2011年までAMDは何を訴求するのか

» 2010年01月20日 17時00分 公開
[登丸しのぶ/Shinobu T. Taylor,ITmedia]

 2009年、AMDはユーザーのPCを使う目的に合わせてエディションを分ける新たなブランド戦略「VISION」を発表した(VISIONブランドについてはこちらの「プロセッサについて語るのはやめよう」から始まるAMDの“VISION”ブランドも参照のこと)。これまでの“技術”に焦点を当てたブランド戦略とはまったく異なるVISIONブランドの考え方や狙いを、米AMD プロダクトマーケティングマネージャーのジェフ・ロウ氏と、同 CSGプロダクトマーケティング PCゲーミングストラテジストのバレン・ベリー氏に聞いた。

少なくとも北米と欧米のユーザーはスペックを気にしない

米AMD プロダクトマーケティングマネージャーのジェフ・ロウ氏

──VISIONブランドでは、ユーザーの使用目的に応じてエディションを分類しているが、そのために、各エディションのハードウェア条件が分かりづらくなっている。ハードウェア条件を基準に製品を選ぶユーザーにとって、これはマイナスにならないか。

ロウ氏 ユーザーに対する調査の結果、少なくとも欧州や北米のPCユーザーは、ハードウェア条件ではなく、PCを使って何ができるかということを基準に製品を選んでいることが分かった。スペックについてあれこれ語るよりも、例えば、このPCならAdobe Photoshopを使って画像編集ができるとシンプルにアピールするほうがユーザーには分かりやすい。また、北米の家電量販店では、販売員がスペシャリストでないことが多いため、彼らが製品を販売する場合でも分かりやすいVISIONのブランディングは有効と考えている。

 ただ、日本のようにスペックに高い関心のある市場では、スペックも詳細に訴求していく。

──VISIONブランドにおいて、PCのシステム構成に高い関心のあるユーザーにはどのように対処していくのか。

ベリー氏 北米では、ちょうど、Newegg、TigerDirect、Fry'sなどの販売店を通じて、VISIONのコンポーネントプログラムをスタートしたところだ。このプログラムは、カナダやドイツ、オーストラリアでも開始している。例えば、特定のCPUとGPU(を搭載したグラフィックスカード)、(特定のチップセットを搭載した)マザーボードを購入すれば、VISION Premiumに相当するPCが自作できます、といった具合に、ユーザーがPCを自作するときのPCパーツ選択をサポートする。

ワールドワイドで“CongoノートPC”は登場している

米AMD CSGプロダクトマーケティング PCゲーミングストラテジストのバレン・ベリー氏

──日本市場において、Congoプラットフォームを採用するノートPCのリリースがヒューレット・パッカードとレノボに限られている理由は。

ベリー氏 Congoプラットフォームを採用した製品のリリースがその2社に限られているというわけではない。ワールドワイドでいえば、Acerや東芝も採用している。ただ、メーカーそれぞれの戦略で、日本市場における製品投入のタイミングが異なっているだけだ。Acerの製品は北米ですでに店頭で購入できる。

──ちなみに、Congoという“名称”が最近のロードマップからなくなっているが、その理由は?

ベリー氏 YukonやCongoなど、AMDでは川の名前をプラットフォームに採用している。Congoに関しては同地域の政情不安があったため、イメージの問題で使用するのを止めた。現在では、「2GUT」(2nd Generation Ultrathin)と呼んでいる。ただ、プラットフォームとしてはCongoとまったく同じものだ。

2008年のAnalyst Dayで紹介されたノートPCプラットフォームのロードマップ(写真=左)で示された“Congo”は、2009年のAnalyst Dayで紹介されたロードマップで「2nd Gen Ultrathin」となっていた(写真=右)

2011年の新世代アーキテクチャ登場までAMDは何を訴えるのか

──AMDは2010年において、コンシューマー向けのCPUでもGPUでも新しいアーキテクチャを投入する予定がない。このような状況で、エンドユーザーに対してどのように製品のプロモーションをしていくのか。

ロウ氏 アーキテクチャをベースとした技術の詳細で製品を差別化するプロモーションは古い手法だ。もちろん、PCメーカーやOEMメーカーと話をするときは技術やスペックの詳細に言及しなければならないが、エンドユーザーの多くは細かいスペックを気にしていない。このような状況を受けて、ユーザーの使用目的をベースとしたVISIONブランドを導入し、製品のロードマップもこれに合わせて作っていこうとしている。

ベリー氏 ただ、ハイエンド志向のユーザーは例外だろう。そのため、エンスージアスト向けのブランドである「VISION Black」では、技術的な優位性を訴求していく。例えば、このレンジでは、2010年に6コアモデル(開発コード名「Thuban」)を投入する予定だ。自分でシステムの環境設定をコントロールできるエースージアストユーザーには、このようなアピールが有効だろう。しかし、それ以外の、メインストリームユーザーからは採用された技術やスペックの詳細ではなく、ユーザーエクスペリエンスを強調していく。

──テクノロジーの進化によって、例えば「VISION ULTIMATE」に分類された製品でも2年後、3年後には“Ultimate”なユーザー体験を提供できなくなるかもしれない。このような場合にはブランドのロゴを貼り替えるのか。

ベリー氏 VISIONブランドでは、各エディションで何ができるかという特定の用途を限定せず、世代に合わせて柔軟に対応できるように普遍的な概念を用いている。VISIONの考えは車を例にすると分かりやすい。例えば、BMWのM3は毎年、技術革新とモデルチェンジを繰り返し、1990年のM3と現在のM3ではまったく異なる機能を備えているが、ユーザーはいつの時代にもM3ならではのユーザーエクスペリエンスを期待できる。

AMDがVISIONブランドで提案する「See」「Share」「Create」それぞれの“できること”(写真=左)。VISIONブランドで用意される3段階のレベルで要求される“できること”(写真=右)。ベリー氏は普遍的概念というが、実際の提案では、エンドユーザーが理解しやすいように、細かく定義されているようにも思える

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