ミッドレンジモデルの印象が強かったのは、円安ドル高の為替相場とも無縁ではない。12月に日銀が発表した長期金利の変動幅拡大で揺り戻しはあったが、4月以降、急速に進んだ円安や物価高によって、スマートフォンの価格も高騰した。Appleは、7月に当時現行モデルだったiPhone 13シリーズの値上げに踏み切った他、他社のハイエンドモデルも、21年モデルと比べると、軒並み価格が上がっている。ハイエンドモデルの一部は、20万円に近づきつつある。ここまで高額化が進むと、一般のユーザーが手を出しづらくなってしまう。例年以上に、値ごろ感のあるミッドレンジモデルが求められていたというわけだ。
そんな景況感を反映してか、スマートフォンの国内出荷台数は減少傾向にある。12月16日にIDC Japanが発表したデータによると、22年第3四半期の国内出荷台数は721万台で、前年同期比11.4%減。第2四半期も820万台で6.4%減少している。1月から3月の第1四半期は995万台で増加傾向にあったものの、円安ドル高が急速に進んだ4月以降、実績が悪化していることが読み取れる。相対的に、ミドルレンジモデルがユーザーの選択肢として挙がりやすい状況になっているといえる。
スマートフォンの成熟化に加え、価格が高騰したことで、1台の端末をより長く使う機運も高まっている。このような中、2022年はアフターサービスを充実させる動きも目立った。サムスンは、2019年からGalaxy Harajukuで実施していた店頭修理や、ドコモショップ丸の内店で展開していた「Galaxyリペアコーナー」を拡大。ドコモとタッグを組む形で、9月に8店舗の新規開設を発表した。Galaxyリペアコーナーは、データを初期化することなく修理を受けられるのが売りで、時間も最短60分と短い。筆者が「Galaxy Z Fold3 5G」を破損してしまった際にも、わずか2時間で外装が新品のようによみがえった。
同様に、GoogleはiPhoneの第三者修理サービスを展開するiCrackedと提携しており、日本上陸以降、Pixelシリーズの即日修理を提供してきた。ここに、ソフトバンクが加わり、5月には「あんしん保証パックネクスト」のサービスを開始した。あんしん保証パックに加入していると、1年に2回まで、全ての修理を無料で受けることができる。この枠組みに11月からシャープも加わり、AQUOSシリーズやLeitz Phoneといった同社の端末を修理できるようになった。現状ではソフトバンクモデルのみの対応になるが、他キャリアやオープンマーケット版への拡大にも期待したい。
端末の補償という観点では、ドコモが9月に提供を開始した「smartあんしん補償」も注目しておきたいサービスだ。従来提供してきた「ケータイ補償サービス」を一新しており、主にハイエンドモデル向けの月額料金を値下げした他、付帯保険のような形で家電や携行品の補償も付くようになった。携帯電話やスマートフォンの買い替え期間が長期化するなか、アフターサービスはこれまで以上に重要になりつつある。端末そのものの性能や価格に加え、サポートの充実度もユーザーの評価を分ける指標になりそうだ。2023年以降も、この動きには注目していきたい。
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