「分離プラン」の弱点をカバーしたau新料金プラン MVNOへの流出阻止なるか石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

» 2017年07月10日 19時22分 公開
[石野純也ITmedia]

「分離プラン」による端末の割高感はオプションでフォロー

 ただし、auピタットプランとauフラットプランは、どちらも「分離プラン」という位置付け。これらのプランを選択すると、端末購入に伴って付けられる「毎月割」の対象外になる。考え方としてはドコモが夏商戦に合わせて導入した「docomo with」と同じで、端末は割り引きなしの定価になる代わりに、料金プランそのものを安価にしたものといえるだろう。

auピタットプラン 新料金プランは、端末と料金を切り離した「分離プラン」という位置付け

 docomo withとの違いは、田中氏が「スマホを買わなくても、プラン変更はできる」と強調したところにある。auの新プランは、「Android全機種に対応」(同)。iPhoneの場合も、ユーザーが自ら料金プランの変更をすれば、新料金プランが適用される。「Galaxy Feel」と「arrows Be」の2機種の購入にひもづいたdocomo withとは違い、特定の端末を買う必要なく、恩恵を受けられるというわけだ。

auピタットプラン
auピタットプラン LTE対応Android全機種対応で、プラン変更すればiPhoneでも利用できるのが、docomo withとの大きな違いだ

 とはいえ、毎月割がつかないと、端末の“素の価格”が丸裸になる。そのため、例えば夏モデルの「Galaxy S8」であれば、9万720円(税込、以下同)という価格がそのままユーザーに提示されてしまう。これまでは実質価格で5万7456円と見せていたことを考えると、大幅な値上げと受け取られかねない。契約時に新料金プランを適用することはできないが、iPhoneの場合、iPhone 7の32GBでは、本体価格の7万9200円なので、実質価格の2万520円の間に、5万8680円もの開きがある。

auピタットプラン 料金は安い一方で、見かけ上、端末の価格が上がってしまうのが分離プランのデメリット

 この負担感を軽減するために、KDDIは4年の割賦を導入。「24カ月の割賦を4年間に延ばしたらどうなるのか。毎月の支払額が半分になる」(田中氏)というシンプルな発想が、その原点だ。ただし、4年だと、ユーザーが1つの端末を使う平均年数を超えてしまう。田中氏も「同じ機種を48カ月も使うのかという議論がある」と語る。この問題を解消するために4年割賦とセットにしたのが、アップグレードプログラムEXだ。

auピタットプラン
auピタットプラン 割賦の支払い回数を倍にすれば、月々の負担額は半分になる。支払い回数が倍増する問題に対しては、「アップグレードプログラムEX」という答えを用意した

 アップグレードプログラムEXは月額390円(不課税)のオプション。加入後に24回分を支払うと、25カ月目以降の残債が免除され、好きなタイミングで機種変更することが可能になる。簡単にいえば、4年割賦を組み、2年分アップグレードプログラムEXの料金を払えば、残りの借金がチャラになるということだ。利用時には端末の下取りや、アップグレードプログラムEXへの加入を継続することが条件となるが、端末が「あたかも半額で買えたようになる」(田中氏)のは、メリットが大きい。

 先に挙げたGalaxy S8の場合、4万8600円ぶん支払えば、残債が0になり、実質価格よりも割安だ。このアップグレードプログラムEXがうまく機能すれば、分離プランを導入したからといって、端末の販売台数が大幅に落ち込むことはなくなるだろう。分離プランを乱暴に導入するのではなく、端末販売に悪影響を与えないよう、ソフトランディングの手段をきちんと用意してきた点は、評価できるポイントだ。KDDIが新プランへの移行を前提に考えている証拠ともいえるだろう。

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