大解説! Ivy Bridgeの新技術と対応インタフェースの謎第3世代Core iのアレコレをギリギリまで(1/3 ページ)

» 2012年04月27日 11時30分 公開
[本間文,ITmedia]

やっぱり、3Dトライゲートは外せません

 インテルは、“Ivy Bridge”の開発コード名で知られる「第3世代 Coreプロセッサー・ファミリー」を正式発表し、4月29日から販売を開始することを明らかにした。インテルのCPU開発では、プロセスルールの移行とCPUアーキテクチャの移行を交互に繰り返す“Tick-Tock”(チック・タック)モデルを採用しているが、その中でIvy Bridgeは、従来のSandy Bridgeアーキテクチャを踏襲しつつ最新の22ナノメートルプロセスルールに微細化する「Tick」に位置づけられるCPUだ。しかし、「3Dトライゲートトランジスタ技術」「機能と性能が大幅に向上した統合グラフィックスコアの採用」といった新しい技術を導入することで、これまでのTick-Tockモデルにはない大幅な変更が加えたIvy Bridgeを、インテルは「Tick+」と訴求する。

インテルは、Ivy Bridgeを「Tick+」と位置づける。

 Ivy Bridgeで採用された3Dトライゲートトランジスタ技術の採用により、Ivy Bridgeでは以下に挙げる性能向上を実現したとインテルは説明している。

  • リーク電流の低減
  • 省電力化
  • 高クロック動作/オーバークロック性能の向上
  • トランジスタ集積度の向上


 Ivy Bridgeは14億個のトランジスタを160平方ミリメートルのダイに集積し、最上位モデルとなる「Core i7-3770K」(3.5GHz、Turbo Boost Technology有効時で最大3.9GHz)でも、そのTDP(Thermal Design Power)は77ワットにとどまる。Sandy Bridge世代で同じ動作クロックの「Core i7-2700K」のTDP95ワットから大幅な省電力化を実現したことになる。

Ivy Bridgeのダイ。3分の1近くのエリアがグラフィックスコアで占められている(写真=左)。Sandy Brigeのダイは、Ivy Bridgeに比べてグラフィックスコアが占める割合が少ない(写真=右)

 インテルが公開したIvy Bridgeのダイをみると、強化したグラフィックスコアが約3分の1のエリアを占めている。Ivy Bridgeでは、CPUアーキテクチャに大きな変更はなく、LLC(Last Level Cache、3次キャッシュメモリ)容量も同じことから、214平方ミリメートルに9億9500万トランジスタを集積したSandy Bridgeと比べると、約4億トランジスタがグラフィックスコアの強化に割かれたことになる。

 GPUの強化ポイントとしては、DirectX 11対応に伴って、ハードウェアテッセレーションユニットを統合したほか、グラフィックスコアとなるEU(Execution Unit)数も、Sandy Bridgeで統合していたIntel HD Graphics 3000の12基から、Core i7-3700Kに統合しているIntel HD Graphics 4000で16基に増えた。

 一方、グラフィックスコアの動作クロックは従来より低めに設定されており、Turbo Boost Technologyが有効な状態でグラフィックスコアの動作クロックを引き上げるDynamic Frequencyにおける最大動作クロックも低めに抑えている。これは、省電力を優先したためと考えることもできる。また、Ivy Bridgeに統合したグラフィックスコアは、OpenGL 3.1とOpenCL 1.1に対応し、GPUを用いた汎用コンピューティング処理に対応できるようになったことも、大きな変更点だ。(記事掲載当初、対応規格の記述に誤りがありました。おわびして訂正いたします)

Ivy Bridgeのグラフィックス機能

 ビデオ支援機能も強化しており、Quick Sync VideoはVersion 2.0に進化した。トランスコード処理も1.5〜2倍の性能向上を果たすとインテルは説明する。ただし、Quick Sync Video 2.0の性能をフルに生かすためには、Intel Media SDK 3.0を使ってアプリケーションを最適化する必要があるとしており、アプリケーションによっては、インテルが主張する性能向上を果たせない場合もある。

強化されたビデオ支援機能。4Kビデオ(4096×2304ドット)のビデオフォーマットにも対応する(写真=左)。Quick Sync Video 2.0に対応したアプリケーションでは、Sandy Bridge世代に比べて最大2倍のトランスコード処理性能を実現できるとインテルは説明する(写真=中央)。WiDiもVersion 3.0に進化し、ステレオ立体視コンテンツの再生や24fpsによるBlu-rayコンテンツの再生なども可能になる(写真=右)

統合グラフィックスコア主要スペック
統合グラフィックスコア Intel HD Graphics 4000 Intel HD Graphics 2500 Intel HD Graphics 3000 Intel HD Graphics 2000
CPUコア Ivy Bridge Ivy Bridge Sandy Bridge Sandy Bridge
Execution Units 16 6 12 6
ベースクロック 650MHz 650MHz 850MHz 850MHz
最大動作クロック(Dynamic Frequency) 1150MHz 1150MHz 1350MHz 1350MHz
DirectX DX11 DX11 DX10 DX10
ShaderModel SM 5.0 SM 5.0 SM 4.1 SM 4.1
OpenGL OpenGL 3.1 OpenGL 3.1 OpenGL 3.0 OpenGL 3.0
OpenCL 1.1 (CPU + GPU) 1.1 (CPU + GPU) 1.1 (CPのみ) 1.1 (CPのみ)
ディスプレイ出力 3※1 3※1 2 2
最大解像度 2560×1600ドット 2560×1600ドット 2560×1600ドット 2560×1600ドット
Display Port 1.1a 1.1a 1.1a 1.1a
HDMI 1.4 1.4 1.4 1.4
Quick Sync Video 2.0 2.0 1.0 1.0
Intel WiDi 3.0 3.0 2.1 2.1

※1 : Intel 7シリーズチップセットとの組み合わせでのみ有効
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