「面倒だから規制」という風潮をどう覆すか――KDDIが考える「子供とケータイ」の関係性ワイヤレスジャパン2009 キーパーソンインタビュー(2/2 ページ)

» 2009年07月21日 19時11分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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教育ツールとしての「ケータイ」にはなれないのか

ITmedia 子供とケータイに対して、学校側や親、子供の理解を得るという活動の中でもう1つ個人的に興味があるのが、例えば米国などでは“iPhoneを教育で使おう”という動きがあることです。

 ニンテンドーDSも同じで、学校の中で教育に使おうという動きがあります。つまりもっと(子どもの教育の)懐に入っていくと。彼らは学校教育や子供を育てるために、ニンテンドーDSは役立ちますよというのをやっているわけです。

 日本の携帯電話キャリアはそこまで踏み込んでいませんよね。エデュテイメント用途として、今後でてくる携帯電話やスマートフォンを使っていく、というのも1つの有用なアプローチだと思うのですが。

田中 来年度の予定として防犯、防災に関するものは考えており、そういった切り口でNPOと協力して教育の現場へ持ち込む計画は予定しています。また、当社のサイト上で「JUNIOR net」を開設しており、その中ではマナーやルールを学ぶことができるように、モバイルでも「プロフの落とし穴」というタイトルで始めています。

 ケータイというのはなかなか学校では常備できませんし、キャリアが全学校に配れるかといえばそれも難しい。今はPCを導入している学校が主流だと思いますので、JUNIOR net上でいろいろなことを学んでいただければと思っています。

Photo ケータイのルールやマナーが学べる子供向けWebサイト「JUNIOR net」

ITmedia 子供がケータイを持つメリットとなると、やはり安心、安全が中心になるということでしょうか。

田中 そうですね。

ITmedia 米国では、iPhoneを学校へ大量導入させるためにエデュテイメント用のアプリをたくさん作って理科の実験で使う――といったことをしています。PCを子供の教育に役立てるのと同じベクトルの中にiPhoneやAndroid端末が位置付けられていていて、PCが(学校や子どもたちの生活に)入っていったのと同じシナリオなのです。

 おそらく今のケータイのキャリア(が奨める使い方)というのは、安全、安心といったセキュリティの部分で子供が持つメリットを提供し、なおかつ悪いことに使わないようにしましょうというアプローチですよね。しかし、もう一歩進んで携帯電話を教育で使った方がよいのだといったような世界観を教育現場に作れないだろうかと思うのです。

田中 そういった想いを描いたことがないわけではありません。大阪の話などで携帯電話の持ち込みがNGになったときに、無理無理持ち込むようなことをするとかえって逆効果ではないかと感じたというのは事実としてあります。今はまだ、その時期ではないのかもしれないですね。

キャリア連携は「ビジネスを超えられるか」が鍵

Photo

ITmedia 今後の「子どもとケータイ」のあり方について考えますと、ケータイ教室などもキャリアごとに別々で行うよりも、3キャリアが人数を出し合って分担して行うといった考え方もあるのではないでしょうか。

田中 そうですね。ただ、それには各キャリアのケータイ教室に臨む体制があるていど足並みが揃わないといけません。

 それはどういうことかと申しますと、我々は今(ケータイ教室を)一切営業に担当させていません。KDDIというのは会社名なので「KDDIから来ました」という挨拶はするのですが、auというキーワードは使っていないのです。

 営業の人間ももちろん行くのですが、営業の要素は排除しています。そうでなければ学校側から「なんだ、話を聞いてみれば結局売り込みか」と思われてしまい、信頼を得られません。ですからKDDIという社名は出しても、サービスなどには触れないことを徹底しています。それは当社のポリシーですね。

ITmedia それは重要ですね。実際にお話を伺っていると、学校関係者の中には、ビジネスと結びついた取り組みに警戒感や嫌悪感を持たれる人たちもいる。これは特に公立校において強いのですが、学校という場を民間ビジネスと結びつけて考えることが嫌忌される傾向があることも事実です。

田中 法人営業などからも「学校とかあちこち行ってるんですよね、どこか紹介してくださいよ」といわれますが、そこはきっぱり『ダメです!』と(笑)。やりたければ、勝手にマーケットを調べてやってくださいということですね。

ITmedia なるほど。セールスやマーケティングとは切り離して、ケータイ教室を考えなければならない、と。

田中 そこは本当に徹底して割り切っています。これを地方の営業マンなどにお願いしたら「でも営業にならないしなぁ」と愚痴が出るくらいなので、CSRがやっているのです。社内的な役割分担として営業にはやらせません。他社さんと比較すると回数などで勝てない部分はあるのですが、あくまでもクオリティで勝負しようという考えです。

 今年(ケータイ教室を)1000回頑張ります、と言いましたが、既に700回分の申込みを頂いていますし、リピーターとなっている学校も多いのです。それは我々のスタンスをご理解いただいていると思っておりまして「いいね、商売っ気ないのは」と言われることもあります(笑)。

子どもがなじめる情報社会が必要

ITmedia 2009年は携帯電話が劇的に広がり始めた1999年から、ちょうど10年になります。その中で若年層の使い方について見直す部分が出てきたわけですが、この状況を受けて2010年以降の子供とケータイの関わり方というのは、どのように変わっていくのでしょうか。

田中 我々としては今できることを従来よりも積極的に進めていかなければいけません。ご指摘いただいたようにIT以外のことにも今後取り組んでいかなければいけないと思います。

 ITというのは欠かせないツールになっていて、これからもそれが変わることはないでしょう。子供という切り口だけではなく、今の子供たちが情報通信に慣れ親しむことによって人々の生活に自然と溶け込んでいくような社会を作っていくことができればと思っています。

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