最近、少しずつ数が増えているのが、日本のMVNOが提供する海外旅行者向けのプリペイドSIMカードです。mineoや楽天モバイルは以前から提供していますし、筆者の所属するIIJでもこの8月から「IIJmio海外トラベルSIMサービス」を提供しています。これらのSIMカードは、上で紹介した現地プリペイドSIMに比べると高価ですが、日本で購入でき、かつ日本語でサポートを受けられることが最大の特徴となっています。
一例として「IIJmio海外トラベルSIMサービス」を挙げます。まず、日本国内の家電量販店やIIJmioのWebサイトでSIMカードの入ったパッケージを購入します。次に、渡航前にSIMカードを端末に挿し、説明通りに動作確認を行います。国内では動作確認用Webページが表示されれば設定OKです。
渡航前にデータ量をチャージすることで、14日間の間、海外42カ国でSIMカードが利用可能となります。チャージしたデータ量の残量確認も、使い切った後のリチャージも、いずれも日本語のWebサイトから可能なので、現地プリペイドSIMを利用の際に不安を感じる点はほとんどカバーされていると思います。
現地プリペイドSIMで存在するオンラインサービスの制限については、一般に緩い、もしくはないようです。詳しくはサービス提供事業者にご質問ください。ちなみにIIJmio海外トラベルSIMサービスでは、中国国内でGoogleマップやTwitterの利用が可能です。
データ通信料金は各社とも500MBあたり4000〜5000円前後(この他に初回はSIMカード代金が必要)と、いずれのサービスも現地のSIMカードに比べるとお高めですが、現地プリペイドSIMの購入は不安……という方にお勧めです。
デメリットとしては、現地プリペイドSIM同様に、SIMロックフリー端末でないと利用できない点が挙げられます。ドコモやauのスマートフォンをご利用の方はご注意ください。また、SIMカードスロットを開けるためのピンはくれぐれもお忘れなく!
このように、MVNOの利用者に向けた海外でのデータ通信サービスはいくつかの選択肢があります。反面、MNOの国際ローミングサービスと違い、これらの海外用データ通信サービスでは、Wi-Fiルーターを別途持ち歩いたり、SIMカードを取り換えたりという手間があることは要注意でしょう。
現在の日本のMVNOは、SIMカードをMNOからの供給に頼っており、その中身はMVNOにとってアンタッチャブルなものです。しかし今後、MVNO自身がSIMカード調達できるようになると、海外で利用できるSIMカードと、国内のSIMカードと1枚に重畳することで、将来的にはSIMカードの抜き差しが不要となるかもしれません。
筆者の属するIIJでは、過去のこの連載でも説明した「HLR/HSS」を今後導入し、独自のSIMカードを提供していくことを、この8月30日に正式に発表しました。こういった取組により、将来的にはMVNOも国内通信と海外通信を1枚のSIMカードで提供できるようになり、MVNOの利用者がより便利に海外でのデータ通信をご利用いただける環境が整っていくものと思います。今は国内市場で競争しているMVNOも、将来は海外での通信サービスで競争するようになるかもしれませんね。
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