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2024年のWindows、AI時代を迎えた2つの方向性 “Windows 12”はハードウェアで進化するWindowsフロントライン(1/3 ページ)

» 2024年01月01日 06時00分 公開

 2024年はWindowsにとって、1つの転機を迎える年となるかもしれない。

 過去1年のMicrosoftにとって「AI」というキーワードは同社の重要なポーションを占める存在だったが、一方で主要なコンポーネントであるGPTを提供するOpenAIは、その組織ガバナンスの未熟さを露呈するなど、諸刃の剣のような存在であることを我々に認識させた。

 ただ、Microsoftにとって今後もAIが重要な位置を占めていることには変わらず、Windowsもまたその影響下にあることは間違いない。

 今回は「WindowsとAI」をテーマに、2024年に登場する“大型アップデート”について2つの方向性からその内容を検証したい。

Windows 11(バージョン 23H2)とCopilot in Windows Windows 11 2023 Update(23H2)とCopilot in Windows

「Windows 12」はどのような形でリリースされるのか

 便宜上、見出しは「Windows 12」と書いたが、実質的には現行のWindows 11に対して「2024年にやってくる“大型アップデート”」の“仮称”と思ってもらえばいい。Windows 12の開発コード名は「Hudson Valley」の名称で呼ばれており、これは以前までWindows 11が「Sun Valley」の名称で呼ばれていたものと対になっている。

 現状、Windows 11には「22H2」「23H2」という形でOSのバージョン番号が割り当てられているが(「winver」で表示されるバージョン表記)、内容的にはSun Valleyのマイナーチェンジと呼べる位置付けだ(「Sun Valley 2」などの表記で書かれることもある)。

 一方で現在開発中の「24H2」には「Hudson Valley」という別の開発コード名が割り当てられており、明確に以前までのバージョンとは差別化が図られている。つまり、Windows 11にやってくる次のバージョンアップは、文字通り“大型アップデート”となる可能性が高いことが示唆されている。

 Windows Centraでザック・ボーデン氏が触れているが、このバージョンアップでは「OSコア」の“世代”も代替わりする。

 Windowsの開発サイクルでは前述のバージョン表記とは別に、元素記号を付与したOSコアの世代管理が行われている。かつて「Iron」や「Cobalt」などの名称を2020年代に入ってから本連載中でも紹介したが、現在Windows 11向けにリリースされているOSバージョンは23H2まで含めて全て「Nickel(ニッケル)」の名称が付与されている。

 同氏によれば、2024年にリリースされるWindows 11向けのアップデートでは「Germanium(ゲルマニウム)」の名称が付与されたOSコアとなっており、世代が変化していることが分かる。

 なお、元素周期表でいえばニッケルの元素番号は28番で、ゲルマニウムは32番といきなり番号が飛んでいる。実は29番の銅(Copper)と31番のガリウム(Gallium)は短期間で開発がスキップされており、次の世代へと移り変わっている。

 30番の亜鉛(Zinc)は、それよりは開発サイクルが長かったものの、クライアント向けWindowsでは一度も商用リリースが行われていないため、正式に世に出る世代としてはニッケルの次がゲルマニウムとなる。

 BetaWikiの情報によれば、ゲルマニウムとしてリリースされている2023年最後の開発ビルドの番号は「Build 26016.1012」となっており、これは12月15日(米国時間)付けでCanary Chanel向けにリリースされているビルド番号と同一となる。

 つまり、Windows 11向けに24H2が“ゲルマニウム”としてリリースされるのであれば、現在Canaryで開発中の内容が反映されたものになるとみられる。

Windowsの開発コード名は元素周期表にちなむ(画像はイメージです) WindowsのOSコアの世代管理は元素周期表にちなむ(画像はイメージです)

 またボーデン氏が同記事の中で触れている重要なトピックとして、Windowsのアップデート周期が「Windows 10時代に回帰する」という点が挙げられる。

 Windows 11の世代では“大型アップデート”という概念が実質的に消滅し、「Moment」と呼ばれる1年に約4回やってくるアップデート周期の中で、追加機能やUIのマイナーチェンジなどがバラバラのタイミングで提供され、最終的に当初1年間で目標としていた機能強化が出そろうという方式が採用されていた。

 おそらくは、年に1度のタイミングで大きな変化が訪れるよりも、準備ができた段階で五月雨式でもいいから機能を次々と追加してユーザーに変化を実感させるのが目的だったと思われる。

 ただ、このMomentという概念は非常に変化が分かりづらく、ユーザーのみならず機能変化を追いかける我々のようなメディアの人間にとっても、とっつきづらいという印象があった。

 同氏が関係者の話として伝えるところによれば、Windows開発の責任者だったパノス・パネイ氏の退任でこのあたりの戦略が覆され、実質的にWindows 10時代の「WaaS(Windows as a Service)」スタイルへと回帰しているという。

 同時に、Sun Valleyが「Windows 11」になったような名称変更はユーザーのさらなる“断片化(Fragmentation)”を起こすだけで、このようなマーケティング的な名称変更は“Windows 12”では行わないという意向もあるという。

 つまり、この話が事実であれば「“Windows 12”は登場しない」ということになる。

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