PC USER Pro

Microsoftはハイブリッドな戦略で古い殻を脱ぎ捨てる「PDC09」リポート(2/3 ページ)

» 2009年11月18日 19時00分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

Windows Azureの“簡単便利”な側面が個人ユーザーにメリット

ブログシステムとして広く利用されているオープンソース「WordPress」を開発したAutomatic創業者のマット・マレンウェッグ氏

 各種個人サイトからWebサービス、ショッピングサイトまで、さまざまなサイトを構築し、気軽に一般公開できるのもクラウドのメリットだ。オジー氏の講演では、欧米を中心に世界中で広く利用されているブログシステム「WordPress」の開発者であるマット・マレンウェッグ氏が登場し、Windows Azure上でWordPressを動作させるデモを紹介した。WordPressのプログラム本体はオープンソースで公開されており、WordPressの提供する無料ブログサービスだけでなく、ユーザー自身がWordPressのコードをWebサーバにインストールすることで自らのブログサイトを構築することも可能だ。

 WordPressの実行にはPHPが動作するWebサーバとデータベースが必要となるが、PDC09で紹介されたデモではプラットフォームにWindows Azure、データベースにSQL Azureを組み合わせることで、Windows Azure上でWordPressを動作させていた。マレンウェッグ氏によれば、Automaticでは新しいブログサイトとして「OddlySpecific.com」を運営しており、このサイトがWindows Azure上で動作しているという。オープンソースとその典型的な成功例といえるWordPressが、その対極にあるMicrosoftの新サービスにコミットしているというのも奇妙な構図だが、これもまた、Microsoftがクラウドへ注力していることを示す象徴的な姿だろう。

WordPress自体はオープンソースで公開されており、PHPの実行環境とデータベースがあればどの環境でも利用できる。PDC09の講演では、Windows Azure上にWordPressを置き、「OddlySpecific.com」というブログサイトを公開している事例を紹介した。OddlySpecificは奇妙な看板やサインの写真をひたすら紹介するサイトだ

最新鋭の技術を投入した次世代データセンターの姿とは

Windows Azureの正式公開にあたり、米国の2カ所ある既存のデータセンターに加え、2010年には世界の4カ所に新しいデータセンターを設置する

 Windows Azureとともに、PDC09での興味深いテーマの1つが次世代のデータセンターだ。データセンターというと、膨大な数のサーバラックが並んでいる、空調とセキュリティが完備された巨大なビルを考えるが、最新データセンターはそうした“旧態然”のイメージから大きく変身している。

 急増するデータ量への対応と、きめ細かいサービスの提供を目指し、GoogleやYahoo!といった企業は継続したデータセンターの拡充を迫られるが、Microsoftも例外ではない。特にWindows Azureのようなデータセンターをフル活用するクラウド製品が登場したことで、Microsoftはデータセンターの拡充に“急きょ”取り組むことになった。Windows Azureのサービス提供に向けてMicrosoftが発表したデータセンターの拡充計画では、北米のシカゴとサンアントニオの2カ所に存在するAzure向けの巨大データセンターに加えて、2010年には欧州でダブリンとアムステルダムの2カ所、アジアではシンガポールと香港の2カ所に同様のデータセンターを立ち上げる。全世界で従来の3倍の規模を用意することになる。

 こうした巨大データセンターを短期間に設営するのは非常に困難でコストもかかるが、その問題を解決すべくMicrosoftで用意したのが同社の第4世代データセンターシステムだ。Microsoftが示した第4世代データセンターの姿は、データセンターというよりもコンテナの集積所に近い。1つ1つの“コンテナ”内部にはサーバやストレージ、ネットワークシステムのほか、電源や空調が設置され、これだけで小さなデータセンターとして機能する。この「ITPAC」と呼ばれるコンテナをつなぎ合わせることで巨大なデータセンターを短期間で設置できるのが第4世代データセンターの特徴だ。

データセンターを構成するモジュール単体は「ITPAC」と呼ばれるコンテナ型システムだ。Microsoftのデータセンターシステムとしては第4世代にあたり、この1つのコンテナだけでも独立したデータセンターとして完結する。サーバからストレージ、電源、空調システムまですべてを備えている

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年05月11日 更新
  1. 新型「iPad Pro」がM3チップをスキップした理由 現地でM4チップ搭載モデルと「iPad Air」に触れて驚いたこと (2024年05月09日)
  2. 「M4チップ」と「第10世代iPad」こそがAppleスペシャルイベントの真のスターかもしれない (2024年05月10日)
  3. 個人が「Excel」や「Word」でCopilotを活用する方法は? (2024年05月08日)
  4. Minisforum、Intel N100を搭載したスティック型ミニPC「Minisforum S100」の国内販売を開始 (2024年05月10日)
  5. “NEXT GIGA”に向けた各社の取り組みやいかに?──日本最大の教育関連展示会「EDIX 東京」に出展していたPCメーカーのブースレポート (2024年05月09日)
  6. NECプラットフォームズ、Wi-Fi 6E対応のホーム無線LANルーター「Aterm WX5400T6」 (2024年05月09日)
  7. ASRock、容量約2Lの小型ボディーを採用したSocket AM5対応ミニベアボーンPCキット (2024年05月10日)
  8. SSDの“引っ越し”プラスαの価値がある! 税込み1万円前後のセンチュリー「M.2 NVMe SSDクローンBOX」を使ってみる【前編】 (2024年05月06日)
  9. Core Ultra 9を搭載した4型ディスプレイ&Webカメラ付きミニPC「AtomMan X7 Ti」がMinisforumから登場 (2024年05月08日)
  10. これは“iPad SE”なのか? 新型iPadを試して分かった「無印は基準機」という位置付けとシリーズの新たな幕開け (2022年10月24日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー