どう進化する? スマホ時代のモバイルネットワーク――携帯3社が解説

» 2011年07月08日 08時00分 公開
[山田祐介,ITmedia]

 「スマートフォンが人気を博している。販売目標台数を上方修正しなくてはいけないとみている」

 2011年度に400万台のスマートフォンを販売するとしたKDDIだが、同社の技術企画本部 岩男恵本部長からはこんな言葉がこぼれた。今や各社の端末ラインアップの主役はスマートフォンとなり、フィーチャーフォンからのユーザーシフトはキャリアの予想を上回る速度で進んでいる。

 PC向けサイトはもちろん、動画ストリーミングをはじめとするリッチなインターネットコンテンツと親和性の高いスマートフォンでは、これまで以上にネットワークのスピードや容量が重要だ。既存の3G網だけではいずれネットワークが飽和すると言われている中、各社はどのように通信システムを進化させていくのか――7月6日、無線通信技術の展示会「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2011」の講演で、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクのネットワークの現状と今後が解説された。

現状は37.5Mbpsだが、端末は100Mbpsのポテンシャル――ドコモのLTEサービス

photo NTTドコモ 研究開発推進部の尾上誠蔵部長が講演した

 2010年12月にLTEサービス「Xi(クロッシィ)」の提供を開始したNTTドコモ。LTE(Long Term Evolution)は、世界的に導入が進みつつある次世代移動体通信システムであり、現行の3Gネットワークと比較して高速、大容量(高い周波数利用効率)、低遅延といった特徴を持つ。同社はこのLTEを今後のネットワーク戦略の軸として考えている。

 Xiはサービス開始当初、下り最大37.5Mnpsの通信速度に対応するサービスエリアを東名阪の一部に構築し、7月からは全国主要6都市(札幌・仙台・金沢・広島・高松・福岡)にもエリアを拡大した。今年度中には全国の県庁所在地都市、来年度には全国の主要都市へと展開する予定だ。2014年度に人口カバー率70%の突破を見込んでいる。

 さらに一部屋内では下り最大75Mbpsと、屋外の2倍の通信速度も提供している。この速度の違いは、利用する周波数の“帯域幅”の違いからくるもの。屋外が5MHzの帯域幅でサービスを提供しているのに対し、これらの屋内では10MHzとより広帯域の電波を使っているため、通信が速くなる。


photophoto 5MHzの帯域幅と10MHzの帯域幅とでは、通信速度に違いが出てくる

 なぜ10MHzのネットワークを屋外に構築しないのか――それには、同社のLTEサービスが現行の3Gネットワークと同じ2GHz帯で提供されていることが関係している。20MHzある保有帯域幅のうち、まずは5MHzをLTEサービスに充て、3GとLTEを同じ周波数帯で共存させつつ、普及状況に合わせて徐々にLTEに充てる帯域幅を増やす考え。同社研究開発推進部の尾上誠蔵部長は、「端末のスペック的には100Mbpsに対応している」と話し、現行の端末でも将来的に下り最大100Mbpsのサービスを享受できる可能性があることを示唆した。

実測の速さをアピールするKDDI

photo KDDI 技術企画本部 岩男恵本部長

 記事冒頭の言葉どおり、KDDIの岩男氏は加速するスマートフォンへのシフトを強調し、今後もその勢いが加速するとの見方を示す。同社は2015年にスマートフォンの稼働台数が6000万台を突破し、国内携帯電話の半数がスマートフォンになると予測しているが「実勢はこの計画よりももっと勢いがついているのではないか」と岩男氏は指摘する。

 ネットワーク対策としては、2010年10月に新たな通信システム「マルチキャリアRev.A」を導入。下り最大3.1MbpsのCDMA2000 EV-DO Rev.Aの搬送波を最大3本束ね、同時に利用することで、下り最大9Mbpsにまで通信速度を高めている。

 岩男氏はマルチキャリアRev.Aの実測での速さを強調し、携帯電話の通信速度計測などができるWebサイト「http://mpw.jp/」での成績を披露。全体的に通信速度が速く、5Mbps近いスループットも記録していることをアピールした。さらに5月〜6月のAndroid端末のスループット比較では、下り最大14Mbpsの他社のHSDPAサービス(資料ではA社とされているが、ドコモのFOMAハイスピードと考えられる)と同等のスループットを確保しているとした。


photophoto マルチキャリアRev.Aの実力を他社との比較とともに紹介

 今後は、2012年4月以降に「EV-DO Advanced」を導入する。同システムでは、ある基地局にトラフィックが集中した際に、周辺局にトラフィックを分散する機能が備わっており、「1.5倍ぐらいのネットワーク容量の増加につながるのでは」と岩男氏は期待する。

 さらに、2012年12月にはLTEサービスを開始する計画だ。800MHz帯と1.5GHz帯で、それぞれ10MHzの帯域幅を使ってサービスを展開する。メインに利用するのは800MHz帯で、トラフィック集中エリアに1.5GHz帯をあてがっていくという。2014年度までに3G網のカバーエリア相当となる人口カバー率96.5%の達成を見込む。「基地局の設置はすでに進めている。サービス開始時にはそれなりの数の基地局で一気に全国区展開する」(岩男氏)

 このほか、同社ではマルチネットワークの利用を推進しており、モバイルトラフィックをCATVやFTTH、WiMAX、Wi-Fiといったネットワークに分散させていく計画。3GとWiMAXを自動で切り替えて利用するデータ端末「DATA 01」をはじめ、ユーザーが意識することなく最適なネットワークを利用できるサービスを開発していく考えだ。

世界のエコシステムと連携し、100Mbps超の高度化XGPを展開――ソフトバンク

photo WCP 渉外統括部 標準化推進部の上村治部長

 ソフトバンクの新たなネットワークとして注目が集まっている「XGP」――次世代PHSとしてウィルコムが提供していた通信システムで、現在はソフトバンク子会社のWireless City Planning(WCP)が継承し、新たなサービス展開に向け準備を進めている。WCPの渉外統括部 標準化推進部の上村治部長は、講演でXGPの技術的特徴と、今後提供を予定する“高度化XGP”について説明した。

 上村氏はXGPの特徴として、同システムがTDD(Time Division Duplex)を採用していることをまず挙げる。TDDは、通信を時間に応じて細かく区分し、1つの周波数バンドで送受信を行う技術のこと。一方、W−CDMAやCDMA2000といった日本の3Gネットワークでは、送信と受信それぞれに異なる周波数バンドを充てるFDD(Frequency Division Duplex)が利用されている。

 ペアバンドが不要なFDDでは、周波数の割り当てが比較的容易であるほか、バンドとバンドとの干渉を防ぐガードバンドなどの適応も少なくすみ、効率的に電波を利用できる。また、同じ周波数で送受信するTDDの特徴はスマートアンテナ技術との親和性が高く、電波の干渉回避が期待できると上村氏は説明する。

 PHSの特徴であるマイクロセル(高密度な基地局設置)を継承しているのもポイントだ。面積あたりのネットワーク容量が大きく、トラフィックが集中してもスピードが落ちにくいといった特徴がある。

photo トラフィックが増えても速度が落ちにくいPHSのマイクロセル。その特徴を継承した高度化XGPを構築するのが上村氏の思い描く理想だ

 TDDはこれまで「世界的には発展してこなかった」とする上村氏だが、一方で中国やインドなどでTD-LTE(TDDによるLTE)が採用されはじめ、流れは変わってきたという。同社ではこうしたグローバル市場のエコシステムと連携し、より低コストにネットワークを構築できる新しいXGPサービスを準備中だ。具体的には、TD-LTEの機器を流用できる仕様に調整されている。

 新たなXGPは「高度化XGP」と呼ばれ、MIMOの導入や帯域幅の拡張(10MHzから20MHzへ)、フレーム構造の拡張(非対称化やフレーム長の拡大)といった見直しにより、規格速度の高速化が図られている。また、基地局出力などの調整も行われ、マイクロセルのメリットを生かしつつ、エリアカバレッジの拡張による効率的なエリア展開ができるようになった。

 こうした改善により、高度化XGPでは下り100Mbps超、上り15Mbps超の最大通信速度に対応したデータ通信サービスを提供する考え(ただし、通信能力は端末にも依存)。事業展開には「まだまだ考えるべきところがある」と上村氏は話すが、一方で「MVNOサービスを積極的にやっていく」といった方針も説明した。サービス開始時期の詳細は明らかにされていないが、今年の秋以降から来年にかけて登場する見込みだ。また、人口カバー率92%を2012年度末に達成する目標を立てており、早い段階での広域なエリア展開が予想される。

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