一般ユーザーに訴求すべきタイミングが来た――FREETELが大攻勢をかける狙いMVNOに聞く(3/3 ページ)

» 2016年06月29日 22時14分 公開
[石野純也ITmedia]
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スピードテスト疑惑は「根も葉もないこと」

FREETEL プラスワン・マーケティングの藤田聡敏氏

―― 通信速度に関して、一部ではスピードテストだけを速くしているのではないかという疑惑も出ていました。これについては、いかがでしょうか。

増田氏 あれは、完全に根も葉もない疑惑です。そもそも、スピードテストのアプリはうちのものではないですし、そんなことをやっても信頼が得られません。やる必要がないですからね。

プラスワン・マーケティング取締役 藤田聡敏氏(以下、藤田氏) 動画だけ非常に速かったのは、IX(インターネットエクスチェンジポイント、相互接続点)の構成の問題で、そのしわ寄せで別のもののダウンロードが遅くなってしまうことはありました。そこの調整は、今やっているところです。

増田氏 速度で言えば、3月から月2回、ダブル増速マラソンをやった結果、だいぶ改善されてきたと思います。

藤田氏 それも階段上で、想定より多くお客さまが増えてしまった場合は遅くなることもあります。2月はお客さまがガっと増えて遅くなりましたが、そこに対してはわれわれも増強をしています。

 また、細かいネットワークの最適化は常に繰り返していて、機器のエンジニアも招き入れています。

―― それは、エリクソンやノキアのようなベンダー出身の方が増えているということでしょうか。

藤田氏 キャリアのネットワークを設計していた方もいるので、ベンダーとキャリア、両方ですね。

独自アプリもたくさん出していく

―― マスを狙うということですが、現状のユーザー属性はいかがでしょうか。

藤田氏 MNPが多いですね。割合も、どんどん増えています。

増田氏 音声対応の比率もMNPの比率も、月間で見れば1位なのではというぐらい多いですね。Amazonなどを見ると、ほとんどがデータ通信専用ですが、うちは逆で、店頭はほとんど音声SIMです。開通を、家で免許証を見せるだけでできるようにしましたし、やはりハードウェアを持っていて、リアルな店舗にコーナーを作っているのは大きいと思います。

―― アプリに関してですが、現状の「FREETELでんわ」は、どちらかと言えばネットワークサービスの1つのような気もします。

増田氏 他にもあります。たくさん出していきますよ。私は、そういう会社の出身ですからね(笑)。

―― その意味では、dマーケットの取次もアプリに含まれるのでしょうか。

増田氏 あれは取次だけですが、その1つではありますね。やはりアプリがあることが、スマホの楽しみです。うちは国内だけでなく、グローバルにも(端末を)やっています。日本向けのアプリ、海外向けのアプリ、両方をやっているからこそできるアプリは、どんどん出していきます。

―― 販売の方法にも手を入れてきたのが、面白いと思いました。マスを狙うという意味では、「プレミアムバリュープラン」のような分かりやすさは必要だと思います。

増田氏 単価がある程度高くなってくると、割賦で買いたいというニーズは必ず出てきます。日本だと、iPhoneは0円だと思っている人もたくさんいますからね(苦笑)。そのくらい、日本は割賦文化になっています。であれば、買い方のところも整えてあげたい。慣れ親しんだ方法で買えることが重要です。

―― 大手キャリアの手法に近いという意味でも、マス向けということですね。

増田氏 ここは、いろいろとテストしてきました。マスというキーワードは、常に考えています。ちょっとでも分からない、不安、面倒だと思うと、人は購入しません。一方で、今までのメーカーよりは、はるかにデマンド(需要)は作りやすい。毎月払っている通信料が安くなるからです。そのときに、「よく分からない」「不安だ」となると、ズルズルと購入を引き延ばされてしまう。ですから、ここはいろいろとトライアルをしながらやってきたいと思います。

 マスに訴えたいということでは、オンラインショップで、30日間、返品を受け付けるようにします。買っていただき、気に入らなかったら返せる。FREETELをテレビで見たけど、実際はどうなんだろうという方に、お試しいただきたいと思います。

 また、今までは1年間299円が0円になっていたのを、3年間0円にします。プロダクトの戦略は、フラグシップをいいものにするのが必須で、さらなるニーズが掘り起こせる、新しいラインアップにも挑戦していきます。

FREETEL

取材を終えて:端末+ネットワークをどう“分かりやすく”訴求するか

 マス向けに大きく舵を切ったFREETELだが、その姿は、かつての大手キャリアを見ているようだ。端末も自社で出し、その上でドコモから借りた回線とはいえ、通信サービスも手掛けている。端末にはSIMロックこそかかっていないが、見方によっては、メーカーから調達する大手キャリア以上に「垂直統合志向」といえるかもしれない。

 マスを狙ううえで、ある意味従来キャリアと同じ方法を取ることは、非常に効果的だ。ただし、その価格は大きく異なり、端末は半額以下。通信料も、3分の1程度で済む。あとは、売り場や販売方法、サポート体制さえ確立できていれば、商機がある。こう読んだからこそ、今のFREETELは急成長をとげることができ、さらなる拡大路線を歩んでいるのだ。

 一方で、キャリアとしてより広い層を狙おうとすると、自社に閉じた端末のラインアップでは、限界を迎えてしまう可能性もある。もちろん、今でも他のSIMロックフリー端末とFREETELのSIMを組み合わせることはできるが、そこにはFREETELの志向する「分かりやすさ」がない。勢いを増し続ける中、端末とネットワークのバランスをどう取っていくのかが、同社の腕の見せ所になるかもしれない。

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