オープンな姿勢で「創造と進化」を推進する――NTTドコモ 吉澤和弘社長に聞く(2/3 ページ)

» 2016年07月11日 20時16分 公開
[神尾寿ITmedia]

MVNOとは「共存共栄」路線を強化していく

―― ここ最近の新たな動きとして、MVNOや大手キャリアのサブブランドによる「格安スマホ」市場の活性化があります。現状で見ますと、大手キャリア同士の競争は沈静化してきていますが、他方で、MVNOや、Y!mobileのようなサブブランドキャリアがここにきて台頭してきています。この動きに対して、ドコモはどのように対応していくのでしょうか。

吉澤氏 まずMVNOについてですが、MVNOの多くはドコモにとって大切な(B2Bの)お客さまですし、協調関係だと考えています。ですから、ドコモの通信インフラを(MVNOに)使っていただくだけでなく、ドコモのサービスも積極的にお使いいただく方向で協力体制を強化していきたい。

―― 最近では一部のMVNOが、dマーケットのコンテンツサービスなどの販売も始めています。

吉澤氏 ええ。コンテンツサービスなどはMVNOの方々が自前で準備するには投資負担もありますから、キャリアフリーでご提供しているドコモのサービスをMVNOのお客さま(MVNOの契約ユーザー)向けに提供していただければ、ドコモとMVNOの双方にメリットがあります。また今後の展望としましては、dケータイ払いプラスのような決済サービス、(ユーザーサポートの)コールセンター業務の受託など、ドコモがMVNOの皆さまをお手伝いできる領域は多く存在します。

―― ドコモにとって「MVNOはパートナー」という観点に立脚すれば、MVNOがキャリア事業を展開する上で、不足しているサービスや苦手な領域をドコモが補うというビジネスは十分に考えられるわけですね。ちなみにその延長線上で、販売チャネルの共同化は考えられますか?

吉澤氏 うーん、そこは難しいですね(苦笑)。どちらかというとバックヤード業務を受託で支援するという形が主になると考えています。いずれにせよ、MVNOとはさまざまな形で協力体制を構築していきたいと考えています。

―― 一方で、auやソフトバンクが展開する「サブブランド戦略」はいかがでしょうか。ドコモとして対抗しますか?

吉澤氏 Y!mobileさんとか、6月はものすごい宣伝攻勢をされていますね。店頭での販売攻勢も勢いがありますし、われわれとしても少し脅威に感じています。実際、MNPの動きを見ても、ドコモからY!mobileへの線が太くなっている(=流出が増えている)。特にドコモのフィーチャーホンユーザーが、Y!mobileの格安スマホにMNPするケースが目につきます。

photo ソフトバンクのサブブランドとして「Y!mobile」が勢力を伸ばしている

―― フィーチャーホンからスマートフォンへの乗り換え組からすると、Y!mobileの価格体系が「これまでのケータイ料金に感覚的に近い」ことが評価されています。

吉澤氏 そこはわれわれも注視しています。ただ、この状況がY!mobileのキャンペーンによる一過性のものなのか、それとも市場トレンドになり得るのかはしっかり見極めなければなりません。

―― ドコモとして、格安スマホのサブブランド導入はありますか?

吉澤氏 ドコモではやりません。無論、他社の動きは注目していますし、分析はします。(サブブランド導入の)検討もしますけれども、今のところドコモとしてサブブランドを導入する考えはありません。

 しかし、これは他社のサブブランドの動きに対応しないということではなく、われわれとしては「ドコモのお客さまでい続けていただくことのメリット」を充実させることで対抗していきます。

新事業領域ではコンテンツとIoTに注目

―― 2016年から2017年にかけて、新事業領域で特に重視している分野はどのようなものになるでしょうか。

吉澤氏 もちろんdマーケットは拡大していきたいですね。デジタルコンテンツから物販まで、既存のサービスに注力するのはもちろん、新たな分野にも挑戦したい。

―― dTVやdマガジンなど、デジタルコンテンツは好調です。それは理解できるのですが、物販はいかがでしょうか。ここではドコモのサービスが、Amazonや楽天に対抗できているとは評価できませんが。

吉澤氏 そうですね……。物販がAmazonや楽天と比較して不利な状況にあることは否定しません。物販事業を今後も拡大していくかどうかは少し考えなければなりません。われわれは「dショッピング」を展開していますが、物販事業は本当に難しい。自社サービスとして行うには在庫管理や倉庫の問題がありますし、モール形式がいいのかというのも議論が必要です。dマーケットの物販事業については、見直しが必要な時期だと認識しています。

 1点、補足させていただくと、dマーケットはdTVやdマガジン、dアニメなどデジタルコンテンツが中心で、それらはとても好調です。dショッピングなど物販は、今後の在り方も含めて展開を検討していくという状況ですね。

―― コンテンツ以外ですと、決済などトランザクション系サービスの業績もよいですね。

吉澤氏 ええ。dカードは順調に伸びていますし、最近ではdケータイ払いプラスなどキャリアビリングが好調です。ここはまだ市場の拡大ができる領域です。

 あと新たな取り組みとしては、2016年の第2四半期に保険販売を始めます。まずはドコモショップの数10店舗くらいからですが、ここは保険業界からも注目されていますので、しっかりと育てていきます。

―― 今後の新規事業領域に対する姿勢はどのようなものになるのでしょうか。

吉澤氏 1つの視点として「社会課題の解決」に貢献する事業を大切にしていきたい。これから取り組む農業やIoTを用いたさまざまな事業は、何らかの形で社会課題に解決に貢献できるものでありたいと考えています。ここでは早期の収益化が難しいものもあるかもしれませんが、長期的な姿勢で取り組んでいきます。

―― 収益化を急がず、腰を据えて新規事業に取り組めるのはドコモのとても強みであり、美点だと思います。しかし最終的には収益化をしていかなければならず、そのバランスをどう取るか、ということですね。

吉澤氏 ええ。その点に関して、われわれは実績がありまして、IoTのはしりであるM2Mビジネスにおいては、自動販売機や駐車場やエレベーター向けの事業に先行投資し、今ではプラットフォームを作ってしっかりと収益化を果たしています。

 今後の社会ソリューション事業においても、プラットフォームを作るというのが重要です。個々の社会問題を解決するにあたり、プラットフォームを作り、将来的にそのプラットフォームが収益を上げていくという構造にしなければなりません。

ドコモ、自動運転 7月8日にはDeNA、福岡市、九州大学と「スマートモビリティ推進コンソーシアム」の設立を発表。九州大学で自動運転バスの実証実験を行う

――  ここでいう「プラットフォーム」とは、通信基盤だけでなく、ソリューションサービスのプラットフォームということでしょうか。

吉澤氏 その通りです。IoT市場は特にそうなのですが、今後のドコモは“ソリューションのプラットフォーム”を構築し、事業化していくことが重要になっていきます。

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