1000HEの特徴の1つに、新たに設計されたキーボードがある。各キーをフラットな形状に変更し、キーとキーの間にすき間を設けて格子状のパネルにはめ込むことで、ミスタイプの可能性を減らしつつ、見た目にもすっきりしたデザインに仕上げているのがポイントだ。
こうしたデザインのキーボードはその昔、ゴム製キーボードによく見られ、俗に「チクレットキーボード」と呼ばれたが、キーの押しにくさから廃れていった。しかし、昨今ではプラスチックのキーキャプとゴム製ドームを用いてキーを押しやすくしたうえで、格子状のパネルと組み合わせた改良型が登場し、MacやVAIOが積極的に採用し始めたことで、ちょっとしたトレンドとなっている。Eee PCもこの流れに乗った形だ。
1000HEのキーボードは日本語87キー仕様となっており、1000H-Xの日本語86キー仕様から新たに右Altキーが追加された。そのほかのキーレイアウトは共通化されており、全体的にクセのない無難なキー配列だ。
アルファベットキーは横14ミリ/縦13ミリ、スペースバーは横52ミリ/縦13ミリと十分なサイズで、隣接するキーが離れていることから、確かに隣りのキーを誤って押してしまうことは少なかった。しかし、最上段のキーは横11.5ミリ/縦9ミリと小さめで、カーソルキーと、その周囲にある右Shift、「ろ」は横10ミリ/縦13ミリ、「半角/全角」と「¥」も横10ミリ/縦13ミリと変則的なキーピッチなので、これらは1000H-Xより押しにくい印象だ。その一方で、「ろ」の左隣りにある「め」や右Ctrlのキーは長めにデザインされており、各キーのサイズには少しチグハグな面も見られる。
もっとも、キーの並び自体に無理はなく、主要キーのキーピッチは約17.5ミリを確保しているため、タッチタイプは十分に可能だ。キーストロークは実測で約2ミリといったところで、キートップは少しふらつくものの、クリック感があって意外に押しやすい。慣れれば、長文の入力も難なく行えるだろう。
ただし、スペースバーを親指で押すと、親指の側面がキーボード下端の段差にぶつかる点と、入力時にキーボードユニットが少したわむのは気になった。キーボードユニットは裏面を粘着テープで止めて補強しているが、VAIOのようにキーボードユニットとトップカバーを溶接してガッチリと固定しているわけではない。新設計のキーボードは、デザインがよくなったとは思うが、使い勝手の面ではまだ改善の余地がありそうだ。
なお、キーボードの左上には4つのワンタッチボタンを備えている。左から、液晶ディスプレイ表示のオン/オフ、画面解像度の切り替え、Super Hybrid Engineの動作モード切り替え、Skypeの起動が可能だ。このうち、右の2つはユーザーが任意のプロフラムを割り当てることもできる。


キーボードユニットは、キーボード上部にある4本のツメを押し込むことで取り外せる。テープで接着されているため、注意深くはがすことが必要だ。キーボードユニットは、格子状のパネルとキー部分が一体化した薄型だ(写真=左/中央)。キーボードユニットを取り外した状態の本体(写真=右)。中央のネジの上には、「はがすと保証が無効になる」ことを記載したシールが張られているタッチパッドは横67ミリ/縦37ミリと横長で、1000H-Xと同じものだ。左右のクリックボタンは十分なサイズがあるが、少し硬めの作りで、押すのに力がいる。タッチパッドにはEee PCシリーズでおなじみのElantech Devicesのユーティリティが導入されており、マルチタッチ機能に対応する。2本の指でパッドを上下/左右になぞるとスクロール、2本の指を広げたり閉じたりすると拡大/縮小、3本指で上になぞるとマイコンピュータの表示、3本指で下になぞるとウィンドウ切り替え、3本指で左右になぞるとページ切り替えなど、最大3本までの指を使った操作が可能だ。
しかし、タッチパッドは縦が短めなので、慣れないうちは2本指を広げたり閉じたりする動作や、3本指での操作が少し窮屈ではある。また、タッチパッドの位置がキーボードのホームポジションに手を置いたときの中央ではなく、ボディの中央に配置されている点が気になる人もいるだろう。
液晶ディスプレイのサイズと画面解像度は1000H-Xと変わらない。10型ワイドで1024×600ドット表示の非光沢パネルを搭載している。最近のNetbookでは、縦解像度がさらに短い1024×576ドット(アスペクト比16:9)の液晶ディスプレイが増えつつあるが、縦600ドットの解像度は維持された。
もちろん、ほかのEee PCと同じように、ワンタッチボタンやタスクトレイのアイコンから画面解像度の切り替えが可能だ。縦解像度の狭さを補うため、画面のアスペクト比を無視して縦768ドットの解像度を縦600ドット表示の液晶パネルにスケーリング処理して映し出す「1024×768ドット圧縮」の設定も引き継がれている。
表示の傾向は1000H-Xと少し異なる。最大輝度は1000H-Xより低めで、デフォルトの色温度はやや高め(白が青っぽい)の設定だ。もっとも、1000H-Xは輝度がかなり高かったので、1000HEの輝度がそれより低いとはいえ、明るさに不満はない。この明るさの違いは、前述のバッテリー駆動時間テストに少し影響しているものと予想される。非光沢パネルの採用により、外光が映り込む心配は無用で、Netbookに使われる低コストのTNパネルにしては上下の視野角も余裕があるため、視認性はよいほうだ。
以上、2回に渡ってEee PC 1000HEを検証したが、既存の機種を改良したモデルだけあって、手堅い製品という印象を持った。
チップセットが変更されていないため、CPUをAtom N280に高速化した効果は体感できるほどではなく、パフォーマンスに過度な期待は禁物だが、Eee PCシリーズで最長を誇るバッテリー駆動時間は非常に大きな魅力だ。新型のキーボードは一長一短ではあるものの、打ちにくいものではなく、マルチタッチ対応のタッチパッドと、視認性が高い10型ワイド液晶ディスプレイを組み合わせることで、良好な使い勝手を提供してくれる。
一方、常に携帯して使うことを考えると、大きめなボディサイズと重量はネックになるだろう。また、人によってはS101Hや1002HAに比べてデザインが洗練されておらず、発熱や騒音の面で不利なことが気になるかもしれない。しかし、そのぶん価格は4万7800円と安く、コストパフォーマンスは優秀だ。サイズやデザインに納得できるのであれば、買い得感の高い低価格ミニノートPCといえる。
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