「VAIO Pro」を“徹底解剖”して見えた真の姿VAIO完全分解&開発秘話(後編)(6/7 ページ)

» 2013年08月13日 15時45分 公開

カスタム設計の液晶ディスプレイは高画質で省電力

 液晶ディスプレイは、VAIO Pro 13が13.3型ワイド、VAIO Pro 11が11.6型ワイドだ。どちらも表示解像度は1920×1080ドット(フルHD)に対応し、画素密度は前者が約166ppi(pixel per inch:1インチあたりのピクセル数)、後者が約190ppiとなる。画面サイズが小さなVAIO Pro 11のほうが高精細な表示だ(Windows 8上でのdpiスケーリング設定はいずれも125%に設定されている)。

 前述の通り、VAIO Proの液晶ディスプレイは特注品だ。具体的には、IPS方式の液晶パネルをベースとして、専用のカラーフィルターで色域を広げた「トリルミナスディスプレイ for Mobile」を採用する(BRAVIAのトリルミナスのようにRGB 3色LEDバックライトを使っているわけではない)。

VAIO Pro 13(写真=左)とVAIO Pro 11(写真=右)の液晶ディスプレイ。いずれも1920×1080ドット(フルHD)表示に対応した液晶ディスプレイを採用する。「トリルミナスディスプレイ for Mobile」の採用により、通常のノートPC向け液晶パネルより色域を広げているのが特徴だ(色域のスペックはメーカー非公開だが、PC USERでの検証ではsRGBの色域をほぼカバーしていた)

 また、液晶パネルの裏に敷く反射板やプリズム形状の変更により、LEDバックライトの光の向きを制御する「集光バックライト」を採用し、少ない消費電力でも正面から見て明るく見えるよう工夫している。

 その半面、IPS方式の液晶パネルにしては、斜めから見て輝度が下がってみえるが、「クラムシェル型ノートPCでは正面から画面を見ることがほとんどなので、光を正面に集めて電力効率を上げる選択をした」(小坂氏)という。本体と液晶ディスプレイ間のインタフェースはeDPを採用するが、バージョン1.3仕様のセルフリフレッシュ機能には対応しない。

 宮入氏は「VAIO Proの液晶ディスプレイには、色域を広げるための強いカラーフィルターが入っており、光が通りにくい。そのため、バックライトの輝度を上げる必要があるが、集光の仕組みによって、色鮮やかで高輝度、しかも省電力の液晶ディスプレイを実現できた」と、その優位性を訴える。

 昨今はより画素密度の高い“Retina級”のディスプレイを採用するノートPCも登場しているが、宮入氏は「モバイルPCのアイドル状態において、液晶ディスプレイは全体の3〜4割の消費電力を占める。こうした中で高画素密度の液晶パネルは、フルHD液晶パネルの2〜3倍も消費電力が高く、バッテリー駆動時間に与える影響が大きい。精細表示に特化したPCというコンセプトならば、そうした選択もありだが、VAIO Proにはバランスを欠く要素でしかない。まだ時期尚早と考える」と、慎重な構えだ。

集光バックライトを採用したことで、斜めから見ると、通常のIPS液晶パネルに比べて画面が少し暗く見える。しかし、色味は変わらないので、画面を見る角度が少しくらいずれても、表示は安定している

画質テストの詳しい結果はこちら→VAIO Zより高画質?:「VAIO Pro 11」「VAIO Pro 13」徹底検証(中編)――“世界最軽量”タッチ対応Ultrabookはディスプレイもキーボードも妥協なしか

映像高画質化エンジン「X-Reality for mobile」や、用途別の色モードも備えている

 さらに、画質を高めるソフトウェア面でのフォローとしては、ソニー独自の超解像技術を備えた映像高画質化エンジン「X-Reality for mobile」も装備する。これをオンにすると、動画部分を自動的に検出し、グラフィックスコアによる高画質化処理が行える。フルHD映像はもちろん、ネット動画など低ビットレートの映像でも、ノイズを低減してより鮮明な動画表示が可能だ。用途別の色モード設定(鮮やか、ナチュラル、テキスト)も用意している。

 液晶ディスプレイは画質だけではなく、静電容量式のタッチパネルの使い勝手にもこだわった。クラムシェル型ノートPCのデザインでタッチ操作をしやすくする工夫として、液晶ディスプレイ側に可変トルクヒンジを採用。渡村氏は「閉じた状態からは軽い力で開くことができるが、設置面に対して105度を超えると、段々と開くのに力が必要になってくる。ディスプレイを開くと、ヒンジが本体の下に回り込んでスタンドとなり、安定するため、画面にタッチしても本体が後方に倒れることはない」と、その機構を説明する。

 細かいところでは「ヒンジ側にカムのような閉じる機構は入れていないが、液晶ディスプレイ側とパームレスト側に磁石が2つずつ内蔵されており、液晶ディスプレイを閉じる際にもスッと気持ちよく閉まる。気持ちよく開閉できるのも今回のこだわり」(渡村氏)とのことだ。

 なお、液晶ディスプレイと表面ガラスの間は、同社のAndroidタブレット「Xperia Tablet Z」などに見られる樹脂を流し込んだ「オプティコントラストパネル」ではなく、空気層だ。そのため、光の反射や視差を抑えるため、ガラスの裏側に低反射コートを施している。タッチスクリーンは強力に接着されているため、特殊な治具を使って熱しながらでないと、外すことができない。宮入氏は「堅牢性の試験では、ガラスが脱落すると、一番被害が大きいと考えられるので、かなりしっかり作り込んだ」という。

本体から分離した液晶ディスプレイ部(写真=左)。タッチパネル搭載機では、液晶ディスプレイ前面に高硬度のガラスが接着されている。液晶ディスプレイとそのヒンジ部を取り外した本体(写真=右)。液晶ディスプレイのヒンジは2カ所で小さくまとまっているが、可変トルクヒンジを採用し、開閉やタッチのしやすさにこだわった

狭いスペースに押し込んだ非対称デザインのスピーカー

VAIO Pro 13の液晶ディスプレイを開いた状態で本体後部をのぞくと、スピーカーと吸気用の細かい穴が開いているのが分かる

 基板類をすべて外した後は、スピーカーを分離しよう。VAIO Proは薄型軽量を重視しながらも、音質に配慮したボックス型ステレオスピーカーを内蔵する。特にVAIO Pro 13は、VAIO Pro 11より大きめのボックス型スピーカーを空いた隙間に押し込めるため、非対称のデザインを採用しているのがユニークだ。

 この設計で左右の音声がバランスよく出せるのか気になるかもしれないが、小坂氏によれば、「従来モデルを使って試作し、聴感上はほとんど差がないことを確認したうえで、このような配置にした。アシンメトリーだからといって特別な設計はしていないが、Clear Phase、xLOUD、S-FORCE Front Surround 3D、ClearAudio+モードといった数々の音響技術で内蔵スピーカーの特性を補い、きちんと鳴らすようなチューニングを行っている」とのことだ。

VAIO Pro 13は、左右非対称の形をした大きめのボックス型ステレオスピーカーを液晶ディスプレイのヒンジ周辺に内蔵(写真=左)。左スピーカーの上をCPUクーラーのヒートパイプがまたいでいるのはユニークだ。スピーカーを含め、ほとんどのパーツを取り外した状態(写真=右)。スピーカーの下には、無線LANとBluetoothのアンテナが重ねて配置されており、省スペースに実装する工夫が見られる
VAIO Pro 13から取り外したボックス型ステレオスピーカーの表(写真=左)と裏(写真=右)。左右非対称のデザインとすることで、ボディ内部の狭い隙間を無駄なく活用し、みっちりと内蔵している

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