端末と通信を分離するワイモバイル、統合するフリービット――その理由は?石野純也のMobile Eye(11月10日〜21日)(3/3 ページ)

» 2014年11月21日 21時28分 公開
[石野純也,ITmedia]
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垂直統合型を志向するフリービット、データの増量やフランチャイズの仕組みを発表

photo 1周年を迎えたフリービット。11月17日に開かれた記者会見には、石田CEOが登壇。これまでの歩みを解説した

 端末と通信を分離する方向にかじを切ったワイモバイルに対し、MVNOのフリービットは逆に垂直統合型を強く志向している。同社は、独自端末の「PandA」を開発、SIMカードとセットにして月額2000円(端末が一括払いの場合は1000円、いずれも税別)でサービスを提供する。代表取締役社長CEOの石田宏樹氏は、今のMVNOの現状を「それぞれ(端末とネットワーク)がブラックボックスになっている」と批判。iOS 8以降を適用したiPhone、iPadでケイ・オプティコムが提供するMVNOの「mineo」が接続不能になった事例を挙げ、「今後はこのような話がどんどん出てくる」と予言した。「MVNOは売り切りではなく、継続サービス」という石田氏だが、それを体現するのが端末からネットワークまでを一手に手掛ける、垂直統合型のビジネスモデルというわけだ。

photophoto 端末、ネットワーク、販売がバラバラで、それぞれがそれぞれに対してブラックボックスになっているのが、今のMVNOの現状だと語る石田氏。それが象徴的に表れたのが、iOS 8でmineoに接続できなくなる問題だ

 ただし、MVNOはMNOに比べ、規模は小さくなりがち。何十というラインアップの端末を並べ、料金プランの選択肢を多彩にすると、運営のコストがかさんでしまう。そこで同社は端末をPandAの1機種に絞り、ソフトウェアを進化させるという方向を打ち出した。料金プランも基本は1種類。選択肢は、そこにオプションを付けるかどうかという点ぐらいだ。フリービットはサービス開始からちょうど約1年が経過したところだが、こうした分かりやすさが功を奏し、「50代以上のユーザーが約40%、高齢者からお子様まで、幅広い領域のお客様を獲得できている」という。

photophoto フリービットは、SAP型を標ぼうし、端末開発から販売までを一手に手掛けるビジネスモデルを採用。価格や分かりやすさが功を奏し、50代以上のユーザーも多い

 とはいえ、不満がゼロだったわけではない。フリービットの月1000円という料金は、速度を制限したうえで実現しているもの。具体的には、250kbpsから350kbpsに速度を絞り、サービスを行っている。アプリごとに速度を変えるなど、ネットワークの最適化を図っているというが、この部分が不満につながっていたことも事実だ。石田氏は「PandAに不満足な理由は、動画やアプリのダウンロードが遅いなどといった点。そこに対する不満が23%あった」と明かし、11月17日の発表会で、対応策を明かした。

 新たに発表したのが、平常時の通信速度を向上させること。250kbpsから300kbpsだった速度を、500kbpsから600kbps程度にアップする。また、フリービットはこうした制限を解除して、HSPAの速度をフルに出せる「高速チケット」を100Mバイト、250円で販売していが、ここにもテコ入れを図った。新たな容量と価格は、1Gバイトあたり300円。ユーザーが自分で条件を決めて、高速チケットを自動的に適用できるようにする「マイプラン設定」という仕組みも導入する。

photophotophoto 通常時の速度向上、高速チケットの増量、マイプラン設定といった施策を発表した

 同社はユーザーの接点として、ショップの強化も行っている。旗艦店の「ATELIER」は、福岡を皮切りに、名古屋や東京にも出店。移動型店舗の「STAND」を開発するなど、販売方法でも独自性を打ち出している。発表会で新たに披露されたのが、フランチャイズ方式。オーナーが出資することで、フリービットの販売店を開ける仕組みで、これも含め2015年末までに300店舗を目指す。このタイミングで発表したのは、「1年間で黒字化が完全に視野に入ってきた。それだったら仲間になる方を増やしても失礼、無責任にならないのではないか」という理由からだ。

photo 店舗拡大の一環として、フランチャイズ制度を導入する

 フリービットは端末まできちんと作り込み、顕著な形で垂直統合型を志向しているが、より緩やかに各種サービスをセットにして提供するMVNOも増えている。例えば、U-NEXTは、U-mobileのSIMカードに、自社のコンテンツサービスをバンドルしている。NTT東西が提供する光コラボレーションを利用する意向もあり、コンテンツやサービスを軸にユーザーの各種回線を自社に一本化させていくことを狙う。また、ISPを中心に、光の卸サービスの活用を検討しているMVNOは多く、固定を軸にモバイルのユーザーを獲得するという流れも本格化しそうだ。

 端末と回線を分離し、MVNOを推進するのは、通信事業者を監督する総務省の方針。その点では、ワイモバイルの発表はこうした動きを先取りしているともいえる。逆にMVNOは、今のような料金競争に明け暮れていては先が見えない。コンテンツやサービスなどを軸に、今のMNOより小さな垂直統合は今後も増えてくるはずだ。MNOとMVNOのビジネスモデルが大きく変わろうとしている中で、ワイモバイルやフリービットがその先駆けとなることができるのか、両社の動向には今後も注目していきたい。

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