360モバイル・セキュリティは8月18日、同社の総合セキュリティアプリ「360セキュリティ」の日本市場における戦略説明会を開催した。
360モバイル・セキュリティは、中国の大手セキュリティ企業「奇虎360(Quihoo 360:チーフーさんろくまる)」のグループ企業で、香港を拠点にモバイルセキュリティアプリの開発を行っている。
360セキュリティは、全世界で2億人のユーザーにダウンロードされた実績を持つAndroid用総合セキュリティアプリである。2015年6月下旬から日本における普及活動を開始し、8月18日からはテレビCMを全国放映している。さらに、ユーザー参加型の品質改善活動やiOS版の先行投入など、日本市場限定の取り組みも予定している。
説明会にあたって、360モバイル・セキュリティのCOO(最高執行責任者)の黄炎(コウ・エン)氏と、バイスプレジデントの夏凡(カ・ハン)氏が来日し、日本での普及活動の狙いと、360セキュリティの特徴をそれぞれ報道陣に説明した。
昨今のスマートフォンは、Webサイトの閲覧はもちろん、SNSやメッセンジャーを使ったコミュニケーション、オンライン決済サービスなど、生活のさまざまなシーンで活躍している。一方で、さまざまなシーンで活躍するからこそ、スマホにおけるセキュリティリスクも高まっている。とりわけ、OSがオープンソースであるAndroidはその脅威にさらされやすい状況にある。
当然、「パソコンと同じように信頼できるセキュリティ製品は、(Android)スマートフォン楽しむ上で不可欠」(黄氏)であるはずだが、「(多くのセキュリティアプリは)非常に複雑で、専門的になっている。ユーザーはなかなか使いたがらない、あるいは使いこなせない傾向にある」(同氏)という課題がある。
このような現状を踏まえ、360セキュリティの開発チームは、親会社の奇虎360が持つ豊富な技術を全面的に採用し、「どのようにすれば、より簡単で、より効率的に、安全を届けること」(同氏)をコアコンセプトに据えて開発を進めているという。その結果、累計ダウンロード数は2億を超え、Google Playにおいて公開されているセキュリティアプリとしては比較的高い評価を得ている。
360セキュリティのダウンロード数のうち、約300万は日本のユーザーによるものだという。「世界中のユーザーと接するうちに、日本人ユーザーの『厳しい目』に気が付いた」という黄氏は、「日本人は(インターネットに接している年数が長いので)セキュリティ上の問題に対する意識が高く、ニーズも多岐に渡る。日本人ユーザーの『厳しい目』をもとに(アプリの)品質を向上し、世界中のユーザーが満足する製品を届ける」ことが、日本市場で本格展開を図る目的であることを示唆した。
日本市場の独自施策として、360セキュリティの「製品体験チーム」を結成する。このチームのメンバーは、360セキュリティのユーザーや、IT関連のライターなどから募集し、約100人の規模になる予定である。メンバーは360セキュリティの最新バージョン(候補)を先行して使用することができ、使用感などを開発チームにフィードバックする。フィードバックされた感想は、実際の製品に反映され、日本だけではなく全世界のユーザーに還元される仕組みだ。
また、現在開発中のiOS版360セキュリティを2015年内に日本市場に先行導入する。これも、iPhoneユーザーの比率が世界に比べて極めて高い市場性を生かした取り組みだ。
360セキュリティには、一般的なセキュリティアプリと同様にコンピューターウィルスやマルウェア(悪意を持ったアプリ)の監視・検出・駆除する機能が備わっている。それに加えて、360セキュリティでは、「『スマートフォンの安全』を再定義」(夏氏)する一環として、「ブースト」機能と「クリーンアップ」機能を搭載している。
ブースト機能は、アプリやハードウェアの稼働状況を分析し、アプリの自動実行を抑制する。アプリがバックグラウンド(表示されていない状態)で稼働を続けることでメモリやバッテリーを余計に消費することを抑えて、より快適に使えるように手助けをしてくれる。
クリーンアップ機能は、システムやアプリが作成したキャッシュ(一時)ファイルやアプリのアンインストールで取り残された不要ファイルの削除を提案する。システムやアプリの動作に不可欠なキャッシュファイルも少なくないが、オンラインのデータベースによって、本当に不要なものだけを削除提案する仕組みとなっている。余計なファイルを削除することで、ストレージ不足になることを抑えてくれる。
いずれも、本来であれば別アプリで提供されるものであるが、360セキュリティでは「ユーザーが(スマホを)使う全てのシーンにおいて安心・安全・快適」(夏氏)を提供するために、これらの機能も1つのアプリに内包している。
セキュリティソフトの「本分」であるセキュリティ関連機能も充実している。新たなウィルスやマルウェアなどの脅威に素早く対応するために、検出エンジンはローカル(端末)とオンライン(クラウド)双方のデータベースを併用するようになっている。また、端末紛失時に位置検索、ロックやデータ削除を遠隔操作でできる「携帯お探し」機能、アプリの起動を制限することでプライバシーを守る「アプリロック」機能、特定番号からの通話やSMSの着信拒否ができる「通話およびSMSブロッカー」機能なども搭載している。
これだけ多機能になると、操作手順が複雑化しがちだが、先述のとおり「より簡単で、より効率的に、安全を届けること」がコアコンセプトである360セキュリティは、UI(ユーザイーインターフェース)のシンプル化も徹底している。ボタン類はシンプル化され、多くの操作がワンタップで終わるようになっているのだ。また、自身のメモリ・バッテリー消費量を抑えるため、バックグラウンド動作中はUIに関するデータをシステムメモリに置かないようにすることを始め、パフォーマンス向上にも余念がない。
これだけ多機能だと、“有料”アプリであってもおかしくないが、360セキュリティは“無料”提供にこだわっている。アプリ内に表示される広告によって、収益を上げるビジネスモデルとなっている。広告は、GoogleやFacebookの広告プラットフォームを介して提供され、表示はアプリの操作に支障が出ないように工夫して行われる。
広告表示によってアプリを無料提供する例は珍しいものではなく、課金をすることで広告を非表示にできるものも多い。しかし、360セキュリティには、課金で広告費表示にするオプションを用意する予定はないという。ユーザー体験を向上するために、あえてユーザーに課金させないビジネスモデルで行くようだ。
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