最大3回線の小回線を持てるというわけだ。月3Gバイトの「スマホプランM」では、割引が490円で合計490円、月1Gバイトの「スマホプランS」では980円がそのままかかる。低容量のプランで料金がかかるのは残念だが、それでも他社より安い。また、スマートフォンにタブレットやWi-Fiルーターを加えることを考えると、大容量プランを選択するのが現実的。シェアの恩恵を受けるユーザーは多いだろう。

photo 「スマホプランL」の場合、シェアプランの追加料金は一切かからない。サービス開始は12月4日

 このシェアプランを生かす端末も、ワイモバイルから発表された。1つ目が8インチタブレットの「MediaPad M1 8.0」。Huawei製の端末で、SIMロックフリーでも販売されているモデルだが、SIMロックフリー版がAndroid 4.2なのに対し、ワイモバイル版はAndroid 4.4を採用しているのが大きな違いだ。このタブレットは、端末単体でも購入できるようにしていくという。残念ながらMediaPad M1 8.0にはSIMロックがかかっているため、単体で入手しても用途は限られてしまうが、とりあえず端末を買っておき、モバイルネットワークを使いたくなったらシェアプランを契約するといったことは可能になる。

photophoto Huaweiの「MediaPad M1 8.0」を導入する。SIMロックフリー版との大きな違いは、Androidのバージョン。単体販売も行うが、残念ながらSIMロックはかけられている

 もう1つの「Car Wi-Fi」は、よりシェアプラン向きの端末となっている。この端末はカテゴリー的にはWi-Fiルーターだが、通常の製品との大きな違いは、車のシガーソケットに挿しっぱなしにしておく用途を想定していること。常に持ち歩くわけではなく、車に乗ったときだけ使うため、わざわざ専用のデータ回線は契約しづらい。逆に考えると、データシェアプランがあるからこそ導入できた端末といえるだろう。

photophoto 車のシガーソケットに挿したまま利用する「Car Wi-Fi」

 取締役兼COOの寺尾洋幸氏が「MediaPad、Car Wi-Fiなどさまざまなインターネットにつながるデバイスが出てくるが、ネットワークにつなぐためには使いやすい料金にする必要がある」と述べているように、ここにはスマートフォンにとどまらず、インターネットに接続するデバイスを気軽に使えるようにしたいという狙いがある。「ビジョンとして、あらゆるものをインターネットにつないでいこうというのがある」(同)というように、その先にはIoTも見すえていることもうかがえる。

photo シェアプラン導入の狙いを語る、寺尾COO

 寺尾氏が「1個1個の端末を売るときに回線を付けるのではなく、我々はSIMカードだけを販売する形になる」と語っていたように、この発表会でワイモバイルが打ち出したのは、端末や料金プランにとどまらない。明確に、端末と回線を分離するというビジネスモデルを示したのだ。端末購入に伴う回線の割引という複雑さを廃し、その分料金を下げ、複数端末でも使いやすいシェアプランを導入したというわけだ。従来型の仕組みと、ワイモバイルの仕組みのどちらが選ばれるかは実際にプランが始まってみるまで分からないが、ユーザー間の不公平感が小さくなる点は高く評価できる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年03月29日 更新
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年