携帯料金見直しに対して反論も――3キャリアの決算会見を振り返る石野純也のMobile Eye(10月26日〜11月6日)(2/2 ページ)

» 2015年11月07日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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純増数回復が今後の課題か、タスクフォースの議論には「真摯に受け止める」

 ソフトバンクグループの国内通信部門であるソフトバンクは、「上期で4200億円の営業利益」(ソフトバンクグループ孫正義社長)と、業績は好調。同時に、孫氏は「一部にはもうけすぎとのご批判もあるが、企業としては毎年利益を伸ばしていく、さまざまな努力をしなければならない」と、タスクフォースでの議論もけん制した。

photophoto ソフトバンクホークスが日本一になったことで、笑みをこぼす孫社長(写真=左)。通信事業だけを切り取ってみても、増益を続けている(写真=右)

 孫氏によると、通信ARPUの減少をサービスARPUが補っている状況だといい、「これからはこちらをより伸ばしていく」方針。第2四半期の通信ARPUは4190円で、サービスARPUは540円となる。今後は、独占提供を行っているNetflixを絡め、「SoftBank光」とのセット契約を推し進めていく戦略だ。傘下のヤフーとの連携も、強化している。

photo 前年同期比で通信ARPUが低下。それを補っているのが、サービスARPUだ
photophoto SoftBank光の契約を伸ばしている。固定とモバイルの上に、NETFLIXのようなコンテンツ、サービスを乗せていく。この方向性は、他社と同じだ

 一方で、決算会見では触れられなかったが、純増数は伸び悩んでいる。ソフトバンク、Y!mobileの両ブランドを合わせた純増数は、30万のマイナス。ソフトバンクが「主要回線」と定義する、スマートフォン、フィーチャーフォン、タブレット、データ通信端末などに絞ると3万9000の純増となっているが、それでも他社に大きく水をあけられている状況だ。

 会見でこの点を問われた孫氏は「今は中身にこだわっている」としながら、次のように語る。

 「以前は純増ナンバー1にこだわっていたので、とにかく数ありきで、みまもりケータイやデジタルフォトフレームなど、ほそぼそとしたものをいっぱい作って、いっぱい売って、それも全部1個に数えていた。そういったものは、利益への貢献が小さい。数合わせのようなことは、最近あまりしていない」

 純増数にこだわり、ともすれば“水増し”とも批判されてきたソフトバンクだが、そうした方針とは決別したという。とはいえ、その収益源といえる主要回線だけを見ても、他社と比較すると勢いが感じられない。孫氏は「唯一残っている課題はSprint」と語っていたが、このままの状況が続けば、ソフトバンクにも何からのテコ入れをしなければならなくなるだろう。

photo 唯一の課題というSprintだが、ソフトバンクの勢いも以前より落ちているのが気になるところだ

 タスクフォースでの議論には、「最近大人になった孫正義」と冗談を交えながら、真摯(しんし)に受け止めていく方針を示した。「お客様の多様なニーズに応えて、より安い価格、より高度なサービスなどを品ぞろえしていく」といい、新プランを導入する可能性も示唆した。端末代と通信料金の分離に関しても、割賦販売や月月割をいち早く導入したことに自信をのぞかせながらも、「もう少し分かりやすく区分けする方がいいという声があることは、真摯に受け止め、どうお答えするのかの検討を開始した」という。

 一方で、孫氏は「私は日本とアメリカ(北米)の両方でビジネスをしていて、肌感覚で分かるが、恐らく、世界で最も進んだ通信のネットワークがあるのが日本。そのネットワークを、アメリカよりもはるかに安い料金で提供している。しかもiPhoneを一番安く提供している」と述べ、タスクフォースの議論の前提条件には疑問を呈している。政府の方針には従いながらも、どこか、納得がいっていない様子がうかがえた。


 このように、各社とも業績は好調ながら、課題も残されている。タスクフォースで出る結論に、どのような回答を示すのかも、今後の検討事項だ。とはいえ、各社とも料金の選択肢を増やす方向にはおおむね従う方針で、今後は料金プランがより多様化する可能性がある。端末代と通信料金が、どのような形になるのかも、2015年末から2016年にかけ注目されることになりそうだ。

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