それは、手のひらに収まる“未来” 先進性と合理的な操作性が融合した「iPhone X」先行レビュー(2/3 ページ)

» 2017年11月01日 09時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 とはいえ、これまで培われてきたエコシステムが一気に“未来”へ進むわけではない。アプリ側がiPhone Xのディスプレイにきちんと対応していないと、その性能をフルに引き出すことはできない。例えば、筆者がよく使うアプリとしてGoogleマップをインストールしてみたが、残念ながら上下に帯ができてしまった。

iPhone X iPhone Xのディスプレイサイズに対応していないアプリは、上下に帯ができてしまう。写真はGoogleマップ

 「Pokemon GO(ポケモンGO)」も同様の表示になった。下からスワイプすることでホーム画面に戻る現状の仕様に鑑みると、ポケモンGOのようにフリックを多用するゲームアプリは、むしろ帯がある方が操作しやすい。ユーザビリティを考えると、画面対応にあたって、こうした操作を再考する必要もあるだろう。なお、これらのアプリは、iPhone X発売前の10月31日にテストしている。そのため、今後アップデートがかかる可能性も十分ある。あくまで、発売前に非対応アプリを表示するとどうなるかの、いち参考例にとどめておいていただければ幸いだ。

iPhone X ポケモンGOも、上下に帯が出る仕様。ただし、フリックを多用するゲームでもあるため、こちらの方が操作はしやすいかもしれない

付けヒゲありでもOK 驚くほど精度の高い「Face ID」

 ホームボタンがなくなったことで、同時にここに埋め込まれていたTouch IDも非対応になった。その代わりに、iPhone Xでは、前面のTrue Depthカメラでユーザーの認証を行う。それが「Face ID」だ。顔認証と聞くと、暗い場所で読み取りにくく、本体をしっかり正面に構えないといけないと思われるかもしれない。結果として、指紋センサーの方が確実性が高い――筆者も当初はそう思っていた。だが、そうした先入観は、いい意味で大きく裏切られた。

 発表時にも述べられていたように、Face IDは単純にインカメラで撮影した画像でユーザーの認証を行っているのではない。True Depthカメラは、その名の通り、顔の「深度」情報まで取得している。仕組みとしては、ドットプロジェクターで顔を3万の点に分解し、それを赤外線で読み取るというものだ。これによって、正面に向いていないときでも、しっかり顔認証を行うことが可能になるほか、暗い場所でも問題なく利用できる。

iPhone X 前面の切り欠き部分がTrue Depthカメラ。全画面表示時には少々邪魔になるが、その分、性能は抜群に高い

 利用の仕方も簡単だ。いや、簡単というより、ロック解除を意識する必要がなくなった。iPhone Xを持ち上げると、画面が点灯する。この状態でロック画面を上にフリックすると、いつものホーム画面が現れる。ユーザーとしては、Touch IDの上に指を置くというような、特別な動作を一切する必要がないのだ。しかも精度が高く、顔を斜めに向けていても、机の上に置いた状態でも、しっかり認識された。顔を立体的に捉えているため、角度がついていても問題ない。

iPhone XiPhone X ロックがかかっているときは、鍵が閉じたマークが表示される(写真=左)。顔を向けるとすぐに鍵が外れる。この状態で画面を上にスワイプすると、すぐに使い始められる。ただし、基本的には鍵が開くのを意識する必要はなく、ユーザーがするのはスワイプだけでいい(写真=右)
iPhone X 首をグルっと回して、正面だけでなく、立体的に顔の情報を記録する

 さらにすごいのは、機械学習によって、顔の変化に対応できることだ。ためしに付けヒゲを付けてみたが、確かに付けたばかりだと顔を認識しない。しかしここでパスコードを入力することで、登録された顔と、ヒゲのある顔が同一人物だとiPhone X側が学習する。学習は徐々に進んでいくようで、3回目のパスコードを入れたあとは、ヒゲのありなしに関わらず、どちらも筆者だと認識してロックを解除できた。これには正直、驚かされた。

iPhone X 付けヒゲを付けた筆者。この状態だと、初回の認証には失敗したが、パスコードを3回入力したあとは、きちんと顔を読み取ってくれるようになった

 暗い場所で、しっかり認証できたことも付け加えておきたい。ただし、残念ながら本機を借りてからこのレビューが掲載されるまで、あいにくの移動続きで屋外に出ることがほとんどなかった。人がいるところでも本機を出せないため、直射日光が強く当たるシチュエーションでFace IDがどのように動作するのかまでは検証できていない。この点は、ご容赦いただきたい。

 顔認証は、画面が点灯すると自動的に行う仕様になっている。ロックが解除されたときのみ、通知の中身が表示されるなど、小技も利いてきる。ユーザー認証の方法も、一歩未来に進めたというわけだ。

iPhone XiPhone X ユーザーの顔が読み取られていないときだけ、通知の中身を非表示にすることができる
iPhone X 設定で、認証の速さや強度を変更することも可能だ

 なお、Apple Payの認証にもFace IDを利用する。そのため、手順が少々変わっており、まずサイドキーをダブルクリックしてApple IDを立ち上げ、Face IDでの認証が済むと初めて決済が始まる。iD対応自販機やタクシーでの決済を試みたが、Touch IDのときのように、あえて指を置く必要はなくなったのは便利だ。一方で、指をTouch IDに置きっぱなしにしたまま決済機に近づければよかった以前と比べると、認証のための動作が1つ増えてしまう。Face IDでの認証は一瞬のため、そこまで手間だとは感じなかったが、手順が変わることは覚えておいた方がいいだろう。

iPhone X サイドボタンをダブルクリックして、カードを呼び出してから決済する

 このTrue Depthカメラを、Face IDだけに生かすのはもったいない。Appleもそれは百も承知で、APIを公開しており、アプリが対応すれば、さまざまな機能に応用できる。Appleが示した1つの“お手本”が「アニ文字」だ。アニ文字はiMessageで利用できる機能で、さまざまなキャラクターに表情をマネさせたうえで、声をしゃべらせることができる。人の表情をトレースすることで、キャラクターが生き生きと動くのが楽しい機能だ。作成できるのは、True Depthカメラを搭載したiPhone Xだけだが、受信側は既存のiPhoneでもいい。

iPhone X True Depthカメラを応用した「アニ文字」。キャラクターがユーザーの顔の動きをトレースしてくれるのが新鮮で楽しい

 また、Apple純正アプリの「Clips」も、True Depthカメラを応用した「シーン」と呼ばれる機能に対応する。これは、あらかじめ用意された背景と自分の映像を合成できる機能だが、自分の姿にもエフェクトがかかり、あたかもCGの中にいるかのような感覚を味わえる。インカメラ側で深度情報まできっちり取れるため、AR(拡張現実)対応もしやすくなっているのだ。

 分かりやすいところでは、インカメラでポートレートモードが利用できるのも、iPhone Xだけだ。iPhone 8 Plusから加わったポートレートライティング(β)にも対応する。インカメラでの撮影でも、より印象深い写真を撮れるようになり、活用の幅が広がった。セルフィが好きなユーザーにもオススメできそうだ。ただし、これらの機能は先に述べた通り、あくまでAppleの“お手本”。サードパーティーが活用することで、アプリの進化も期待できる。

iPhone XiPhone X 深度を取れるようになったことで、セルフィ―でもポートレートモードを活用できる(写真=左)。iPhone 8 Plusから加わった、ポートレートライティング(β)にも対応(写真=右)

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