楽天モバイルが単月黒字化(EBITDA)を達成できた理由は? 三木谷氏は通期での黒字化に自信(2/2 ページ)

» 2025年02月14日 23時17分 公開
[小山安博ITmedia]
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通信品質は地下鉄やトンネル、人口集中エリアでの向上を目指す

 遅れている設備投資も推進し、品質改善を強化する。2024年度は810億円と1000億円を割り込んだが、2025年度には1500億円を確保。地下鉄やトンネルなどの共用基地局の帯域拡張、人口集中エリアにおける混雑対策、プラチナバンドを活用したエリアの穴の削減といった対策を進める。

楽天グループ 削減していた設備投資額を増やして品質改善を強化する

 こうした投資の強化で、「上位3社に追い付け追い越せ」(同)と通信品質の改善を図っていく。

 衛星通信のAST SpaceMobileに関しては、2025年3月に実証実験が終了し、60機まで衛星を拡大して本サービスにつなげたい考え。「2026年のできるだけ早い段階でサービスを開始したい」と三木谷氏。「おそらく、楽天モバイルだけが自然災害があっても(スマートフォンが)つながる状況を実現できるのでは」(同)としている。災害時に、他キャリアのユーザーにも開放するかどうかは、今後の検討だとした。

楽天グループ 2026年早期に展開予定のAST SpaceMobile

 なお、同社が提案していた「お試し割」については、「選択肢として無料期間を設けるのはありだが、ユーザーへのバック(還元額)する枠に含まれてしまうので、(スマートフォンの値引きとお試し割の)どちらが有効か、冷静に判断しながら考えていきたい」(同)との考えだ。

フィンテックも順調に拡大、AIもRakuten Linkを起点に強化へ

 フィンテックセグメントでは、楽天銀行、楽天証券、楽天カードなどがいずれも順調に推移。売上収益は同13.1%増の8204億1900万円、Non-GAAP営業利益は同37.9%増の1679億9400万円だった。

 楽天カードのショッピング取扱高が13.7%増の24兆円、楽天銀行単体口座数が11.6%増の1648万口座、預金残高が16.9%増の12兆円、楽天証券口座数は17%増の1,193万、NISA口座数は28.8%増の600万など、さまざまな指標が順調に伸びた。

楽天グループ フィンテックセグメントの主要なKPI

 「ナンバー1カードとして成長した」(同)という楽天カードは、営業利益率もNon-GAAP営業利益も拡大。同じく決済サービスの楽天ペイメントは、売り上げが同22.1%増の917億円まで拡大。取扱高拡大、コストコントロールによって、通期のNon-GAAP営業利益は135億円改善の45億円で黒字化した。

楽天グループ 楽天カードの業績
楽天グループ 楽天ペイメントも黒字化を果たした

 楽天証券は、「(2003年のDLJディレクトSFG証券)買収時には30万口座ぐらいだったと記憶している」(同)ところから、1200万口座まで拡大。「1500万口座も見えてきた」と三木谷氏は話す。手数料の一部無料化も行ったものの、売り上げ、利益ともに伸ばしており好調だ。

楽天グループ 楽天銀行の業績ハイライト
楽天グループ 楽天証券も順調

 みずほフィナンシャルグループとの提携では、「投資だけでなく双方にメリットのある形で、さまざまな業務提携が進んでいる」と三木谷氏はアピールしている。

楽天グループ みずほフィナンシャルグループとの取り組みも進展した

 主力の楽天市場などインターネット事業も売り上げ収益、Non-GAAP営業利益ともに拡大。特に収益率の高い広告事業が伸びた他、海外事業の売り上げも増加。楽天市場や楽天トラベルでは楽天モバイルユーザーの利用が高く、モバイル事業とのシナジーが進展した。

楽天グループ インターネットセグメントも順調に伸長

 楽天グループでは、Rakuten Linkにおける生成AIサービスや法人向けのRakuten AI for Businessなど、AIサービスも強化しつつ、社内でもAI利用による業務効率化などを図っている。「トリプル20」プロジェクトとして、マーケティング効率、オペレーション効率、クライアント効率をそれぞれ20%増加させルという取り組みで、2024年度は「約105億円の営業利益を創出できた」(同)という。

楽天グループ トリプル20で創出した利益を、来期はさらに拡大させる

 カスタマーサポート、ソフトウェアのコーディング、広告でのターゲティング精度向上、セマンティック検索といった分野でAIを活用してきたが、2025年度はこうした活用をさらに強化し、「2倍の200億円を上回る利益を創出していきたい」と三木谷氏。

 モバイル事業が利益を生み出したことに対して三木谷氏は、「従前より、楽天モバイルという挑戦的なプロジェクトに取り組んできたが、明らかに楽天エコシステムへの貢献が大きいのは分かっていた」と強調。グループ全体の売り上げ、利益の伸びに対して、「モバイルファクターが非常に大きく、他の事業を含めてグループ全体で筋肉質になった」とアピールした。

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