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» 2010年08月30日 16時35分 公開

Hot Chips 22で示されたAMDの次世代CPU“ブル&ボブ”元麻布春男のWatchTower(2/3 ページ)

[元麻布春男,ITmedia]

Hyper-Threading Technologyは効率が悪い

AMDのサーバ向け製品のフォーカスはボリューム市場にある

 現在の“クラウド”を意識したサーバ市場では、エッジサーバからバックエンドサーバまで、さまざまな種類のサーバが提案されている。が、基本的な考えは、エッジに近ければ近いほど論理サーバ(仮想マシン)の数が重要で、バックエンドに近づけば近づくほど仮想マシンの性能が重要になる、というものだ。そして、エッジに近いサーバは台数規模が大きく、バックエンドは金額規模が大きい。可用性と信頼性はすべてのサーバに求められる特性だが、エッジでは可用性が重視され、バックエンドでは信頼性がより重視される。

 この図式で考えると、Bulldozerはバックエンドサーバ向きのCPUではない。エッジサーバより少し上、サーバとして最も市場規模が大きい2ソケットサーバにフォーカスした設計だ(ただし、仮想化を用いることでエッジサーバにも使える「圏内」ではある)。実際、現行のOpteron 6100番と同 4100番台において、AMDは事実上ハイエンドサーバ市場から撤退し、2ウェイサーバに比重を置く戦略に切り替えている。コア性能よりコア数を重視し、マルチコアを効率的に実現することを重視したBulldozerは、最高性能より最高効率を目指したCPUコアと思える。

 AMDは、Bulldozerでも、Hyper-Threading TechnologyのようなSMTを採用していない。その理由について筆者は、Hyper-Threading Technologyでは論理コア数の増加に比例して仮想マシンを増やせないのに対し、整数演算コアを1論理コアとみなすBulldozerの方式なら、整数演算コアの数に比例して仮想マシンを増やせるからではないか、逆にいえば、ホスト可能な仮想マシンをリニアに増やしていくための最小単位が整数演算コアだったのではないかと考えている。

 必要なトランジスタ数は少ないとはいえ、SMTの実装にもトランジスタが必要なことに変わりはない。SMTによる性能向上でもホスト可能な仮想マシンの数は増やせるが、上乗せは大きくない。ならば、その分も節約して、コア数が増えたときにその差分の和で物理コア(整数演算コア)を実装するのが効率的と考えたのではなかろうか。コア数増加の価値と仮想マシンの増加がイコールとすると、SMTではむしろ効率が悪い、という発想だ。

 以上の理由から、筆者は、Bulldozerが、そのメインターゲットであるボリュームサーバ市場向けに徹底してフォーカスされたマイクロアーキテクチャではないか、と思っている。問題は、これをクライアントPC向けに転用すると、どのようなメリットがあるか、だ。モジュール化されたBulldozerは、マルチコア化が容易だが、一般にクライアントPCでは、マルチコアの恩恵を受けられるアプリケーションがまだ多くない。現在もシングルスレッド性能を重視するユーザーは少なくない。

クライアントPC向けのZambeziは、マルチコア化に適したBulldozerコアベースであるにもかかわらず、クアッドコアモデルが用意される

 にもかかわらず、Bulldozerにおけるコアあたりの性能向上は従来モデルから12.5%程度とみられる。現役のGreyhound+コアは、登場から4年が経過していることもあり、ライバルであるインテルの“Westmere”コアにコアあたりの性能で差をつけられている。コアあたりの性能を比較した公式の資料はないが、AMDがPhoenom II X6で発表したベンチマークテスト結果の比較などから考えて、Core i7-980X(“Gulftown”コア)の1コアと同一クロックで比較した場合、Phoenm II X6のコア性能は60〜65%程度だろう。コアを増やすことによる効果が限られるクライアンドPC分野では、12.5%の性能向上だけでインテルに対抗するのは難しい。コア数を効率的に増やせるアーキテクチャは、今のところクライアントPCにはあまり向かない。

 おそらく、これがZambeziにクアッドコアモデルが残される理由の1つだろう。コア数を減らすことで、動作周波数をできる限り上げる。そして、6コアのPhoenom II X6から導入されたTurbo Coreテクノロジーを強化することで、クライアントPCで求められるシングルスレッド性能の両立を試みるのではないだろうか。この世代のBulldozerは純粋なCPUとなるが、将来的にはAPUのベースにも使われることになるだろう。その場合には、効率的なコアによる恩恵もあるハズだ。

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