古都の魅力がiPhoneで見える――飛騨高山で広がる“iPhone街おこし”(3/3 ページ)

» 2010年09月02日 11時00分 公開
[山田祐介,ITmedia]
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街のWi-Fiエリア化を推進 iPadにも興味

 世間一般にiPhoneが広く認知されてきたとはいえ、日本のケータイ市場全体の中ではまだまだiPhoneの所有率は低い。通常のケータイ向けにアプリやサービスを用意した方が、現状ではより幅広い利用者にサービスを訴求できるだろう。しかし、平氏はiPhoneの先進性や話題性に期待を寄せ、取り組みを進めている。「iPhone 3GSが出て、じゃあほかより早く手を挙げて、何でもやろうぜという感じでした。セカイカメラを使えば“世界初”の取り組みにもなるだろうし、やったもんがちだと思っていました」(平氏)

 また平氏は、自身の本業である印刷業においてもiPhoneやiPadといった次世代デバイスの存在が無視できなくなっていることに触れる。「iPhoneやiPadによる電子書籍の波がやってきて、印刷業は過渡期を迎えています。会社の将来を考える上で、iPhoneやiPadのような端末には、どこかで取り組まなければいけない」(平氏)

 こうした考えもあって、山都印刷ではひだっちマガジンのコンテンツをiPhone向け地域情報配信アプリ「ふらっと案内」にも配信している。同アプリは、ユーザーの現在地近くの観光情報や散策コースを簡単に調べられ、店舗までの道案内を表示できたりと、セカイカメラに比べて実用的で使いやすいナビゲーションアプリだ。コンテンツはひだっちマガジンの広告主の情報を中心に配信し、付加価値の1つにしているという。また、ソフトバンクモバイルの3G回線対応デジタルフォトフレーム「PhotoVision」をデジタルサイネージとしてホテルや土産店などに設置し、それらにひだっちマガジンのコンテンツを配信するなど、平氏はITを活用したコンテンツのマルチ展開に積極的だ。

photophotophoto 「ふらっと案内」の画面。ジャンル別に観光・店舗情報を調べられ、地図案内も利用できる

 「ITとリアル、どちらもないと僕らは困ってしまいます。お互いを補完しながら相乗効果を出していければ」(平氏)

 また、iPhoneをはじめとする“新しい波”に乗らなければいけないのは観光業も同じと平氏は続ける。「年配の方も含め、観光業に携わる方は多かれ少なかれ『このままじゃどうにもならん』という危機感を持っています。今は、新しい取り組みを始める良いタイミングです」(平氏)。ひだっちプロジェクトでは商店街の協力を得て、商店街内をソフトバンクモバイルの公衆無線LANサービス「ソフトバンクWi-Fiスポット」に対応させ、iPhoneやiPadなどのケータイWi-Fi対応端末で快適なインターネットが楽しめるようになっている。現在は一部店舗での展開だが、今後は対応店舗を80店舗にまで増やし、商店街を広くエリア化する考えだ。店舗にはなるべく道路側に無線LANルータを配置してもらうように頼み、店内だけでなく屋外でも無線LANがつながるように配慮している。プロジェクトではこうしたWi-Fi環境を生かして、動画による観光情報の配信にも注力するのだという。

photophoto 中橋付近でセカイカメラを立ち上げると、四季折々の橋の様子がエアタグとして浮かんでいる。その中で点滅しているエアタグをタップすると、屋台が橋を通る様子を動画で楽しめる

 すでにセカイカメラやふらっと案内では、アプリから動画コンテンツが視聴可能だ。例えば本町一丁目と上三之町を結ぶ中橋付近でセカイカメラを立ち上げると、動画のエアタグが浮かんでおり、タップすれば高山祭で屋台が中橋を渡る様子が動画で閲覧できる。「屋台やからくり人形の実演は1年の間で祭りの時期にしか見られません。ですから動画で様子を伝えるわけですが、単に家で見るのではなく、実際にその場所に行って見られれば、臨場感も高まります。そして、動画をストレスなく見てもらうためには、やはり通信が速くないといけない。自分もそうですが、待たされると利用する気がなくなってしまいますから」(平氏)

photo 「ひだっちcafe」にあるiPad

 また、Wi-Fi環境とiPadの組み合わせにも平氏は期待を寄せる。現在、ひだっちプロジェクトでは「ひだっちcafe」と「ひだっちGIFU SELECT」の2店舗でiPadを観光客向けに設置している。観光情報の提供はもちろん、観光客に対する地図の案内などにもiPadは便利に使えるようだ。今後は訪れる観光客の年齢などに応じて、iPadの画面に表示されるコンテンツを遠隔でコントロールするようなことにも挑戦したいと平氏は意気込む。

 さらに、「お年寄りがiPadに興味を示すケースが多い」という点にも平氏は注目している。直感的なタッチインタフェースを備えたiPhoneやiPadは、商店を営む年配の住人にも利用しやすいと平氏は感じている。

 「電子書籍を見せて、指で文字を大きく広げてみせたりすると、『欲しいなぁ』って言うんです(笑)。将来的には、街ぐるみでiPadに対する理解を深めて、iPadを使った観光案内ができたらいいなと思っています。じいちゃんがiPadを取り出して案内してくれたら、面白いと思いませんか? 人のいい方々ばかりなので、丁寧に案内してくれるだろうし、田舎ならではの人の温かみがモバイル端末を介して伝わればいいと思います。翻訳だってできるだろうから、外国の方にも案内できればもっといいでしょうね」(平氏)。


 高山ではこのほかにも、ひだっちをはじめとした岐阜県内の“ゆるキャラ”を高山に集め、イベントの様子をUstreamで配信するなど、ITを使ったさまざまな街おこしが展開されている。また、山都印刷ではiPhone塾にスタッフを参加させ、ひだっちマガジンのiPhoneやiPad向けに電子書籍化する計画とのことで、高山の観光情報は今後さらに充実していきそうだ。

 さらに、セカイカメラやふらっと案内などのiPhoneアプリに関しても、まだまだ進化の余地があると平氏や田端氏は感じている。セカイカメラに関しては、どんなコンテンツを表示するかを決めるフィルターの機能がまだ充実しておらず、観光に特化した案内アプリとしては使いにくい部分がある。ふらっと案内についても、初めて利用するユーザーにさらにフレンドリーなインタフェースになればいいと平氏は話す。アプリの進化によって「できることやアイデアが広がっていく」ことに期待して、ひだっちプロジェクトでは今後もiPhoneの取り組みを進めていく考えだ。

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