2011年は28ナノ世代に注力、そして20ナノ世代へ――GLOBALFOUNDRIESの事業戦略:元麻布春男のWatchTower(2/2 ページ)

» 2011年01月31日 16時45分 公開
[元麻布春男,ITmedia]
前のページへ 1|2       

製造工程はゲートファーストからゲートラストへ

 さて、この20ナノメートルプロセスルールHKMGバルクで注目されるのは、製造工程を32ナノメートル/28ナノメートルプロセスルールHKMGのゲートファースト方式から、インテルと同じゲートラスト方式に変更することだ。半導体の製造では、回路パターン描画(リソグラフィ)、エッチング(不要な酸化膜の除去)、イオン注入や高温拡散によるトランジスタの形成といったサイクルを繰り返す。HKMGで使われる新しい金属ゲート素材などは、半導体製造では避けられない高温に対して不安定であるため、製造過程において劣化しやすい。

ゲートファーストを採用した28ナノメートルプロセスルールHKMGバルクは、ダイ面積という点ではゲートラストより10〜20%有利

 最初にゲート電極を生成するゲートファーストは、従来と同じ回路設計技法を用いることが可能で、回路設計における制約が少ないため、チップ面積の点でも有利(GLOBALFOUNDRIESは28ナノメートルプロセスルールで10〜20%有利であるとする)である半面、この温度の影響を受けやすい。

 一方、インテルが採用するゲートラストは、回路設計の制約を受けて従来と異なる回路設計技法が必要になる、製造工程自身も複雑になる(最初、ダミーのゲートを生成し、高温処理が終わった後にダミーを取り除き、ゲート電極を生成する)という欠点はあるものの、温度の影響を受けにくいため、生産性に優れ、ゆがみシリコンの技術も応用しやすい(トランジスタ性能の点で有利)と言われる。

 ゲートファーストとゲートラストは、それぞれ一長一短があるわけだが、ゲートラストを採用するインテルが45ナノメートルプロセスルールからHKMG技術を導入して先行できたこと、ゲートファーストを推進するIBM、GLOBALFOUNDRIES、Samsungが現時点でHKMGによる量産製品を出荷できず、次世代でゲートラストに転換することを考え合わせると、ゲートファースト陣営は若干遠回りをしたような印象が否めない。ファウンダリ大手であるTSMCやUMCも、HKMGに関してはゲートラスト工程の採用を表明している。

20ナノ世代で主力となる新ファブの建設

ニューヨーク州マルタに建設中のファブ8。EUV露光の早期導入を目指す

 この20ナノメートルプロセスルールHKMGバルクが量産へ移行するのは2013年(同社は2012年後半にリスクプロダクションを開始したいとしている)だと考えられる。

 その2013年に稼働開始を予定しているのがニューヨーク州マルタに建設中のファブ8だ。まだ竣工(しゅんこう)していない同ファブだが、新施設の追加によりクリーンルーム面積を拡張、最大でウェハ6万枚/月の規模に増強したという。旧AMDの2カ所のファブ(ファブ30およびファブ36)を統合したファブ1の量産規模が最大8万枚/月だから、単一の工場としては相当な大規模となる。

 このファブ8は、32ナノメートル/28ナノメートルプロセスルール世代でスタートするものの、主力は20ナノメートルプロセスルールになるとされる。そして、この動きと平行して2012年後半から少しずつEUV露光装置の導入を開始し、2014〜2015年にEUVを用いた量産体制を確立したいとしている。つまり15ナノメートルプロセスルールからのEUV導入を目指すということである。

 残るシンガポールのファブ7には、300ミリウェハと200ミリウェハ両方のラインが存在する。現在GLOBALFOUNDRIESが新たな試みとして取り組んでいるのは、200ミリウェハラインを用いたMEMSチップの量産である。MEMSとは、Microelectromechanical Systemsの略で、機械的な要素やセンサーなどを半導体プロセス技術によってチップ上に作り込むもので、加速度計やジャイロスコープといったセンサー類、あるいは無線アンテナをチップ上に作り込んだ製品などが知られている。

 メモリやプロセッサの世界では、200ミリウェハは旧式化しつつあるが、MEMSの世界では今でもその70%が150ミリウェハにより作られているとされる。スマートフォンなど、センサー類を搭載したプラットフォームの出荷が増えていることもあり、ファブ7をMEMSチップの量産拠点にしたい、というのがGLOBALFOUNDRIESの狙いだ。

アブダビ化が進んでいくGLOBALFOUNDRIES

 こうしたファブ関連の投資に加え、GLOBALFOUNDRIESでは同社に巨額の投資を行い実質的なオーナーとなったアブダビ政府と協力し、アブダビ国際空港隣接地に先端テクノロジクラスタの創設を行う。短期的には3カ所にある同社のファブと知識および技術の共有を行い、将来的には重要な基本技術と実製造技術の確立を目指す。

 これを実現するために、アブダビのマスダー科学技術工科大学が米MITのマイクロエレクトロニクス修士課程と提携したほか、優秀なアラブ人学生を対象にした国際奨学金制度の創設を行ったという。ファブ8の次の工場はアブダビに誘致したいという強い意志が伝わってくる。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月24日 更新
  1. “置き場所に困る”大容量ポタ電の壁を打破! 冷蔵庫を3日動かすEcoFlow「DELTA Gen4」シリーズが日本上陸 (2026年10月23日)
  2. 若者向けのカラフルな新「Dell 14S」が日本上陸 11月1日まで4.5万円引きの14万9800円から (2026年10月22日)
  3. 折りたたみ型から薄型まで! スマホやタブレットで“本気”の文字入力に使える持ち運び用キーボードを選ぶコツ (2026年10月23日)
  4. FCCLが「FMV Keyboard X」の一般販売を開始 ハイスペックマウス「FMV Mouse X」も同時発売 (2026年10月22日)
  5. 「Galaxy Watch9」を1週間使って分かったこと Pixel Watchと比べた使い勝手は? (2026年10月23日)
  6. 「iPhone Duo」を1週間使って分かった、全部盛りではない“上質さ” 心地いい開閉ヒンジの内部を見るために“非破壊検査”してみた (2026年10月21日)
  7. 天空が12月25日に発売する「GPD WIN Max 3」国内正規版 実機に触れてきた (2026年10月23日)
  8. 約22万円の新型「Mac mini」で初めてのローカルAI体験 ストレージの価格高騰対策にピッタリかも (2026年10月20日)
  9. スマホは「バッグの中」から「外」へ AULUMUのスリングバッグ2種で移動時のプチストレスを解消した (2026年10月22日)
  10. PFUから33万円キーボード「HHKB Professional Elite」登場! 英語配列のみで有線特化の“原点回帰” 全世界300台限定 (2026年10月22日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー