3キャリアが夏モデル発表――スマホ、フィーチャーフォン、サービスの違いは?石野純也のMobile Eye(5月11日〜22日)(1/2 ページ)

» 2015年05月24日 17時40分 公開
[石野純也ITmedia]

 5月13日に開催されたドコモの発表会を皮切りに、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社が夏モデルを一斉に発表した。各社とも、新端末に加え、新サービスを目玉に据えてきたのが特徴。くしくも、キャリアから見たときの上位レイヤーともいえる、サービスに力を注いだ発表会になった。今回の連載では、3社の発表会から見えてきた、携帯電話市場の今を解説していく。

進むスマートフォンの「同質化」にどう対抗していくか

 「端末自身での差別化はなかなか難しい。iPhoneを独占でやっていた時代はあったが、今はたとえどこかのメーカーと組んで独占商品を作るといっても、AndroidかiOS(に選択肢が限られる)。そこを求める必要はない」

 こう語るのは、4月にソフトバンクモバイルの代表取締役社長に就任した、宮内謙氏。ソフトバンクとして初のGalaxyスマートフォンを取り扱い、Androidに注力していく宣言をした発表会だったが、やはり端末だけでの差別化は難しくなっているという。実際、3社のラインアップを見ると分かるとおり、サムスンの「Galaxy S6 edge」に加え、ソニーモバイルの「Xperia Z4」は共通で取り扱っており、中身に大きな差はない。ロゴの位置など、違いはわずかになっているのが現状だ。キャリアごとに画面サイズや機能は異なるが、シャープのAQUOSもフラッグシップモデルは3社で取り扱われている。

photo ソフトバンクモバイルの新社長に就任した宮内氏。発表会では孫社長時代にはなかなか聞けなかった本音トークも多数飛び出し、居合わせた記者を驚かせた
photophoto ソフトバンク初のGalaxyスマートフォンとなる「Galaxy S6 edge」。これで、Galaxyも3社から出そろった(写真=左)。ロゴの位置やプリインストールされるアプリに差はあるが、「Xperia Z4」も3社が取り扱う。写真はソフトバンク版(写真=右)
photophotophoto ディスプレイサイズや指紋センサーなど、機能はキャリアごとに異なるが、「AQUOS」ブランドのスマートフォンも3社共通のラインアップ。左からドコモ向けAQUOS ZETA SH-03G、au向けAQUOS SERIE SHV32、ソフトバンク向けAQUOS Xx

 では、3社のラインアップがまったく同じかというと、あながちそうでもない。各社とも差別化の軸を模索している様子はうかがえる。ソフトバンクの宮内氏は、シャープの「AQUOS CRYSTAL 2」を「ソフトバンク限定モデルの第2弾」と紹介。Sprintと共同開発したAQUOS CRYSTALがおサイフケータイやワンセグに対応したモデルで、フレームレスのディスプレイは他社のAQUOSとは大きく異なる。KDDIも、「isai vivid」や「HTC J butterfly」といった他社にないモデルを用意。「メーカーとの共同開発というスタンスは変わっていない」(KDDI関係者)といい、より開発に深く関わることで差別化を進めている。「TORQUE」や「URBANO」といった京セラ製の端末も、KDDIならではだ。

photo Sprintと共同調達した「AQUOS CRYSTAL」の後継機である「AQUOS CRYSTAL 2」。こちらは共同調達ではないというが、その分、日本向けの機能も盛り込まれている
photophoto KDDIの「isai vivid」(写真=左)や「HTC J butterfly」(写真=右)は、メーカーとの共同開発路線を踏襲。グローバルで人気のモデルに、日本ならではのエッセンスを投入している
photophoto 「TORQUE」(写真=左)や「URBANO」(写真=右)も、auにしかない京セラモデルで個性的だ

 ドコモは、夏モデルのテーマとして「生体認証」に焦点を当て、虹彩認証に世界で初めて対応した「ARROWS NX」を真っ先に紹介。ドコモの各種サービスでも、ARROWS NXをはじめとする生体認証対応機種では暗証番号やID、パスワードの入力を不要にするなど、サービスともうまく連動させた。

photophoto 虹彩認証に世界で初めて対応した富士通製の「ARROWS NX」。ドコモだけが取り扱う(写真=左)。サービス側も生体認証に対応させ、利用の障壁を低くしていく方針だ(写真=右)

 さらに、「戦略的な商品」(ドコモ関係者)として価格を抑えたシャープ製の「AQUOS EVER」を用意する。AQUOS EVERは、チップセットにSnapdragon 400を採用したミッドレンジモデル。ベースとなるスペックはSIMロックフリーモデルが採用するものに近いが、おサイフケータイや防水には対応しており、「必要な機能が全部入っているが、お求めやすい」(NTTドコモ 代表取締役社長 加藤薫氏)のが特徴だ。ハイエンド一辺倒になりがちだったキャリアモデルだが、ベースとなる機能が底上げされてきたことで、価格を重視するという流れも出てきた。その狙いを、加藤氏は次のように説明する。

 「最新技術をどんどん入れてきて価格が上がってきたが、その中でよく使われるものを上手く、かつ安く入れるフェーズになってきた」

photophoto ミッドレンジモデルの「AQUOS EVER」。価格を抑えた、戦略商品という位置づけのモデルだ(写真=左)。夏モデルの狙いを語る、ドコモの加藤社長(写真=右)

 また、ドコモは2年前(2013年)の夏モデルで、「Xperia A」と「GALAXY S4」を「ツートップ」として優遇する戦略を採用してきた。その割賦が終わるのが、2015年の夏商戦だ。AQUOS EVERに加え、「Xperia Z3 Compact」世代のチップを使ってコストを抑えた「Xperia A4」をそろえたのは、ツートップからの買い替えを促す狙いもあるという。

photo ツートップ戦略の受け皿を狙う「Xperia A4」。コンパクトモデルで、機能は「Xperia Z3 Compact」とほぼ同等

 価格が重視されるのは、タブレットも同様だ。KDDIの代表取締役社長 田中孝司氏は、「タブレットは安いものと付加価値のある高いものに二極化している」と分析。世界最薄、最軽量をうたう「Xperia Z4 Tablet」に加え、auオリジナルブランドで展開する京セラ製の「Qua tab」をラインナップに加えた。スマートフォンの画面をそのままタブレットに表示させる連携機能の「auシェアリンク」に対応しており、戦略として掲げるマルチデバイス化を推進していく方針だ。

photophoto マルチデバイスを戦略の1つに掲げる、KDDIの田中社長(写真=左)。価格を重視しているという、京セラ製の「Qua tab」(写真=右)

 「少しソフトバンクより買いやすく、データセントリック(データ中心)なプラン」(宮内氏)というY!mobileでも、タブレットで新たな軸を打ち出している。ソフトバンクモバイルはY!mobileブランドで、Microsoftのタブレット型PC「Surface 3」を取り扱う。「LTEのチップから、販売計画、マーケティング計画までずっと一緒にやってきた」(ソフトバンクモバイル 専務取締役 エリック・ガン氏)といい、夏商戦の目玉に据えた。

photo Microsoftの会見に登壇したガン氏
photophotophoto Windows 8.1を搭載した、Microsoft製のタブレット型PC「Surface 3」をY!mobileブランドで独占販売する。専用プランも用意したが、必ずしも回線契約する必要はないという

 もともとワイモバイルでは、PCを「Pocket WiFi」とセットで販売していた店舗も多く、「『Surface Pro 3』とのセット率も高く、セットではなく、中に(通信を)入れてもらいたいという声も多かった」(ガン氏)。追加料金が無料(プランによってはキャンペーン扱い)で、最大3回線の子回線を持てる「シェアプラン」とも相性がいい。Y!mobileは「Microsoftともリンクしている」(宮内氏)といい、アプリがPCと共通化される見込みのWindows 10搭載スマートフォンにも意欲を見せる。ソフトバンクが他社並みにAndroidをそろえる一方で、新規開拓はワイモバイルが担うというのがソフトバンクの戦略のようだ。

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