iPhone 8/8 Plusの心臓部である「A11 Bionic」は、先代のiPhone 7/7 Plusに搭載された「A10 Fusion」とはコアの構成が異なっており、高速に駆動する2つのコアと、省電力に動く4つのコアからなる。シーンに応じてこれらを使い分けることで、パフォーマンスと省電力性を両立させているというわけだ。パフォーマンスを出すための2つのコアはA10 Fusion比で25%、省電力用のコアは70%の高速化を実現したという。
といってもiPhone 7/7 PlusのA10 Fusionの性能もかなり高いため、正直なところ、日常的に使う分には大きな差は感じられない。カメラを起動して写真を撮ったり、SNSに書き込んだりする使い方なら、どちらも十分サクサク動くからだ。グラフィックスに凝ったゲームなどをプレイすれば差は出るかもしれないが、使用感が大きく変わったわけではない。むしろ、ここで使用感が変わってしまっては困ってしまう。
ただし、ベンチマークでは、その差が如実に表れていたことも付け加えておきたい。Geekbench 4で測定した結果を見ると、iPhone 8/8 Plusともに、シングルコアスコアは4200を超え、マルチコアに至っては1万を超えている。この数値は、6月に発売されたばかりの「iPad Pro(10.5型)」をも上回る。つまりiPhone 8/8 Plusは、iOSデバイスでは歴代最高のパフォーマンスを誇る。上述の通り、確かに普段使いの使用感で大きな差は出ないかもしれないが、iMovieでビデオ編集をしたり、写真の編集をしたりといった、パフォーマンスを要求される使い方をする人にとっては、うれしい進化といえる。
もう1つ、パフォーマンスという観点では、LTEのスピードが向上したことにも注目しておきたい。特に、iPhone 8/8 PlusはTD-LTEのBand 42(3.5GHz帯)に対応している点が大きい。Band 42は大手3キャリアに割り当てられており、いずれも帯域幅が大きく、特に都市部などネットワークが混雑しがちなエリアでの速度向上が見込める。試しに、レビュー用のiPhone 8/8 PlusにauのSIMカードを挿し、筆者の事務所がある渋谷近辺で使ってみたが、体感でダウンロードの速度が明らかに速くなっている。
試しにスピードテストを行ってみたところ、iPhone 8/8 Plusともに、下りで50〜85Mbps程度の速度が出ていた。iPhone 7は40Mbsp台前半だったので、最大値の速度は倍になっていたことになる。ここまで実測値が違えば、体感で気づいたのにも納得である。念のため、Serving Cell Infoを確認してみたが、やはりBand 42につながっていたようだ。Band 42のエリアはドコモが先行しており、ソフトバンクも一部で導入済みだ。
iPhone 8/8 Plusでは4CC CAを導入したauが最速とのことだが、端末としては256QAMに対応していることもあり、3キャリアともに、実行速度向上が期待できる。ただし、Band 42は比較的最近エリア化が始まった周波数帯。電波は生ものともいわれるほど、日々状況が変わるため、どこでもこの速度が出るとは限らない点には注意してほしい。
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