コンセプトをキープしたデザインに対し、機能面では大きな進化も遂げている。大きなところでは、カメラやディスプレイがより美しい映像を作り出せるようになり、スピーカーもステレオになり音量が上がった。それらを支えるチップセットも「A10 Fusion」になり、iPhone 6などに搭載された「A8」に比べ、処理速度は2倍に上がっている。ベンチマークアプリでの測定結果も、それを裏づける。バッテリーの持続時間も、iPhone 6s比で7が2時間、6s Plus比で7 Plusが1時間延びており、実際、外出先で使っているとバッテリーの減りがやや緩やかになった印象を受ける。
特に大きな変化といえるのが、カメラ機能だろう。iPhone 7ではレンズのF値が1.8と明るくなり、これまでiPhone 6 PlusやiPhone 6s Plusにしか搭載されてこなかった、光学式手ブレ補正にも対応した。スペック以上に、この進化は写真を撮るだけで一目瞭然だ。特に室内など、光量が不足しがちなシチュエーションでの写真が以前より明るくなり、より暗い場所でも細部が鮮明になっている。
より特徴的なのがiPhone 7 Plusで、こちらは先に述べたように、焦点距離が28mmと57mm、2つのカメラを搭載している。これらを切り替えることで、疑似的に光学2倍ズームの撮影が可能になった。その効果は明白で、被写体に寄って撮りたいというときにも、ワンタッチでカメラを切り替えられ、構図が決めやすい。
ただし、被写体との距離など、条件によっては、自動的に28mm側のカメラを使い、2倍のデジタルズームが使われることもあるようだ。恐らく、2倍程度であれば、画像の劣化も少なく、F値も28mm側のレンズの方が低いため、よりキレイな写真が撮れるとAppleが判断したからだろう。シャッターを押すだけで自動的に美しい写真が撮れるiPhoneならではの処理ともいえる。
一方で、iPhone 7 Plusで撮った被写体は、なぜか露出がうまく合わないことも何度かあった。必要以上に明るくなってしまい、全体的に白飛びしてしまうケースも見受けられた。2つのカメラを使い分けるという新しい技術に挑戦していることもあり、ソフトウェアの調整がまだ完全ではないのかもしれない。また、2つのカメラと機械学習を使い、背景のボケを際立たせる「ポートレートモード」もアップデートでの対応となる。その意味でも、iPhone 7 Plusのカメラをフルに生かせるようになるには、もう少し時間がかかりそうだ。
スピーカーもステレオになり、臨場感が上がった。音は本体センター側から聞こえる仕組みで、音量も増加しているため、動画などを再生すると、迫力が増したような感覚を覚える。もっとも、その副作用として、カメラのシャッター音やスクリーンショットまで大音量になってしまったのだが……。シャッター音は盗撮防止のため、ある程度はやむを得ないにしても音量が大きすぎるし、スクリーンショットではそもそも不要なはず。実際、Androidスマートフォンでは多くが、マナーモード時のスクリーンショットの音を無効にしているため、こうした仕様はぜひiPhoneにも取り入れてほしい。
また、音楽関連では、3.5mmのイヤフォンジャックも廃止されてしまった。防水仕様のためや、より本体をすっきり見せるためなど、さまざまな理由が考えられるが、変換ケーブルを使わなければ音楽が聴けないのは、やはり不便だ。イヤフォン側に変換ケーブルを付けっぱなしにしておけば、なくす心配も減るが、イヤフォンを他の機器で使う場合もあるので、その場合は変換ケーブルを外さないといけない。
シンプルな接続方法を実現した「AirPods」も発売されるが、Bluetooth経由になると、急な切断があったり、バッテリーを気にしなければいけなかったりと、取り回しが面倒になる。iPhoneで音楽を聴かない人にはいいかもしれないが、iPhoneはもともとがiPodから派生した商品であるだけに、次機種以降での復活を期待したい。
機能面では、センサーになったホームボタンも、賛否が分かれるところだろう。物理キーではなくなったため、可動部が減り、故障の原因が1つ減った上に、防水にもしやすくなるなど、メリットはある。その反面、いくら「Taptic Engine」を使い、疑似的に押し心地を再現しているとはいえ、やはり長く親しんできたホームボタンとは使用感が異なる。センサーのため、爪で押し込めないのもネックだ。もちろん、慣れの問題もあるかもしれないが、iPadも併用している筆者の場合、操作性の違いで混乱することがままある。使うにつれ、誤操作は減ってきてはいるが、今でも意図せずSiriが起動してしまうこともある。
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