Y!mobile、そして日本通信とも――U-NEXTが複数のMVNEとタッグを組む理由MVNOに聞く(3/3 ページ)

» 2016年09月06日 17時53分 公開
[石野純也ITmedia]
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ゼロレーティングはホワイトではない?

―― 次に、足元の状況を教えてください。

二宮氏 6月末でポストペイドが43万6000、プリペイドが34万1000で、合計で70万を超えたところです。1年前と比較して伸びているのが対面販売で、ここは強化しています。量販店、併売店の数が増え、獲得が堅調に伸びています。

―― 先ほど、コンテンツまで一気通貫にやるというお話がありましたが、このMVNOの伸びは、VODにとってもプラスになっているのでしょうか。

二宮氏 はい。その側面はありますね。今は(U-mobileの通話SIMに)U-NEXTポイントを600ポイントつけていますが、これは、新作映画を1本無料で見られるという考え方です。ユーザーにとっては、かなりいいサービスなのではないでしょうか。

―― モバイルで見ているのでしょうか。

二宮氏 U-NEXTはマルチプラットフォームのサービスなので、長い映画となると、自宅で見る傾向が強くなります。モバイルでサービスに入っていても、実際に見ているのはWi-Fi経由だったりします。

―― 通信量をカウントしない「ゼロレーティング」を提供するMVNOも増えていますが、ポイントを付けてサービス側を事実上値引くのは、発想が逆ですね。

二宮氏 そもそも、使い放題というテーマでサービスを作っているので、ゼロレーティングをやる意味も薄れています。

U-mobile U-NEXTの浅賀生太氏

―― 確かに、特定の相手との通信どころか、全ての通信が定額ですからね(笑)。

浅賀氏 どちらかというと、ゼロレーティングはダイヤルアップ時代からの老舗企業というより、新興企業が始めていますが、そこに関しては、ガイドラインや現行法と照らし合わせたとき、まったくのホワイトかといえばそうでもありません。サービス面で必要なのかというのとは別に、そういった懸念もあります。

―― MVNEを多様化しつつありますが、現状だと、主力はやはり定額プランなのでしょうか。

二宮氏 どれが主力かは、なかなか言いづらいですね。

浅賀氏 販路によって変わりますからね。U-mobile PREMIUMを始めて、メディアの方には「フリービットさんと仲が悪くなったのか」といわれることもありますが、そんなことはありません。ダブルフィックス(二段階プラン)はありますし、安く抑えたい方には小容量のプランの方も人気で、量販店では引き続き堅調です。一方で、容量を気にせず、一定の速度で使いたい方には、U-mobile PREMIUMを提供しています。ある程度の比率はありますが、これだけしか売れないというわけではありません。

現地販路を開拓してプリペイドSIMも好調

―― プリペイドも多いですね。

二宮氏 純増はなかなか難しいのですが、毎月、同じ数、安定的に増えています。

―― プリペイドは海外ユーザーのシェアも高いと聞きましたが、いかがですか。

二宮氏 販売網としは、海外の旅行代理店が多いですね。販路は海外で、日本に来てからアクティベーションしていただく形になっています。ただ、ここは増えてはいるのですが、爆発的にというとそうでもありません。ここは政府を含めて、もうちょっと(訪日外国人の受け入れ推進を)なんとかしてほしいところです(笑)。

浅賀氏 (シェアが高いのは)現地販路の開拓が、ほかのMVNOに比べて、早くできていましたからね。流れとしては、国内の観光名所での販売から、空港、機内といった形でだんだんと(外国人の国へ)近づいていき、現地売りになりましたが、最初にそこを押さえていたのが、今のシェアにつながっているのだと思います。

二宮氏 あとは、カスタマーセンターを多言語でやっているのも大きいかもしれません。

―― 何カ国語ですか。

浅賀氏 英語、中国語、韓国語、タイ語、ポルトガル語、スペイン語、ベトナム語の、合7言語です。

二宮氏 それに伴って、B2Bの多言語翻訳サービスもやっています。今主流なのは端末もセットになった比較的高額のものですが、われわれのサービスは特定の電話番号に電話をかけていたき、フェーストゥフェースで翻訳ができるものになっています。

―― それを、カスタマーセンターでやっているということですか。

二宮氏 そうですね。ゆくゆくは、プリペイドSIMを使っていただいている間は、プラスいくらかで、滞在期間中に通訳を受けられるようなところに発展させていければと思います。

取材を終えて:MVNEを併用することの課題も

 矢継ぎ早に発表された、U-mobile PREMIUMや日本通信の事業継承は、U-NEXTのマルチMVNE戦略に基づいているという。その背景には、ドコモに対する禁止行為規制の緩和や、HSS/HLR開放が現実味を帯びてきたことがあるようだ。確かにU-NEXTはMVNOの中では大手だが、フルMVNOを目指すようなネットワークに強い企業ではない。NTTコミュニケーションズやIIJなどとは、毛色が異なるMVNOといえるだろう。

 こうした市場環境や自己分析を踏まえ、コンテンツ配信やサービス設計など、自社の得意とする分野に集中しつつ、規制緩和で多様化したMVNEを上手に選択する。これが、U-NEXTの狙いだ。MVNEのマルチ化は、この規模になったからこそ取れる戦略で、他社が簡単にまねできるものではないため、差別化にもなりそうだ。

 ただし、MVNEを複数併用することの課題も残されている。プラン変更の際に、ユーザーがわざわざMNPをしなければならないのは、その1つだ。現状では手数料もかかるため、プラン変更のハードルが非常に高くなっている。また、理屈では分かるが、実際、MVNEの違いでどこまでサービス内容に差が出せるのかも未知数だ。一方で、インタビューからは、第2、第3の策を用意していることもうかがえた。今後発表されるサービスにも、注目しておきたい。

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