VAIO Proは、Haswell(開発コード名)こと「第4世代Coreプロセッサー」をベースとした、Intelの新しいモバイルPC向けプラットフォームであるShark Bay(開発コード名)を採用している。ここが、従来のVAIO Z(Z2)シリーズやVAIO Tシリーズと大きく異なる部分だ。
第4世代Coreのラインアップにおいて、VAIO ProはUltrabook/薄型ノートPC向けとされる低消費電力の「U」シリーズを搭載している。そのメリットは、省電力と省スペースの両立だ。まずは省スペースの面から、VAIO Proに与える影響を確認していこう。
小坂氏は「第4世代CoreのUシリーズは、CPUとチップセットを統合した1チップのパッケージになったため、実装面積を削減できるのが大きな進化点の1つ。VAIO Proに関しては、1チップのプロセッサと、メモリの構成および配置を最適化し、基板のY方向(縦方向)を縮められるように設計した。これにより、バッテリー容量を増やし、薄型軽量ボディとスタミナを両立している」と、その利点を語る。
VAIO Proのメイン基板は、両面実装で8層1段のビルドアップ基板を採用する。小坂氏は「過去には10層2段のビルドアップ基板などを用いて、より高密度実装にチャレンジした製品もあったが、基板の面積を減らせる半面、厚みが出てしまい、重量も増えてしまう。VAIO Proの基板はY方向を縮めつつ、面積と厚さ、軽量化にも配慮し、最適なバランスに仕上げた」と自信を示した。
1チップに集約されることで、従来より配線が密集する問題もあるが、「第4世代CoreのUシリーズは、外部GPU用のPCIe x16を省いているため、2チップぶんの配線が1チップぶんに密集したわけではなく、配線の引き出しは当初の予想より難しくなかった。従来機でも2チップ構成とはいえ、高密度な実装をしてきたので、その経験を生かし、メモリの配線なども含めて当初からシミュレーションによる最適化を進めており、メモリの問題も一切発生しなかった」(小坂氏)とのことで、大きな苦労はなかったという。
ただし、前述の通り、VAIO ProはPCIe SSDをサポートするため、M.2ソケットにPCIe x4を配線する必要があり、プロセッサと距離を近づけつつ、密集したメモリの配線との干渉具合をチューニングするといったことが、基板設計のキーポイントになった。
このように基板設計の面でメリットのある第4世代CoreのUシリーズだが、基板のデザインが横長で変則的な形状のため、製造時にはんだ浮きや基板の反りが発生しやすい問題も懸念された。そこで、設計当初からパッドの形状をチューニングするなど、基板のベンダーと密に協力体制を敷くことで、製造上の課題もクリアしている。
小坂氏は「基板のワークサイズ(切り出し前の余白を含むもとの基板サイズ)から、なるべく無駄なく隙間なく基板を切り出したいため、リフロー(基板にはんだペーストを印刷し、部品を載せて加熱することで、はんだ付けする工程)の際に、通常は余白を付けたままラインに流すが、VAIO Proでは余白はやめてキャリアに載せて流すように工夫した。これにより、ワークサイズから最大限の基板枚数を取っている」と説明する。
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