説明会のあと、大阪市内にある大ゾーン基地局の鉄塔に登り、アンテナを確認することができた。大ゾーン基地局は大阪府に4カ所あり、そのうちの1つとなる。1つで半径7kmをカバーし、主に緊急通話などを確保する目的で稼働させるものだ。現時点では、幸いにして実稼働の実績はなく、災害時の“備え”として各地に配備が進められている。
今回の登った大ゾーン基地局は、地上176m地点に設置されたもの。高い場所から電波を一気に飛ばすことで、カバー範囲を広げる狙いがあるようだ。176m地点までは2人乗りのエレベーターで登り、アンテナが置かれている様子を確認することができた。ちなみに、基地局のある場所は、民家のベランダのように柵が低く、足元も格子状になっており、地上がほぼ丸見えの状態。特に高所恐怖症ではない筆者も「怖い」と感じるほどの高さだった。
続いて、移動基地局車に設置されたE-Bandの無線エントランスを使い、伝送路を確保する様子を体験することができた。E-Bandとは70/80GHz帯のことで、周波数が高い分、広い帯域を確保できる。一方で障害物などに弱く、指向性が強いため、アンテナ同士をピンポイントで合わせる必要がある。携帯電話に使われる周波数も、高くなればなるほどエリアがスポット的になるが、それをよりシビアにしたものと考えれば理解しやすいだろう。
ドコモでE-Bandを使う際には、移動基地局車に上り、スコープで微調整をしたうえで通信を行っている。今回は、まず移動基地局車に筆者が上り、スコープで通信を行うアンテナを確認。その後、地上側からアンテナの角度を実際に調整して、伝送路が確保されている様子を確認した。アンテナの調整は非常にシビア。実際にやってみると、思っていた以上にアンテナが動いてしまい、ピンポイントで位置を合わせるのは非常に難しいことが分かった。
災害時に通信が途絶しないことを使命に掲げ、対策を続けているドコモだが、今回の体験からもその努力の一端が垣間見えた。筆者はごく一部に触れただけで、正直なところ、“社会科見学”の域は出ていない。それでも、話を聞いたり、訓練の様子を取材したりすることで、ドコモの災害対策の“本気”を、より強く感じられた。
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