「dynabook RX3」に見る“東芝ノート四半世紀”の結論“理想”のその後(4/4 ページ)

» 2010年08月20日 21時45分 公開
[後藤治(撮影:矢野渉),ITmedia]
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バッテリー駆動時間の実測値は……

 最後にBBench 1.01(海人氏作)を利用してバッテリー駆動時間を計測した。画面輝度と電源モードの設定は、画面輝度最高/高パフォーマンスと、画面輝度中間(4)/ecoモードの2種類で、これにキーボードの入力(10秒おき)と無線LANによるWeb巡回(60秒おき)を組み合わせている。なお、評価機のうち下位2機種は量産試作機なので結果は参考程度にとどめてほしい。

 結果を見ると、標準で付属する10.8ボルト/6600mAhのバッテリーパック61AAでは、高パフォーマンスモードで5時間〜6時間、ecoモードなら6〜7時間の駆動時間を達成した。メーカー公称値はいずれも10時間以上となっているが、Web閲覧やテキスト入力程度の負荷であれば一日外出していても使える印象で、通常電圧版CPUを搭載していることも考慮すれば非常に優秀と言える。また、最上位のT9Mに付属する10.8ボルト/9300mAhのバッテリパック91AAでは、高パフォーマンスで8時間半以上、ecoモードなら11時間半以上のバッテリー駆動を実現した。

バッテリーベンチマークの結果。左が高パフォーマンス設定、右がeco設定

 試しに上記のBBench(高パフォーマンス設定)に加えて、720pの動画を連続再生してみたところ、それでも5時間は駆動した。この9セルバッテリー装着時は、キーボード面がやや前傾し重量も増してしまうが、バッテリーに関する心配は皆無になる。これだけバッテリーライフがあれば、携帯デバイスの緊急充電用に、前述した左側面のUSBポートを使うのも現実的だろう。

 なお、電源管理は「TOSHIBA ecoユーティリティ」で細かく設定できるので、しばらく充電環境に戻れないときなどは、あらかじめここでバッテリー優先のプランに変更しておくといい。また「東芝PCヘルスモニタ」を起動すると、バッテリー残量や消費電力だけでなく、ファンの回転数や各パーツの温度も分かりやすいアイコンで一覧できるので便利だ。なお、画面輝度は8段階で設定できるが、光源の多いオフィスならレベル6程度、やや暗めな環境ならレベル4程度でも十分に明るいと感じる。使用場所に応じて画面の明るさを設定すればバッテリー駆動時間をさらに延ばすこともできるだろう。

「TOSHIBA ecoユーティリティ」では現在の消費電力がグラフでリアルタイムに確認できる。ecoモードに入ると消費電力は10ワット以下まで抑えられる(画面=左)。消費電力だけでなく、各デバイスの温度やファンの回転数まで一覧できる「東芝PCヘルスモニタ」(画面=右)

高性能を納得できる価格で――バランスの取れたモバイルPC

 以上、フルモデルチェンジした「dynabook RX3」を見てきた。振り返ると、初代RXが登場した2007年6月は、その後の世界的な景気後退にあわせるように、「Netbook」が瞬く間に市場を席巻していった、ちょうど“前夜”にあたる。モバイルPCの常識を覆した安価なNetbookが持てはやされる一方、技術の粋を集めたRXは“マニア受け”はするがやはり高価だった。初代「dynabook SS RX1」が登場したときの価格は、廉価モデルでも22万円台半ば、64GバイトSSDを搭載する最上位モデルは約38万円だ。コストパフォーマンスを重視する多くの一般ユーザーにとって、RXを検討候補に挙げることさえ難しかっただろう。

 しかし、現在はネット端末としてスマートフォンやスレート型デバイスが台頭し、従来のNetbookを代替するようになってきた。このような状況の中、価格を抑えるために性能と機能を削り、Webサービスの利用に特化したNetbookは、かつての存在意義を失いつつあると見る向きもある。手のひらに収まるネット端末が普及した今、あえてノートPCを持ち運ぶ動機として、まず第一にパフォーマンスを求めるユーザーは少なくないはずだ。

 Netbookやその進化形であるCULVノートPCが注目を集めていたころ、dynabook RXはじっと“高性能モバイルノートPC”の一角を担い続けてきた。半透過型液晶の採用に見られるような、旧モデルが放つ先鋭的なイメージは世代を経て薄れたものの、今では下位モデルが16万円前後と手の届きやすい価格帯に落ち着き、より広く一般層へ訴求する準備ができている。高い性能と長時間バッテリーライフ、そして堅牢性を兼ね備えたdynabook RX3は、コストパフォーマンス面も含めて、今モバイルPCに求められる要素を高いバランスでまとめた1台だ。

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