米Appleが第3四半期(4〜6月期)に出荷したMacは260万台。第2四半期(1〜3月期)は、世界的なPC市場の下降傾向と同調するように前年同期比3%減の222万台だったが、第3四半期は前年同比4%増と回復している。また、NPD Groupの調査では、1000ドル以上の高額なPC市場で見るとMacのシェア(金額ベース)が非常に高い結果になったという。Macを愛する記者のひいき目を差し引いても、最近のMacの好調ぶりは確からしい。
そんな中、大手量販店の1つであるヤマダ電機がMacに関する取り組みとしてユニークなサービスを開始している。パソコン教室――と聞くと何やら古めかしい響きに聞こえるが、同社は5年以上前から各店舗にパソコン教室を設置し、ユーザーが学習できる場を提供してきた。量販店がPC講座を開設するのはそれほどめずらしくはないものの、ヤマダ電機は販促のためのサービスではなく、それ自体で収益をあげられる単一事業として本格的に展開している点が特徴だ。同社IT事業本部セミナー開発室の室長を務める木暮功氏に話を聞いた。
ヤマダ電機は現在、全国約100店舗でパソコン教室を展開している。木暮氏は「量販店でパソコン教室を開設した最大の理由は、PCの販売やサポートだけでなく、学習する場も用意することで、PCに関することをワンストップでユーザーに提供したかったから」と振り返る。すべてをヤマダ電機で提供できれば同店に対する顧客満足度も上がるという論理だ。また、「製品を購入したときのポイントを(有料講座に)利用できますし、専門のパソコン教室だと“いくらするんだろう?”とためらってしまうところを、ヤマダ電機なら店頭にぶらっと来て気軽に体験できるというのもメリットですね」とハードルの低さをアピールする。
現在、ヤマダ電機のパソコン教室を利用している人は月間約3000人ほど存在し、「パソコン教室自体が“右肩下がり市場”と言われる状況」(木暮氏)だが、ヤマダ電機のパソコン教室はそれ自体で事業として成立しているという。パンフレットに書かれた料金体系を見ると、入会金が3129円、教室維持費が1050円、受講料が1時間あたり1260円となっており、例えば月に8時間の講座を受講する場合は1万1130円(入会金除く)とそれほど高い印象はない。教材はシリーズで150種類ほどあり、通常は教室に設置されたPCを使ってDVDに収録されているプログラムを学んでいく方式だ。ちなみにこの教材は同社が独自に開発したものだという。
「市販されている学習教材ではなく、受講者のアンケートや現場のスタッフからのフィードバック、メーカーとの協力を受けてオリジナルの教材を用意しています。実際にどんなニーズがあるのか反映できるメリットや、新製品が出た直後でもあらかじめそれにあわせたプログラム作りができるというのは大きいですね。例えばソフトウェアの新バージョンが出たときに、販売日と同時にその新機能を説明する教室を開設できるわけです。これはほかのパソコン教室ではできないことだと思います。実際に販売しているということに加えて、その製品のメーカーさんから直接協力があるわけですから」と木暮氏は言う。
量販店内のパソコン教室と聞いて、正直最初は“片手間”の印象があったのだが、むしろ量販店であるからこそユーザーにとってより鮮度の高い内容を提供できるわけだ。
ヤマダ電機の各店舗で展開しているパソコン教室は、文字入力やメーラーの使い方といった入門向け講座からオフィス系ソフトウェアの活用まで、これまではWindows向けのものだった。一方、好調なMacの販売にあわせて、ヤマダ電機はMac売り場の面積を拡大しており、2009年4月に全国展開を始めた「ライブネット講座」(インターネット配信型のパソコン講座)にはMacユーザー向けの内容も盛り込んだ。受講者はパソコン教室内のライブネット対応端末に座り、ヘッドセットを装着して講師の授業をリアルタイムで受けられる。またチャットを介して受講者から講師への質問も行える。ちなみにライブネット講座の受講料は1回(90分)あたり3150円で、入会金などない(2日前まで予約する必要がある)。
「現在ライブネット講座では、Macやホームページビルダー、弥生会計など、ほかにはあまり見られないプログラムが人気です。これまでアップル製品についてはiPodの新モデルなどが発売されたときに、単発イベントのように実店舗で講座を実施することもあったのですが、Macの販売が右肩上がりなのは間違いないので(専用講座を用意しました)。実際、ほかの講座もそうですが、パソコン教室があった日に関連する製品の売り上げは伸びますね」と木暮氏は語る。
「また、ライブネット講座は、北海道から沖縄までどこにいても受講できる点もメリットです。都市圏の人であれば近くにアップルストアがありますが、アップルストアがない地方都市の人は、(Macに関する)質問を聞く場所がないということもあるでしょう。郊外で多く展開しているヤマダ電機にとって、Macユーザーにラーニングプログラムを提供できるのは大きいと思います」(木暮氏)。
確かに、Macが好調と言ってもWindowsに比べればまだまだシェアは低い。初めてMacを使ってみようと思う人にとって、自分の回りにMacユーザーがいないというのはMacの購入をためらう理由の1つになりうる。アップルストアがない地域のMac初心者にとって、各都道府県にほぼ1店舗以上あるヤマダ電機で気軽に手助けしてくれる場所があるというのは心強いに違いない。
なお、7月のMac向けライブネット講座は、初心者向けの「一からはじめるMac」とiPhoto活用向けの「Macで写真を最大限に楽しもう」の2つのみ。今後は増えるのだろうか? 「アンケートの回答を見るとこれまでの講座はおおむね好評ですが、確かに講座が少なすぎるという声は多いです。これからいろいろなニーズを検討して、講座の内容を拡充していきたいと思っています」(木暮氏)。是非お願いします。
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