―― 総務省のガイドラインが改正されましたが、この影響はどう見ていますか。
呉氏 ガイドラインに関しては、2014年にSIMフリースマートフォンを始めますと宣言したときのような(劇的な)効果まではないと考えています。ただし、日本市場において、スマートフォン2700万台、フィーチャーフォン1000万台の携帯電話市場に対する影響は大きなものがあるでしょう。これがSIMフリー市場にどの程度影響があるのかは、現時点では明確ではありません。
2017年の見込みは、今までの経験で考えると、2016年比で2倍ぐらいにはなっていると思います。このガイドラインによって、SIMフリー市場が今の3倍、4倍、5倍と成長してくれれば、政策が市場を覆す影響力を持っているといえるのだと思います。われわれの予想ですが、2017年のSIMフリー市場は300万台の規模だと見ています。これがもし本当に1000万台までいけば、ゲームのルールが変わったことになります。
―― SIMフリーの販売が好調となると、ドコモ、au、ソフトバンクからの引き合いも強くなるのではないでしょうか。
呉氏 大手3キャリアにはずっと協力しています。Huaweiの日本での主要事業はやはりキャリア事業で、その協力関係は今後も続けていきます。
―― といっても、ルーターがほとんどですよね。これからは、スマートフォンの比率も上がっていくのでしょうか。
呉氏 そうですね。例えばUQ mobileでは「P9 lite PREMIUM」が発売され、大変高い評価を得ています。第三者機関の報告書を見ても、UQ mobileでは、P9 lite PREMIUMのシェアが非常に高いですし、ネットでの評価もいい。(大手キャリアとの)協業の基礎はすでにできているので、これからはその関係をさらに発展、進化させていくことがポイントになります。
―― そのP9 lite PREMIUMはau VoLTEに対応しましたが、P9とMate 9は対応していません。au VoLTEへの対応はどのように考えていますか?
呉氏 P9とMate 9のチップセットは技術的にはVoLTEに対応しています。今後、au VoLTE対応の製品を発売する予定はあります。VoLTEは標準的な機能になりつつあるので、基本的には対応していこうと思います。
―― ちなみに、今お手元にポルシェデザインのMate 9をお持ちですが、Mate 9が好調とのことで、これを発売するのはいかがですか。相当お高いという話ですが……。
呉氏 Mate 9で、すでに日本のSIMフリー市場ではかなり高いものになっていますが、ポルシェデザインの販売価格は、日本円で14万から15万円ぐらいです。日本のユーザーの皆さまが、この高価格帯に対してどう考えているのかが、まだはっきりしません。その中で、いきなり14万、15万するものをSIMフリーの売り場に出すのは、ためらわれます。下手をすると、反感を招いてしまうからです。
日本市場における目標は「生き残ること」で、ステップ・バイ・ステップで、少しずつ伸ばしていきたい。製品ラインアップを全て発売するのではなく、その中から、日本市場に適したものを選んでお届けしていければと考えています。
―― なるほど。最後に、2月に開催されるMobile World Congressは、期待してもよろしいでしょうか。
呉氏 これは、ぜひ期待してください。ただ、その前に、日本でも発表会を開きます。ここで、2017年の戦略もお話する予定です。
2016年、P9、honor 8、Mate 9とハイエンド端末を立て続けに発売し、存在感を高めたHuaweiだが、一方でボリュームを見るとP9 liteが群を抜いている。ハイエンド端末でブランド力を広げつつ、ミッドレンジ端末で実を取るというのが、Huaweiの戦略といえる。呉氏がハイエンドからローエンドまで全てにフォーカスしていると語っていたのは、そのためだ。ハイエンド端末自体の売れ行きも伸びており、P9やMate 9の完成度の高さを見ると、次の製品も楽しみになってくる。
インタビューでは、おサイフケータイや防水に対する前向きなコメントも得られた。特におサイフケータイについては、日本のユーザーにとって「必須」とまで語っている。NFC Type A/BとFeliCaが一体となったチップが標準的になっている今、Huaweiの端末も、比較的速いタイミングでおサイフケータイに対応することになりそうだ。日本市場特有といわれていた防水も、iPhoneやGalaxyなどのグローバル端末に広がっている。世界でシェアを伸ばすHuaweiなだけに、今後の対応に期待したいところだ。
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