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» 2010年08月30日 16時35分 公開

Hot Chips 22で示されたAMDの次世代CPU“ブル&ボブ”元麻布春男のWatchTower(3/3 ページ)

[元麻布春男,ITmedia]
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Ontarioはいつになったら動くのか

Atomと異なりOut-of-order実行をサポートしたBobcat

 Bobcatの情報も、2009年秋のFinancial Analyst Day 09で公開された情報をベースに、若干の追加情報があった印象だ。コアの消費電力を1ワット以下にすることが可能で、SSE1〜3とSSSE3のサポート、仮想化のサポートといった情報は2009年秋の時点ですでに公開されていた。Hot Chips 22で新しく追加された情報の1つは、Bobcatが「Out-of-order」実行をサポートしていることで、In order実行のAtomと対照をなしている(このクラスではVIAのNanoもOut-of-orderをサポートしている)。ただし、SSEのサポートについては、Atomと歩調を合わせた格好だ。

 内部の特徴は、整数演算パイプラインが2本とロード、ストアが各1基、そして浮動小数点演算ユニットとしてA-PipeとM-Pipeを持つ。AはADD、MはMULTIPLYの頭文字と考えるのが普通だが、今のところ資料にはそれぞれの役割りが明記されていない。少なくとも、2本のパイプラインはシンメトリではない(扱える命令が異なる)と思って間違いなさそうだ。これも、効率を優先した結果と思われる。

 Bobcatコアの性能については、現役世代のメインストリームCPUで出すパフォーマンスの90%を半分以下のダイサイズで実現した、とされている。資料でいうところの「メインストリームパフォーマンス」の定義があいまい(というか不明)なので、その90%がどれくらいの性能なのかは分からない。インテルがAtomにおいて組み込み市場を重視しており、性能向上より消費電力の削減を重視しているのに対し、AMDはBobcatのターゲットをもっとPCに近いNetbookやシンクライアントに置いているように見える。そこから考えると、現行のAtomより高性能を狙っていることはまず間違いないだろうが、詳細はHot Chips 22の資料でも不明だ。

Bobcatを用いた最初の製品となるOntarioはTSMCのバルク40ナノメートルプロセスルールで量産される

 Bobcatコアが最初に製品として提供されるのは、AMD初のAPUとなる「Ontario」だ。2個のBobcatコアにDirectX 11対応のグラフィックス機能を備えると予想されるOntarioは、GLOBALFOUNDRIESではなく台湾TSMCの40ナノメートルバルクCMOSプロセスで量産される。これまでTSMCにはGPUの量産を委託していたわけだが、OntarioがTSMCに量産を委託する最初のCPU機能を備えた製品ということになる。ノード幅は40ナノメートルと小さいものの、High-k/Metal-gate技術が間に合っていないことを考えると、製造プロセスの点でもインテルにどこまで対抗できるのかは未知数だ。

 それでも、バルクCMOSによる製造プロセスの立ち上がりがいつになるのか、イマイチ読み切れないGLOBALFOUNDRIESではなく、TSMCに委託することで、公の場で繰り返し紹介してきた出荷時期(2011年前半)を守れる公算は高い。Bulldozerより先にBobcatが出てくるとみる予測も多い。

 Hot Chips 22で示された資料では、DirectX 11相当のグラフィックス機能が「SIMD Engine Array」と書かれている。AMDは、CPUとプログラマブルGPUを組み合わせたアーキテクチャと呼んでいるが、CPUでグラフィックス処理の一部を行うことになるのだろう。まさにCPUとGPUの融合(Fusion)というわけだ。単に同じパッケージの中にCPUとGPUのダイを封入したものでも、ダイ上にRADEON HD 4xxx相当のシリコンが集積されたSoCでもない点に、Ontarioの先進性がある。最終的な性能は、製造プロセスや、そこからくる動作クロックにも影響されるので何ともいえないところだが、そのビジョンを高く評価したい。

 心配があるとしたら、やはりドライバがどれくらい安定しているか、ということだろう。すでにリリースまで1年を切っているだが、今のところ動くOntarioの姿は公開されていない。シリコンはもちろん、ドライバも含めて、まともに動くドライバが最初から存在することが、Ontarioが成功する最低条件となるだろう。

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