ASUSのAndroidスマートフォン「ZenFone Max(ZC550KL)」は、プロセッサにQualcommの「Snapdragon 410」を採用するいわゆる「ミドルレンジ(中位)」に相当するモデルで、標準価格は2万7800円(税別)だ。メインメモリや内蔵ストレージの容量は、それぞれ2GB、16GBと、こちらもミドルレンジモデルとしては順当である。ディスプレイは5.5型のIPS液晶を採用し大きめだが、解像度はHD(720×1280ピクセル)に抑えられている点も、ミドルレンジモデルでコストバランスを考慮した結果だろう。
ここまでのスペックを見る限り、単なる「大画面なミドルレンジスマホ」でしかないように見えるZenFone Max。しかし、バッテリーに大きな違いがある。5000mAhの大容量バッテリーを備えているのだ。昨今のAndroidスマホでは、2500〜3000mAhの大容量バッテリーは決して珍しくない。しかし、5000mAhという“超”大容量バッテリーを搭載しているスマホは非常に珍しい。
そこで、約3週間に渡りZenFone Maxを使った上で、筆者なりに大容量バッテリーのメリット・デメリットを考えていこうと思う。
ZenFone Maxは、バッテリー駆動時間がとにかく長いことが特徴だ。公称値では最大で約38日間(約914.4時間:3G通信時)の連続待受と、約37.6時間(約2258分:3G通信時)の連続通話が可能だという。
この数値はあくまで参考値で、実際の駆動時間はユーザーの使い方や周辺の通信環境によって大きく変わる。そこで、別途筆者がよく使っているアプリと、バッテリーの使用状況を監視できる「Battery Mix」アプリをインストールして様子を見てみることにした。
特に印象的だったのが、何もせずに放置しておいた際のバッテリー消費の少なさだ。モバイル通信以外の無線通信をオフにしていたものの、おおむね6時間に1回グラフがちょっとだけ下がるというペースで、1日あたり7〜8%程度しか消費しなかった。少なくとも放置状態では2週間は持ちそうだ。
普段のメインスマホと同じように使っても、1日あたりのバッテリー消費は25〜30%程度。メインスマホではほぼ毎日充電をしているのに対し、ZenFone Zoomでは3日目に入って充電、というペースで使うことができた。単体利用時のバッテリー持ちは、間違いなく現行のAndroidスマホの中では群を抜いている。
このバッテリー持ちは、バッテリー容量だけでもたらされるものではない。Androidスマホでは、画面消灯時や表立って表示されていない時でもアプリが自動的に起動して処理や通信をすることがある。ZenFone Maxでは、プリインストールされている「ASUS自動起動マネージャ」がアプリの自動起動を抑制し、処理や通信にかかる消費電力を減らしているのだ。
省電力(と通信量)の抑制に貢献する自動起動マネージャだが、自動起動マネージャが初期設定では一部アプリを除き「有効」となっていることに注意したい。システム状態を監視するアプリ、メッセージングサービスやインターネット(IP)電話アプリのように、リアルタイム動作が求められるアプリでは、自動起動マネージャを「無効」にしないと正常に動作しないことがあるのだ。
筆者もこの「ワナ」にはまり、Battery Mixにおいて一部のバッテリー消費データを記録できなかった。リアルタイム動作が必要なアプリをインストールした際は、ぜひ自動起動マネージャの設定を都度確認するようにしたい。
ZenFone Maxには、「OTG(On-The-Go)ケーブル」が同梱されている。これを使うと、さまざまなUSB機器を接続できる。例えば、USBキーボードを接続すれば文字入力が快適になるし、USBマウスを接続すればマウス操作もできる。USBメモリーやデジタルカメラとデータのやりとりすることもできる。他のAndroidスマホでは、この機能に対応していてもケーブルは別売り、というケースがほとんど。スマホに備わった機能を買ってすぐに最大限生かせる、という観点では歓迎すべき同梱品だ。
同機がOTGケーブルを同梱している理由はもう1つある。同機の目玉機能の1つ、ZenFone Maxから他のUSB機器に電源を供給する「リバースチャージ」をすぐに使えるようにするためだ。この機能を使えば、USB充電に対応している機器の充電もできる。
他のOTG対応スマホでも、他のUSB機器に電源を供給することは理論上可能だが、バッテリー容量を考えると実用的とは言いがたい。しかし、5000mAhの超大容量バッテリーを持つZenFone Maxなら実用的に使える。
筆者が連休中出かけた際は、バッテリーが切れそうになったスマホやデジタルカメラの充電でZenFone Maxが大活躍した。モバイルバッテリーを忘れてしまった時や、すぐに充電用のコンセントが見つからない時の保険として非常に役立つのだ。
ただし、当然のことながらリバースチャージを使うとバッテリーの消費は早くなる。状況によってはZenFone Maxと充電する機器が「共倒れ」になる可能性もあるので、注意したい。
単体で使うと驚くほどにバッテリーが持つ反面、リバースチャージをするとバッテリーの減りが早くなるZenFone Max。そこで気を付けたいのが「充電のタイミング」だ。
ZenFone Maxの公称充電時間は約4.8時間となっており、バッテリーの容量が大きい分時間もかかる。筆者が普段使っているACアダプター(5V/最大出力2.1A)で残量約15%から充電を開始したところ、満充電まで約4.5時間かかった。バッテリーが少し残った状態ではあったが、充電ペースを考えるとほぼ公称時間通りに充電できたことになる。本体同梱の純正ACアダプター(5V/最大出力1A)でも結果はほぼ同様だった。
一方で、少し古めのACアダプターや一部のPCのUSB端子など、出力電流が1A未満の環境(具体的には充電ステータスで「USB」と表示される状況)で充電をすると、この公称値よりもさらに時間がかかる。筆者がPCの大容量出力非対応USB端子につないで残量約30%のところから充電してみたところ、満充電までに約7.5時間かかった。バッテリー残量がより少ない状態で充電を始めていたら、さらに時間がかかることは言うまでもない。
大容量バッテリーを持つがゆえの宿命ではあるが、ZenFone Maxは充電に時間を要する。バッテリーが切れそうな状態から「寝ている間に充電しよう」と思っても、起きた時に充電が終わっていないということも、状況次第では十分に考えられる。充電を開始するタイミングと、本体の充電に使う機器には十分に気を付けたい。
ZenFone Maxは、長時間電話の待ち受けが必要な人や、バッテリーの充電頻度を減らしたいと考えている人にとっては理想のメインスマホになりうる。プロセッサの処理能力も申し分なく、3Dグラフィックを多用するゲーム以外は快適に使うことができる。いわゆる「格安SIM」と組み合わせて使うにも最適だ。
また、リバースチャージ機能に着目すると、メインのフィーチャーフォン・スマホ・タブレットを別に持っている人の「2台目」端末としてもお勧めできる。緊急時にメイン端末に分け与えることができることも大きな安心感を与えてくれるだろう。
一方で、大容量バッテリーを抱えるがゆえに、充電に時間のかかることが大きなデメリットとなりうる。繰り返しだが、充電するタイミングと充電に使う機器には配慮が必要だ。
もしも、ZenFone Maxの次世代機が出るならば、ASUS独自の「BoostMaster」なり、Qualcommの「QuickCharge」なり、本体の超急速充電にはぜひ対応してもらいたいところだ。
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