生活と体験がクロスする――ZからXに生まれ変わった「Xperia X Performance」開発秘話:開発陣に聞く(3/3 ページ)

» 2016年08月16日 15時45分 公開
[田中聡,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

アウトカメラには先読みAFを追加、インカメラは大きく進化

 Xperia Zシリーズから毎回強化してきたカメラは、Xperia X Performanceでは従来の機能は引き継ぎつつ、アウトカメラで新たに「先読みAF(オートフォーカス)」を搭載した。ソニーのデジタル一眼カメラ「α」の技術をスマホ向けに最適化したもので、画面上でタップした被写体の動きを予測してフォーカスを合わせることができる。動きの激しい子供やペットの撮影に向いている。

Xperia X Performance 先読みAFのオフ(左)とオン(右)で撮り比べたもの。右のオンの方がブレを抑えられている
Xperia X Performance カメラ設計担当の生江氏

 「Z5で世界最速0.03秒の位相差AFを導入しましたが、それでも被写体が動くシーンは苦手です。いくらAFが速くなっても、動きの激しい被写体には合わせられないので、動きを予測するAFを導入しました」と生江氏は話す。

 シャッターボタンを押してから撮影されるまでにタイムラグが起きるが、その間に被写体が動くと、ピントが外れてしまう。そこで、「被写体がどういう軌跡を通ったかをスマートフォンの内部で計算して、シャッターが切られるタイミングでは『ここまで動いている』と予測をして、そこにフォーカスを合わせます」と生江氏は説明する。先読みAFが有効になるのは、最初にピントを合わせた被写体のみで、複数の被写体をトラッキングすることはできない。

 先読みAFは、ピントを合わせた被写体をトラッキングし続ける「オブジェクトトラッキング」と、被写体が通った軌跡をもとにした「深度予測」から成り立っている。何度か撮影をすることで精度が上がるものではなく、最初から有効になる。これらの処理をリアルタイムで行っているので、CPUへの負荷が高まることが懸念されるが、「一部はCPU側で処理、一部はカメラモジュールで処理をしてバランスを取っていて、発熱はほとんど影響がないレベルで演算をしている」(生江氏)とのこと。

Xperia X Performance 先読みAFでは、シャッターを押してから実際に撮影するまでに、被写体がどのように移動するかを予測してピントを合わせる

 Snapdragon 820だから実現できたというわけではないそうだが、「機種ごとにチューニングをしているので、(Z5などの)既存モデルに、ソフトウェアアップデートで先読みAFに対応させることは難しい」(生江氏)とのこと。

 先読みAFはソフトウェアで実現しており、カメラモジュール自体はXperia Z5シリーズと同じものを採用しているため、アウトカメラの画質はZ5シリーズから大きな変化はないと考えてよさそうだ。

 一方、インカメラはXperia Z5の有効約510万画素から有効約1310万画素へと大きくスペックアップした。インカメラに初めてExmor RS for mobileを採用し、AFも搭載。レンズの焦点距離はZ5の25mmから22mmになって、より広範囲を写せるようになった。Xperia Z5よりも2.6倍大きい1/3型のセンサーを採用したことで光を取り込む量が増え、「暗いところでもノイズが少ないように処理を加えた」(生江氏)という。さすがに「Gレンズ」は採用していないが、ミッドレンジのXperiaのアウトカメラと同等のスペックを実現した。

 「世界中を見ても、セルフィー(自分撮り)の文化は強くなっていて、国内でも自身を撮るケースが増えています。広角にしたのは友達と一緒に広く撮るケースが増えてきているので、人に頼まなくても自分たちで記念撮影ができます」と矢部氏は新インカメラのメリットを説明する。

 順当に機能アップを果たしたXperia X Performanceのカメラだが、Xperia Z2から搭載してきた「4K動画の撮影機能」は省かれた。「今までやっていた・やっていなかったかではなくて、さまざまな機能の中で、何が広くニーズがあるかを考えました。今後4K撮影機能を搭載しないというわけではなく、Xperia X Performanceのターゲットに合わなかったためです」と矢部氏は説明する。

コントラストと緑の再現性をアップ

Xperia X Performance ディスプレイ設計担当の内田氏

 あまり大きく訴求されていないが、Xperia X PerformanceではディスプレイもXperia Z5比で改善されている。

 ソニー製品全体として、「高コントラスト」「広色域」「高解像度」を画作りの指標としているが、Xperia X Performanceではコントラストと色域を向上させた。

 コントラストでは、黒の締まりが良くなり、斜めからでもより鮮明に表示できるようになった。「ソフト的にも、花火の動画などで、よりコントラスト感を強める処理をやっています」と内田氏。液晶パネルを改善したことでコントラストアップを実現したという。

 色域については、赤青緑のなかで、特に緑をXperia Z5よりも再現できるようにした。「今まで赤と青は十分に表現できていましたが、緑はどうしても(目指す色を)表現できていませんでした」と内田氏。赤と青はZ5と同じ画質で、人肌についてはあえて変えず、実際の色を忠実に出すようにしている。

Xperia X Performance
Xperia X Performance いずれも左がXperia Z5 Premium、右がXperia X Performance。X Performanceの方が広視野角で、緑がシャキッと写っている

 2015年冬モデルでは、4K(2160×3840ピクセル)ディスプレイを搭載した「Xperia Z5 Premium」が話題を集めたが、Xperia X Performanceのディスプレイ解像度はフルHD(1080×1920ピクセル)。矢部氏によると、「Xperia Z5 Premiumは併売しているので、引き続き4Kも訴求していきます。今回は商品性を考えて4Kは見送りました」とのことで、4Kをやめるわけではないようだ。


 新シリーズにリニューアルしたXperia X Performanceは、飛び抜けた機能はないが、誰もが安心して使える一台に仕上がっている。一方、デザインの基本路線や、カメラ・オーディオ・ディスプレイなどの主要機能はZシリーズを継承しており、「Xならではの味付け」はこれからといった印象を受けた。

 現状、Xperia Zシリーズの後継モデルを発売する予定はなく、引き続きXシリーズで勝負をする形となる。カメラの先読みAFをはじめとする「インテリジェント」で、どこまでソニーモバイルらしさを出していけるかが差別化のカギを握りそうだ。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月06日 更新
  1. KDDIのローミング終了で楽天モバイルはどう変わる? 心もとない700MHz帯、独り立ちのカギは5Gにあり (2026年10月03日)
  2. ドコモがほぼ全ての料金プランを値上げ それよりも端末の値上げが気になるこの頃 (2026年10月03日)
  3. KDDIのローミング縮小でも「やめる理由にはならない」 楽天モバイルユーザー4人が語る本音と“経済圏”の囲い込み (2026年10月05日)
  4. ドコモがRCSで同意未取得の不備 約1万6000件に影響、対象ユーザーは利用停止に (2026年10月04日)
  5. JALモバイルはなぜIIJに加え「ahamo」を選んだのか? JALとドコモが明かす“ホワイトレーベル”の狙い (2026年10月05日)
  6. 高市首相がAppleに要請――「自殺防止機能の搭載を」 生成AIへの相談増加を受け (2026年10月03日)
  7. ahamoがついに料金プランを改定。段階制へ――「40GB」が業界の新たなスタンダードになるのか (2026年10月04日)
  8. 注目点は“可変絞り”だけじゃない! 「iPhone 18 Pro」のカメラは思った以上に変わっている (2026年10月05日)
  9. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  10. WAON POINTやAEON Payのキャンペーンまとめ【10月4日最新版】 ポイント10〜20倍の獲得チャンス多数 (2026年10月04日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー