OEMで実績を積み、いよいよ表舞台へ――SSDのリテール販売に注力するSamsungSSDの最新トレンドを追う(1/2 ページ)

» 2012年10月01日 00時00分 公開
[鈴木雅暢,ITmedia]

インタフェースの主導権はPCI Expressへ

次世代SSDについて語ったKeunSoo Jo氏

 既報の通り、Samsung Electronicsは韓国ソウルにてSSDの新製品「Samsung SSD 840 PRO」と「Samsung SSD 840」を発表した。ここでは製品発表に先立ち、次世代SSDの展望が語られたセッション(Next Generation SSD)の様子をお届けする。

 登壇したKeunSoo Jo氏は、SSDの歩みを振り返ったうえで、現在のSSD技術はすでにSerial ATA 6Gbpsのインタフェース速度がボトルネックとなるレベルに達しており、インタフェースの性能向上が急務だと指摘。近い将来にPCI Expressへと移行するための準備段階に入ってきていることを紹介しつつ、Samsungも来年にはPCI ExpressインタフェースのSSD製品を紹介できると予告した。

 また、NANDフラッシュの集積度が限界に近づいており、集積度が高まるにつれ、技術のハードルも上がることから、耐久性(書き換え可能回数)が低下していることに言及。コントローラやソフトウェア技術の洗練も含めて業界全体で取り組んでいく必要性があるとしたうえで、NANDフラッシュメモリと管理を行うコントローラをともに内製するSamsungの垂直統合モデルのアドバンテージを強調した。さらに、3DNAND技術やPRAM、MeRAMといった次世代メモリの研究を進めていることも紹介した。

この30年でCPUが2万倍の高速化を果たしたのに対し、HDDはわずかに12倍(写真=左)。今後ますます広がるCPUとストレージとの動作速度のギャップ、それを埋めるソリューションとして浮上してきたのが、SSDである(写真=右)

SSDのHDDに対する優位性(写真=左)。ランダムアクセスは100倍に、シーケンシャルアクセスでも数倍の性能をもち、今後さらに向上する余地がある。SamsungのSSD製品のマイルストーン(写真=右)。2006年3月のUMPCとは、ソニーの「VAIO Type U<ゼロスピンドル>モデル」である。近年モバイルPCの先駆けとなった歴史的モデルだが、これに搭載されていたSSDがSamsung製であった

NANDフラッシュのインタフェースの歩み(写真=左)。40MbpsのSDR転送からはじまり、現時点で同期DDR転送の400Mbpsまで高速化。並列アクセスを使えば、Serial ATA 6Gbps(データ転送600Mバイト/秒)はいつでも超えられる段階に来た。Serial ATA 6Gbpsのままではインタフェース速度がボトルネックとなり、SSDの性能が伸びないと指摘(写真=右)

Serial ATA 6Gbpsの次のインタフェースを担うのはPCI Express(写真=左)。PCI Express 3.0は1レーンでデータ転送速度1Gバイト/秒と高速で、x2、x4、x8とマルチレーンにすることでスケーラブルに転送速度を拡張できる点を大きなメリットとして挙げる。PCI Expressへ段階的に移行する準備を進めている(写真=右)。NVM Express(PCI Express/SSDに最適化したインタフェースプロトコル)、SATA/PCI Expressマルチプレクサなどの導入が視野に入っている

UltrabookなどモバイルノートPC向けのNGFF、デスクトップPC/ノートPC向けのSATA Express、エンタープライズ向けのSFF-8639と、すでにオールレンジでPCI Expressのコネクトフォームファクタが定義されている(写真=左)。NANDフラッシュの集積ペースが落ちており、限界が近いことを指摘(写真=右)。メモリセルの書き換え回数も低下している。デバイスがNANDとの親和性(書き換えを減らす工夫など)を高めることで信頼性を維持してきたが、今後も信頼性を維持するためにはより高いプロセス技術とともに、さらなるコントローラ/ソフトウェアの洗練が求められる

信頼性を維持するハードルが高くなる中で、優れたNANDプロセス技術に加えて、コントローラによる洗練されたNAND管理技術を持っている点がSamsung SSDの強みであるとアピールした

OEMで実績を積み、リテールマーケットの表舞台へ

Samsungのメモリ業界でのリーダーシップをアピールするJeffrey Hale氏

 次世代SSDセッションの前に行われたメモリビジネスセッション(Samsung Memory Business Overview)では、Jeffrey Hale氏が登壇。メモリモジュール、DRAM、NANDフラッシュメモリ、SSDと、メモリに関連する4カテゴリでトップシェアを続けていることを紹介し、同社のメモリ業界におけるリーダーシップをアピールした。

 SSDに関しては、OEMマーケットでは55%という高いシェア(売上高ベース)を誇り、PCのトップ10メーカーの2/3以上がSamsungのSSDを使っているという。

 競合に対して、Samsung SSDが最も差別化できる特徴としては、ファームウェア、NANDフラッシュメモリ、コントローラ、DRAMすべてをSamsungが生産している垂直統合モデルを強調。エンジニアが相互に協力できるような環境を整えており、最新の技術を反映した製品を素早く開発できると主張した。

 さらにSamsung SSDには、選別した最高級のNANDメモリだけを採用しているため、品質面も極めて優れていると力説するとともに、これからはリテールマーケットへ力をいれていくと宣言した。

Samsung Electronicsのメモリは、PC、携帯機器、家電などさまざまな製品に使われている(写真=左)。Samsungはメモリモジュール、DRAM、NAND、SSDの4カテゴリで市場シェア1位を続けている(写真=右)。SSDは2006年からトップシェアだ

2012年のSSD出荷量は前年比2.3倍に達する見込み(写真=左)。リテール製品とUltrabookなど薄型軽量ノートPCでの需要が急増した。Samsung SSDの最大のアドバンテージは、ファームウェア、コントローラ、NAND、DRAMを自社で製造しているEnd to Endのインテグレーションにある(写真=右)

SamsungのSSDは選別したハイグレードなNANDフラッシュだけを使っており、ある競合のNANDフラッシュに比べて20倍も信頼性が高いとアピールした(写真=左)。OEMでは売上高ベースで55%のシェアを獲得するに至っていることを紹介(写真=右)。これからリテール市場へと打って出ると宣言した

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