理想の時間割は大事なものから“トップオフ”結果を出して定時に帰る時短仕事術

基礎領域、業務領域、付加価値領域――。時間の使い方はこの3つの領域に分けられます。このうち最も重要なものを1日の時間割から“トップオフ”(天引き)するのです。あなたがトップオフするとしたらどの領域でしょうか。

» 2010年06月25日 16時00分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

 1日の時間割は、その目的に応じて3つの領域に分けるられます。1つ目は「基礎領域」。現在の価値を生み出すために必要な基盤となる時間、平たく言うと現在の収入を維持するための活動時間です。体調を維持するための食事、睡眠、体力作りの時間や、家族と過ごす時間、モチベーションを保つためのリフレッシュ時間などを含みます。プロの仕事人はみな、この領域の過ごし方を非常に重視します。

 一方、将来の資産を生み出す活動時間は「付加価値領域」。即効性はありませんが、近い将来、自分に新しい価値を付加するための活動です。勉強や人脈作り、資格取得、研究活動などを含みます。

 付加価値領域は、1日の時間から「トップオフ」して確保しておきます。トップオフとは、映画業界用語の1つですが、必要経費をあらかじめ総興行収入から天引きしておいて、残りを関係者に割り振る時に使われる言葉。時間管理も、これと同じ。将来に向けた領域は業務時間に左右されないように、必ずトップオフしておきましょう。

 最後に残った時間が「業務領域」です。この時間が会社の決めた業務時間以上であれば、ひとまずOKです。ただし業務領域の中でも、今日のために行うタスク、直近のために行うタスク、将来のためにやっておくべき重要タスクと、異なるレベルのタスクがあるはずです。これらを業務時間の範囲内で、重要なものからトップオフして時間を確保するようにします。限られた時間で、期待以上の結果を出してこそ、プロと言えるのです。

全体の時間は24時間しかありません。そこから、現在の生活を維持するための「基礎領域」をまず差し引き、さらに、将来に向けた「付加価値領域」を差し引きます。残りが仕事の処理を行う「業務領域」となります。

本当のプロは業務時間の長さに左右されない

 理想的な1日の時間割を作る時のポイントは、24時間という持ち時間から、基礎領域(食事、睡眠などすべての基礎を維持するための時間)、付加価値領域(将来の自分価値を高めるための時間)を除いた時間を、業務時間とすることです。

 しかし、わたしたちは仕事のプロフェッショナルであるべきですから、限られた業務時間で、最高のパフォーマンスを発揮しなければいけません。残業はしなくても、最高の成果を発揮するのがプロフェッショナル。そのための基本コンセプトが次の章で紹介する「知的生産性の方程式」です。これは、なるべく少ない時間で多くの成果を生み出すためのベースとなる考え方です。

 プロフェッショナルは常に自走式でなければいけません。自発的に課題を見つけ出し(他人に指摘されるのではなく!)、その解決方法を考える。1つのやり方にこだわりすぎず、常に新しい方法を考え、改善を継続していく。どんなに担当業務が増えようとも、自分なりに整理し、取捨選択をし、求められる納期までに、求められる品質以上のものをアウトプットしなければいけないのです。95%品質はプロ失格、100%品質は合格ライン、しかし、本当のプロは105%品質で仕上げる人たちです。

アマチュアの仕事完成度は締め切り直前にグっと上がる曲線を描きます。一方、プロの仕事完成度は、最初にグっと上がり、なだらかな曲線を描きます。締め切り直前で完成は見えており、要求レベルの+5%上乗せを狙います。

 「品質は高く、時間は限られている……。こんなの無理!」と思うかもしれません。しかし、成功している人は皆、この矛盾を解決してきた人ばかりです。あなたにも、必ずできるようになります。

付加価値時間は強みをさらに強くするために使う

 付加価値領域は、自分の求める価値に基づいて、達成すべき直近の目標を実現するための具体的なステップになっていなければいけません。専門領域を極めるための勉強や資格取得、研究活動や将来起こしたいビジネスのフィージビリティスタディ(プロジェクトなどが実現可能か、妥当性があるかを調査・検討すること)、モチベーションアップや情報収集のための読書などもこの領域に含まれます。

 付加価値時間は、1日の時間割からトップオフして、少なくとも2、3時間はとりたいものです。移動中、朝起きてから始業までの時間、ランチ後のカフェタイム、風呂、寝る直前の時間などすきま時間を総動員すれば、この時間は簡単に捻出できます。すきま時間を総動員させて、地道に付加価値領域を作りあげた人と、そうでない人は、数年後にものすごい「価値の差」になって現れるでしょう。付加価値領域の時間は、確実に将来の糧となります。

 かのピーター・ドラッカーも「並以下の能力を向上させるために無駄な時間を使ってはならない。強みに集中して取り組むべきである。無能を並の水準にするには、一流を超一流にするよりもはるかに多くのエネルギーを必要とする」と述べています。

 付加価値の時間は、自分のコアコンピタンスを高めるために使うべきです。コアコンピタンスとは、企業において「競合他社を圧倒的に上回るレベルの能力」「競合他社に真似できない核となる能力」を指す言葉ですが、個人においても同じことが言えます。自分のコアコンピタンスを見つけ、それを伸ばすために付加価値領域の時間を費やしてください。

付加価値活動は、必ず強み(コアコンピタンス)をさらに強くするために行います。ウィークポイントを補強するために時間を使っても、長い時間がかかるうえ、達成できた時の評価は高くありません

集中連載「結果を出して定時に帰る時短仕事術」について

 本連載は、6月26日発売の書籍『結果を出して定時に帰る時短仕事術』(ソフトバンククリエイティブ刊)から抜粋・再編集したものです。

 残業ゼロで成果を倍増する仕事効率化術――。と言っても、単に効率化だけではダメ。人生の価値マネジメントから始めるタスク管理としくみ作りを実践しましょう。「ワークライフバランス」と言っても単に時間バランスだけとっても意味はありません。

 ビジネスパーソンは、顧客の要望を上回る成果を出しながらも、自分の時間をしっかり確保して、プライベートの充実と自分の付加価値を高めるための将来に向けた事故投資を両立する必要があります。

 本書は、しっかり結果を出しながらも、将来の自分価値を高めるための「時短仕事術」を紹介しています。人生の価値感管理から日常生活のタスク管理まで、生産性戦争に打ち勝つためのテクニック満載です。

  • 1時間目:残された時間を価値あるものに
  • 2時間目:仕事も人生もうまくいく! 理想の時間割
  • 3時間目:最少の労力で最大の成果を上げる知的生産の方程式
  • 4時間目:必ず目標を実現する! スケジュール&タスク管理術
  • 5時間目:集中力が劇的にアップする!すきまアクションとじっくりアクション
  • 6時間目:時短の達人が教える! 生産性を高める小さな習慣
  • 7時間目:ITを味方につけなければ、生産性戦争に勝てない!
  • 8時間目:最短で問題解決するための時短思考のツール
  • 9時間目:チームの生産性が飛躍的に高まる! 時短会議のススメ
  • 資料編:時短の達人になるためのチェックリスト

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com

Twitterアカウント:@nagatameister


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