中国には女性ユーザーをターゲットにした「女子スマホメーカー」がいくつか存在する。本体カラーはピンクやパステル系の色でまとめ、セルフィー(自撮り)を強化するためインカメラを搭載するなど、女性が毎日使うことを考えた設計となっている。
しかし最近はiPhoneなどでもピンク系のカラーを採用しており、多くのメーカーからセルフィー強化モデルが続々と登場している。中国ではいわば全てのスマートフォンが「女子スマホ化」しているわけだ。
では元祖「女子スマホ」メーカーたちは、どのようなモデルで他社との差別化を図ろうとしているのだろうか。MWC上海2016に出展していたSugarとMeituという、2つの女性向けスマートフォンメーカーの最新モデルからその動きを見てみよう。
Sugarは、ボディーに宝石をちりばめたようなスマートフォンを販売するメーカーだ。フランス・パリにも拠点を置く同社の端末は、本体の側面部分にスワロフスキーのクリスタルをずらりと配置し女性の心をくすぐっている。この手の製品としては、iPhoneなどのケースにクリスタルを並べたものも販売されているが、Sugarはそれをスマートフォン本体に直接埋め込んでいるのである。モデルごとにクリスタルの数は異なっており、製品のスペックシートには「カラット」の表記も。デザインの好みもあるので全ての女性向けとはいえないが、キラキラと光り輝く端末が好きな女性には受けているようだ。
ところが、2016年発売の最新モデルはウリであったサイドのクリスタルを廃止。正面やサイドからみると、他社のスマートフォンとあまり見分けのつかないデザインになった。
4月に発売された「Sugar C7」は5型HDディスプレイを搭載するミッドレンジモデル。指紋認証センサーの搭載や高速なBluetooth転送など、スマートフォンそのものの使い勝手を高めたモデルだ。カメラはリアに1300万画素、フロントは800万画素と標準的な性能だが、美顔モードを備え美しいセルフィーが撮影できる。
一見、デザインよりも機能を重視したモデルに見えるC7だが、一部モデルの背面側がバックスキン仕上げになっており、カメラの回りにクリスタルを配置。普段使っている分には気が付かないが、写真を撮影するときにこのクリスタル部分が見え、Sugarの製品であることに気付くというわけだ。テーブルの上に本体を裏返して置いている時も、このカメラ部分とその下にプリントされた“Sugar”の文字がさりげなく目立つ。
他のモデルも同様に、脱「全身クリスタル仕上げ」が目立つ。厚さわずか5.1mmというウルトラスリムサイズの「Sugar S」は、背面側をガラス仕上げにしたことからカメラ周りにも装飾はない。その代り本体左右のボリューム上下ボタン、電源ボタンの表面にのみクリスタル装飾を施した。Sugar Sは4.8型HDディスプレイ、アウト800万画素/イン500万画素カメラと、Sugar C7よりスペックを下げつつ、薄さを売りにターゲット層を変えたモデルとなっている。価格はどちらも1799元(約2万7700円)。
一方、Sugar C7のディスプレイサイズを大型化した最新モデルが「Sugar F7」だ。ディスプレイは5.2型だがコストを抑えるために解像度はHDのまま。しかしメモリは4GBと増量され、カメラもリアが1600万画素、フロント1300万画素とスペックアップしている。また本体サイズがC7より若干大型化したことから、より大容量の3000mAhのバッテリーも搭載。急速充電に対応し、バッテリーが空の状態から30分間で60%の充電も可能だという。スマートフォンをより使い込むユーザー向けの製品で、価格は1999元(約3万700円)。
Sugarのスマートフォンは2015年モデルも引き続き販売されており、クリスタルの輝きを求めるなら現行モデルも購入することも可能だ。洋服などのファッションのトレンドのように、Sugarのスマートフォンは2016年はあえて「さりげなさ」を追求したモデルとしたのだろう。
しかも薄さや機能を売りにした3モデルの作り分けはなかなかうまい戦略だといえる。メジャーメーカーの仲間入りは果たしていないSugarだが、特徴ある製品を作り込んでいけばmいずれは世界中にファンを増やすかもしれない。
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