次に2008年にナナオが調査した「画面の明るさと疲れ目の関係」について改めて評価を行った。2008年の調査結果では、明るすぎる輝度が疲れ目の一因とされ、疲れ目軽減のための施策として、ナナオは照度センサーによる自動輝度調整機能「Auto EcoView」を液晶ディスプレイに組み込んでいる。
実際にこのAuto EcoView機能が疲れ目抑制に効果があるのか、北里大学医療衛生学部が10人(10眼)で試験したところ、測定機器による屈折値と調節力不変では有意差がなかった一方、瞳孔系変化やCFF(フリッカー値)では差が見られた。紙から画面に視線を動かした場合、Auto EcoView機能がオフの状態では縮瞳(瞳が小さくなること)しやすく、CFF値が低下する傾向にあった。また、眼球収差については、有意差はないものの、Auto EcoView機能がオフの状態で収差の増加(眼球のゆがみが増加)が発生した。
Auto EcoView機能がオフの状態では、紙からディスプレイに視線を動かす際の明暗差が大きいため、瞳孔や調整変化が大きくなり、これが疲労を導いている可能性がある。
被験者のアンケート結果を見ても、Auto EcoViewがオンの場合は目の疲れを感じにくく、自覚的疲労度および見やすさでも優位性が得られた。つまり、自覚的および他覚的所見ともにAuto EcoView機能の有効性を示す結果が得られたという。この調査結果は、2012年6月開催の日本人間工学会第53回大会にて論文を発表済みだ。
森脇氏は、周辺環境が暗い場合はディスプレイ輝度も低く設定することで、目の負担が軽減できる可能性があり、それを自動で行うAuto EcoView機能はユーザーの利便性も効果も高いと語る。
最後に、ディスプレイから発せられて目や人体に与える影響が懸念されている「ブルーライト」についての調査結果も説明された。
ブルーライトとは、可視光(400ナノメートルから800ナノメートル)の中でも波長が短い光(400ナノメートルから500ナノメートル前後の光)を差す。紫外線により近い波長域のため、単位あたりのエネルギーが強く、目や人体に対する影響が考えられることから、最近ではブルーライトをカットするメガネや画面保護フィルムが多数販売されている。
一般にブルーライトはLEDバックライトが強く発するといわれることが多いが、ナナオが従来型のCCFLバックライトとLEDバックライトの液晶ディスプレイにおいて、光のスペクトル特性を調査したところ、ピークはLEDのほうが大きいが、ブルーライト全体としては大差なしとの結果だった。森脇氏はCCFLでもLEDでも製品によってバックライトから出るブルーライトは変わるので、LEDだからブルーライトが強いとはいえないと語る。
ナナオは液晶ディスプレイからブルーライトを減らす方法として、色温度と輝度を下げる設定を紹介した。実際にスペクトル特性を測定したところ、色温度を初期値(6500K〜7000K)から5000Kに下げることでブルーライトが約20%減少(ピーク波長)、輝度を高い状態から適切な状態(約120カンデラ/平方メートル)にセットしたうえで色温度を5000Kに調整すると、ブルーライトは約1/6まで減少したとする。
現状では多くの液晶ディスプレイが輝度の手動調整機能を備えているが、色温度の調整ができないものも少なくない。これに対して、ナナオの液晶ディスプレイはAuto EcoViewによる自動輝度調整機能でユーザーが操作しなくても最適な明るさを実現し、色温度はケルビン値で合わせられるほか、Paperモードを選択することで輝度と色温度が一気に下がってブルーライトを少ない状態にできる、と森脇氏はそのメリットを強調した。
森脇氏は今回のセミナーのまとめとして、LEDバックライトのちらつき、周辺光と画面輝度の差異、ブルーライトなど、液晶ディスプレイの利用による目の疲れには複合要因があり、これらを組み合わせて対策することが重要と述べた。そして、8月7日に発表したナナオの新型液晶ディスプレイ5機種では、これらの対策を総合的に行っており、疲れ目を抑制する効果が高いと、新製品をアピールした。
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