「このままではエクサスケール実現にフーバーダムが必要」──NVIDIAが語る“GPUの必然性”GTC Asia 2011(4/4 ページ)

» 2011年12月16日 17時51分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
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CPUとGPUの進化がエクサスケールを早期に実現する

 Huang氏は、DRAMを発明したロバート・デナード氏の「電界とパフォーマンスに関する特性の法則」を持ち出し、1988年のクレイ Y-MP、1998年のクレイ T3E、そして、2008年の最新版Jaguarに連結したクレイ XT5と、これまでに登場した象徴的なスーパーコンピュータは、すべて10年ごとに1000倍のペースでパフォーマンス増強を続けていることを紹介するとともに、この進化がすでに物理の限界に到達していることを示す。

 順当にいけば、2019年にはエクサスケールの大台に到達できるはずのロードマップだが、実際には年率成長が従来の1.5倍から1.19倍程度へ落ち込み、結果としてエクサスケールの達成は2035年までかかる可能性が高いとファン氏は予測する。この傾向はすでに、CPUのみを搭載したスーパーコンピュータである「Titan」(これもクレイ製)にも現れており、今後、成長カーブが鈍化するという。

 こうした理由として、CPUは命令を実行する以外の分岐予測や各種スケジューリングなどのオーバーヘッドが大きく、実行効率が低いことを挙げている。一方で、GPUはシンプルな命令を実行する仕組みなので、CPUのように複雑で大きなコアを並べるのではなく、シンプルな構造で小さいコアを大量に並べると効率が高くなるというのがNVIDIAの主張だ。

CPUのみで構成するスーパーコンピュータに依存した場合、物理的な限界からエクサスケール実現までのロードマップが当初の予想から遅れるというのがファン氏の考えだ。ファン氏は、DRAMを発明したロバート・デナード氏の「電界とパフォーマンス特性についての法則」を持ち出し(写真=左)、その性能上昇カーブはすでに限界に到達しているとする(写真=中央)。そのため、現在の上昇カーブであれば2019年までに達成できるロードマップが、最終的に2035年までかかると予測する(写真=右)

 だが、その一方で、ファン氏は、GPUだけでは処理が難しい内容もあり、両者の長所を組み合わせることがエクサスケールへの近道ともいう。こうして、CPUとGPUのハイブリッドで構成されたヘテロジニアスなスーパーコンピュータにより、処理能力の向上カーブを維持でき、当初、CPUのみのスーパーコンピュータでは2035年までかかるとされていたエクサスケールが、2019年には到達可能になるとファン氏はいう。

 さらに、GPUを交えた進化の速さを紹介する一例として、2004年時点にスーパーコンピュータで1フレームあたり時間をかけて制作していたCGムービーが、2019年には家庭向けゲームコンソールで普通に実現できるようになると述べ、その例として、最新技術を駆使した「Assassin's Creed」のデモムービーを紹介した。

CPUコアそのものは高速だが、複雑で命令スケジューリングのために実行そのものにかかるパワーの50倍以上を消費しているという。そこでGPUのようにオーバーヘッドの少ない小さなコアを集めて命令実行に最適化することで効率を向上させる。こうしたCPUとGPUの長所と短所を組み合わせて、より高速なシステムを実現しようというのがCPU+GPUコンピューティングだ

こうしたヘテロジニアスなアプローチをとることで、従来型のCPUだけで演算するシステムではエクサスケールコンピュータの実現に2035年までかかっていたロードマップが、2019年までに実現できるようになるという(写真=左)。スーパーコンピュータというとコンシューマーユーザーには縁遠いと思うかもしれない。しかし、2004年時点のスーパーコンピュータで1フレームあたり数時間かけて制作していたCGムービーが、2019年には家庭向けゲームコンソールで普通に実現できるレベルとなる。基調講演では、そのことを示唆する例として、Assassin's Creedのデモムービーを紹介した(写真=右)

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