「VAIO L」の大きな特徴の1つが、非常に強力なデジタルテレビ&HDレコーダー機能だ。その中核となるテレビ番組の視聴や録画を行なうソフト「Giga Pocket Digital」は、レビュー前編で紹介したコンテンツ再生ソフト「Media Gallery」とともに、ソニーが注力する「推薦技術」を活用したアプリケーションの代表的存在といえる。
VAIO Lの2009年秋冬モデルに搭載された最新版のGiga Pocket Digital Ver.2.0は、デジタル放送の視聴と録画、番組表を利用した予約録画、録画した番組の管理、録画した番組の編集と外部メディアへの書き出しといったテレビ&レコーダーの基本的な機能に加えて、「録画した番組の解析」「ユーザーの傾向把握に基づく推薦」「自動予約録画」という3つの機能をウリとしている。
録画した番組の解析機能では、番組の中身をテキスト情報で伝える「メタデータ」がキモになる。デジタル放送に含まれる「番組表」の情報は、日常的に利用されるテレビ番組メタデータの代表的なものだ。VAIO Lでも放送波に含まれる番組表情報が活用されているものの、このデータは放送時点で消えてしまい後から参照できない。また、番組によって番組表の情報量が大きく異なり、情報量が少ないものも多く見られる。
こうした事情もあり、Giga Pocket Digitalでは、放送波に含まれる番組表情報よりもさらに詳細な情報を、インターネットを通じて外部の情報提供会社(エム・データ社)から入手し、録画したデータと突き合わせる作業を行う。
外部のテレビ番組メタデータを活用する高機能なレコーダーといえば、VAIOのほかにPTPの多チャンネル同時録画機器「SPIDER PRO」が知られているが、この製品と同じように、番組開始直後にどのCMが放映されたか、何時何分にどの芸能人が出演したか、という細かな情報までがVAIOに取り込まれ、その情報が「カタログビュー」機能により整理された形でユーザーに提示される。
ここでVAIOが特徴的なのは、特にCMの場合、テレビで放映される映像もさることながら、CM内で提示されている情報そのものが、ユーザーにとって有益だととらえていることだ。すなわち、商品の詳細情報、店舗の情報、キャンペーンサイト、商品の購入方法といった情報へすばやくアクセスできる。最近は当たり前になった「続きはWebで!」というCMの「続き」へとすぐに飛べるのは、テレビ機能付きPC(テレパソ)ならではの芸当であり、非常にまっとうな進化ともいえる。
こうしたメタデータとの突き合わせに加えて、Giga Pocket Digitalでは番組のデータそのものも解析する。映像解析技術によって、再生画面の下にサムネイルがフィルムロール風に表示されるため、見たいシーンをすばやく探し出して再生することが可能だ。
また、音声解析技術によって番組内で盛り上がっていると思われるシーンを判別することで、盛り上がりシーンだけを自動でピックアップして再生する「ダイジェスト再生」もこなす。ダイジェスト再生は5段階(短め/少し短め/おすすめ/少し長め/長め)から選択でき、「長め」の設定ではCMカットによる本編再生となる。
番組内の歓声の量は話題の盛り上がり具合を表すと想像されるので、音声レベルの大小を解析することで、1時間番組の中から盛り上がっている部分だけを5分のダイジェストで見たい、といった要望にも応えられるのだ(Giga Pocket Digitalの解析方法では、サッカーや野球の試合などで効果が得られやすい)。
膨大なテレビ番組から「おいしいところ」や「好きなところ」、あるいは「CM情報」だけを効率よく見ることができる、という点ではGiga Pocket Digitalほど優れたテレパソは現時点で存在しないといえる。
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