「格安スマホ」という愛称も、そろそろ意味が通らくなるかもしれない。従来売れ筋だったミッドレンジモデルの枠を超えたSIMロックフリースマートフォンが、秋冬モデルとして続々と登場しているからだ。Huaweiは、楽天モバイルとタッグを組み、サブブランドのフラグシップ端末「honor 8」を発売。ASUSも「ZenFone 3」を日本市場に投入、「ZenFone 3 Deluxe」も10月下旬以降に発売される。
また、Lenovo傘下のMotorolaはフラグシップモデルの「Moto Z」や、ややスペックを落とした「Moto X Play」を用意。プラスワン・マーケティングのFREETELも、スペックにこだわった「KIWAMI 2」や「RAIJIN」を発売する。
商品によって価格の違いはあるが、いずれもミッドレンジ上位からハイエンド、プレミアムに位置付けられるジャンルの製品で、価格も高いものでは10万円に近づいてくる。端末の本体価格だけを見ると、もはや「格安」とは呼べない状況だ。各社がこぞってこのようなSIMロックフリースマートフォンを投入する背景には、MVNOのユーザー層が徐々に変化していることがありそうだ。
SAMURAIシリーズの最上位モデルであるKIWAMI 2を12月に発売する、プラスワン・マーケティングの増田薫社長は、SIMロックフリースマートフォンのニーズの移り変わりを次のように説明する。
「(料金プランも)大容量化し、ハードウェアスペックを要求するアプリケーションが増えてきている。これはゲームも一緒。そうすると、そこに合ったものを提供するという動きが、他のメーカーも含めて加速しているのだと思う。日本のSIMフリーだけを見ると、2年前は1万円台の端末がワーッと出てきて、2万、3万だと売れませんという状況だった。それが1年前だと2万円台が出始め、今は3万円、4万円と上がっている。SIMフリーを買おうと思っている方が増えてきている中で、ニーズが多様化している」
当初は一部のコアなユーザーが、トータルコストを節約するために、超低価格な端末とMVNOを組み合わせて使っていたが、一般層に拡大するに従い、大手キャリアと同じような使い方が求められてきた。そのニーズに応えるために、各社とも、徐々にスペックを上げた端末を投入しているというのが増田氏の分析だ。MVNOであれば通信料も安く、ハイエンド端末を買っても、トータルコストは大手キャリアより低く抑えることもできる。
もちろん、ハイエンド端末も以前から市場になかったわけではないが、最近では、販売ランキングなどにも、こうしたニーズの変化が表れ始めている。調査会社BCNの運営するBCN RETAILによると、7月には、Huaweiのフラグシップモデル「P9」が7位にランクインしている。
ランキングの上位はいわゆるミッドレンジモデルが多数を占めているが、P9も構成比は5.2%と決して小さな数字ではない。「P9 lite」や旧機種の「P8 lite」で数を稼ぎつつ、ハイエンドモデルのP9も堅実に売れているHuaweiは、SIMロックフリースマートフォン市場で首位に躍り出ている。
honor 8の発表会に登壇したファーウェイ・ジャパンのデバイス・プレジデント、呉波(ゴハ)氏は、スマートフォン全体のシェアを挙げつつ、HuaweiがApple、ソニーモバイル、シャープに続き、4位につけていることを明かした。呉氏は「SIMフリースマートフォンがメインになっていくよう、頑張っていきたい」と意気込みを語ったが、その過程では、やはりラインアップの多様化が求められる。P9、honor 8と、ハイエンドモデルを立て続けに投入したHuaweiの狙いは、ここにありそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.