2021年を振り返る(10月編):楽天モバイルが「ローミング終了」に本腰?/iPhone SE(第2世代)を「一括10円」で売るからくりとは?Mobile Monthly Top10

» 2021年12月31日 12時00分 公開
[井上翔ITmedia]

 2021年も、残りわずかです。ITmedia Mobileのアクセスランキングを月単位でチェックしつつ、この年を振り返っていこうと思います。今回は、10月のアクセス数トップ10を紹介します。

 10月は、7月以来3カ月ぶりにスマートフォン決済のキャンペーン記事がアクセス数のトップに立ちました。ただし、1〜3位の差はわずかで、結構な接戦でした。

 2位は、楽天モバイルが「パートナー回線」へのローミングサービスの終了を“早める”ことを伝える記事でした。

 同社は自社のエリア整備が進んでいない地域において、KDDIと沖縄セルラー電話が運用している「au 4G LTE」のネットワークにローミングしています。同社は10月1日から順次、ローミング対象エリアを縮小することにしました。これは楽天モバイルによる自社エリアの整備がある程度進んだということを意味します。確かに地方でも楽天モバイルの基地局が増えたことは事実で、市街地では見かける機会も増えています。ただ、市街地を少し外れると圏外になることが多く、屋内基地局が整備されていないと思われる商業ビルでも、圏外になることが少なくありません。「ローミングサービスの終了を前倒す」という判断に疑問を抱くのも、現状では致し方ない状況です。

 しかし、楽天モバイルがKDDIに支払うローミング料金は、楽天グループ(楽天モバイル)の連結決算に影響を与えるほどの規模にまで膨らんでいます。それだけ、急速にユーザーが増えているということでもあるのですが、「ローミングを早く終わらせて、それで節約できた分を基地局整備の加速に使った方がいい」という判断に至ったのだと思います。

 ただ、基地局の設置密度がそれほど高くない地域では「急につながらなくなった」という報告を耳にする機会が増えました。ローミングを早く終わらせた分だけ、矢継ぎ早に十分な数(と品質)の基地局を設置しなければならない――楽天モバイルは、エリア構築的な意味で正念場を迎えています。

ローミングエリア 楽天モバイルは、2021年10月からau 4G LTEネットワークへのローミングの終了を加速し始めました。基地局の整備も進んできましたが、それでもローミング終了によって「穴」となるエリアが一部に生じているようです

 3位には、一部の家電量販店や携帯電話ショップで見られた「iPhone SE(第2世代)」の「一括10円」販売のからくりを解説した記事が入りました。

 現在の電気通信事業法と関連指針では、MNOと一部MVNO(※)が回線契約とひも付く端末購入時に行う利益供与(値引きやキャッシュバック)を原則として税別2万円までに制限しています。ただし、回線契約とひも付かない端末購入時も同様の割引をする場合はその限りではありません

 このことを「活用」して、回線契約とひも付かない場合もある程度の割引を行い、それに回線契約に伴う割引を上乗せした結果が「一括10円のiPhone SE」なのです。ある意味で“抜け道”のような割引手法ですが、回線契約がない場合の割引額まで規制してしまうと、公的な「価格統制」にもつながりかねません。独占禁止法上の「不当廉売(不当に安い価格での販売」を問うことは検討できるでしょうが、その場合は「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがある」ことを客観的に証明できなければなりません。

 今後、この「売り方」はどういう推移を見せるのか、ここ1〜2年の動向にはしっかり注目したい所です。

10円 回線契約とひも付く割引を上限(税別2万円/税込み2万2000円)まで適用した上で、回線契約とひも付かない割引を重ねることで「一括10円」を実現しています

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