日本のスマホシェア4位に――2016年にHuaweiが躍進した理由石野純也のMobile Eye(12月5日〜16日)(1/3 ページ)

» 2016年12月17日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 2016年に、日本市場で最も躍進したメーカーを1社挙げるなら、Huaweiで異論はないだろう。

 同社は2014年にSIMフリー市場への本格参入を果たし、徐々に存在感を高めてきた。2016年にはフラグシップモデルの「HUAWEI P9」や、販路限定でコストパフォーマンスに優れた「Honor 8」、そして大画面モデルの「HUAWEI Mate 9」といったハイエンドモデルを続々と投入。そのいずれもがヒットし、BCN調査では、Appleやソニーモバイルなども含めたスマートフォンメーカー全体の中で4位につけるなど、シェアも急上昇している。

Huawei 11月までの累計販売シェアで、4位につけたHuawei

 BCNの調査は家電量販店が中心で、キャリアショップが含まれていないため、数値は割り引いて見る必要はある。ドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアだけでも数千店舗にのぼるため、家電量販店だけでは、真の売れ行きを反映しているとはいえない。それでも、Huaweiが販売を伸ばしているのは事実だ。MVNOでの取り扱いも増え、楽天モバイルのように、Huaweiのスマートフォンを戦略的にプッシュする会社も増えてきた。 12月16日に発売されたMate 9に関しては、楽天モバイルだけでなく、DMM mobileやエキサイトモバイルも約1万円の割引を行い、目玉に据えている。

Huawei 5.9型のディスプレイにライカと共同開発のデュアルカメラを搭載した「HUAWEI Mate 9」

 では、Huawei躍進の背景には何があったのか。ここ1年の動きを中心に、その理由を解説していく。

ブルーオーシャンへの先行投資が当たり、2016年はハイエンドモデルへシフト

 HuaweiはMVNO市場の拡大をにらみ、2014年からSIMロックフリースマートフォンを日本で販売してきた。“格安スマホ”という言葉ができた一方で、SIMロックフリーのスマートフォンはまだ種類が少なく、この市場はいわゆるブルーオーシャンになっていた。ライバルの少ないSIMフリー市場にいち早く参入し、存在感を高めていったというわけだ。2014年時点での市場規模は小さかったが、MVNOの拡大に伴い、SIMロックフリースマートフォンの販売台数も徐々に増えていく。

Huawei SIMフリー市場には2014年に参入した。写真は当時のもの

 転機となったのは、2016年4月に施行された総務省のガイドラインだ。これによって、実質0円が禁止されキャリアの端末販売に大きくブレーキがかかった一方で、MVNOやSIMロックフリースマートフォンの販売には弾みがついた。複数の業界関係者は、ガイドライン開始前の2月ごろから、MVNOの契約者数やSIMロックフリースマートフォンの販売台数が急増したと口をそろえる。実際、市場調査もその傾向を裏づけており、MM総研の調査によると、2016年上期は、SIMロックフリースマートフォンが79.1%と高い成長率を示している。全体に占めるSIMロックフリースマートフォンの構成比も、5%から9.8%に上昇した。

 早くからSIMロックフリースマートフォン市場に注力してきたHuaweiは、この大波に乗ることができた。規模の拡大に伴い、MVNOのユーザー層も変化。もともとの売れ筋だった3万円未満のミッドレンジモデルだけでなく、5万円を超えるハイエンドモデルにも、光が当たるようになった。この市場動向をいち早く察知したHuaweiは、6月にフラグシップモデルの「HUAWEI P9」を発売した。2015年は「HUAWEI P8」の投入が見送られていたことを考えると、これは大きな変化だ。P9発売の狙いを、同社の日本法人でデバイスプレジデントを務める呉波(ゴハ)氏は当時、次のように語っていた。

 「SIMフリー市場はスタートしたばかりで、キャリア市場が大部分を占めていました。日本のハイエンドスマートフォンは購入補助があり、0円で手に入ったり、キャッシュバックまでもらえたりしていた。そこに日本政府(総務省)がガイドラインを打ち出し、スマートフォン市場の競争環境が激化しました。これがP9とP9 liteを(同時に)発売した理由です。P9はフラグシップではあるが、価格競争力もあると思っています」

Huawei
Huawei フラグシップモデルの「P9」を6月に発売。カメラをライカと共同開発したことで、話題を集めた
Huawei P9の魅力を語るファーウェイ・ジャパンの呉波氏。写真は発表時のもの

 果たして呉波氏の読みは当たり、P9はSIMロックフリースマートフォンの売れ筋モデルとなった。販売台数こそミッドレンジモデルの「P9 lite」の方が多いものの、5万9800円(税別、以下同)と高額なモデルながら、SIMロックフリースマートフォンの販売ランキングではトップ10に顔を出すようになった。P9はその後、価格も5万円800円に改定。11月には各1000台の限定色としてレッド、ブルーの2色を加え、販売も引き続き好調だという。一方で、9月には楽天モバイルとオンラインショップに販路を絞ったHonor 8を発売。キャンペーンで3万5800円という低価格を打ち出したことが功を奏し、楽天モバイルの主力商品になっている。

Huawei
Huawei Honor 8は、楽天モバイルが独占的に販売する

 そして、12月16日には、満を持して「HUAWEI Mate 9」が発売された。Mateシリーズは、「Pシリーズとともに日本で主力として展開する」(呉氏)フラグシップのライン。サムスン電子のGalaxy Noteシリーズ対抗として2013年のCESで発表された「Ascend Mate」がその原点で、他のモデルと比べ画面が大きく、ビジネスユーザー向けという位置付けになる。

 Mate 9はこうした特徴を備えつつ、カメラはP9で好評だったライカとのコラボレーションを一歩進め、モノクロセンサー側の画質を上げ、より高画質な写真が撮れるようになった。6万800円と価格は同社の現行モデルの中で最も高いが、機能性の高さやコストパフォーマンスを考えると、P9に続くヒット商品になるかもしれない。

Huawei P9で好評を博したデュアルカメラには、さらに磨きがかかった

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