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» 2012年06月18日 15時20分 UPDATE

小寺信良「ケータイの力学」:いよいよ子どもの「スマホ化」が始まった(2)

子どもたちが持つ携帯電話にもスマートフォン化の波がおよんでいるが、その一方で保護者の意識が追いついているとは言えない。無線LANやアプリの利用によるリスクなど、スマホへの理解が必要だ。

[小寺信良,ITmedia]

 前回は子どもが所有するモバイル端末が、スマートフォン化していかざるを得ない状況を、環境面から検証した。すでに一部では販売が始まった今年の夏モデルの契機に、そもそも新モデルはスマホしかないという現状に来ていることになる。

 実際の出荷台数比率を示す数字を、JEITAが公開している。この資料によれば、今年第一四半期でついにスマートフォンがフィーチャーフォンを抜いた。このデータからは先週の記事の事例のような、高校生の極端なスマホ化が進んでいるという現状は見えてこない。ただ次の四半期の比率次第では、そういう予測も可能な射程距離に入ってくるかもしれない。

photo JEITAが集計した2012年4月の移動電話国内出荷実績。1〜3月の出荷分では、スマートフォン比率が過半数となった

 一方で、いくらスマートフォンが隆盛とは言っても、契約形態は従来型のケータイと変わらないので、子どもに与える決定権は保護者にあるという現状もまた変わらない。

 保護者の意識という点では、一つの資料として、日本PTAが今年3月に公開した、「子どもとメディアに関する意識調査結果報告書」(PDF)がある。メディア全般が対象ということで、テレビやマンガ、ケータイ、パソコンなど多岐に渡る調査である。

 この中でケータイに関しては、いわゆるフィーチャーフォンとPHSに関しては綿密に調査されているが、これはほぼこれまでこの連載で紹介してきた傾向を示すもので、特筆すべき部分はない。設問中ようやく1つだけ、「小学生・中学生にスマートフォンは必要か」というものがあるだけで、小中学生の保護者の間では、まだまだスマートフォンは先の話であるという認識が見られる。

photo 23年度子どもとメディアに関する意識調査より(出典:日本PTA全国評議会)

スマホに対する保護者の意識

 MIAU名義で筆者も参加している、安心ネットづくり促進協議会「スマートフォンにおける無線LAN及びアプリ経由のインターネット利用に関する作業部会(スマートフォン利用作業部会)」では、6月8日に作業部会の議論を踏まえた報告書をまとめ、公表した。

 コンプガチャで火が付いたソーシャルゲームに関しては、この作業部会で議論するには間に合わなかったが、それ以外の現時点でのスマートフォンの問題点は一通り網羅されている。この中に、保護者の意見がいくつか集約されているので、ポイントとなる部分をピックアップしてみる。

 茨城県メディア教育指導員連絡会が指摘する部分で、「子どもの利用に関しては、初めからフィルタリングに入っていてあたりまえ、子どもに売っている以上は、安心に使えるもの、と考えている保護者も少なくない。」というのは、現状をよく表わしている。これは地方も都心も関係なく、保護者の認識の平均値はだいたいこのあたりだろう。

 Willさんいんは島根の企業でネットを使った教育、就職支援などを行なっているところだが、「情報リテラシーは都会より島根のほうが低いにもかかわらず、フィルタリングが機能しないことがもたらすリスクは都会より島根のほうが高い。」という指摘はどうか。ここではネットで知り合った者同士が実際に会う場合、都会では移動手段が公共交通機関であるために人目に付くが、地方の場合は車社会なので、こっそり会うことが可能、というものだ。

 ただここには誤解もある。都会は公共交通機関を使って人目に触れるとは言っても、基本的に他人には無関心・無干渉なので、人が多いことは何一つ抑止効果として機能しない。特に東京近郊ではそうだ。一方で大阪に代表される古くからの大都市では、都会であっても他人同士のコミュニケーションが成立する土地柄であるため、抑止効果は認められるのかもしれない。

 全体的に、フィルタリングというものに効果を依存しすぎる傾向は、保護者側には見られるようだ。しかしそのフィルタリングも、ケータイ販売店で間違った説明がされるといったことも起こっていることが報告されている。また「アプリ」なるものへの説明がなく、保護者もどう使っていいのか分からない、あるいはアプリを使うリスクの説明もないといった現状が指摘されている。

 この問題は、これまで日本が直面しなかったことだ。例えばPCを買うのに、いちいちアプリの説明や使うリスクなどの説明はない。それらはユーザー側が処理するリスクだからだ。しかしスマートフォンの場合だけは、子どもが使うものだという理由だけで、それらの対応をケータイ販売店に求めている。それはいささか理不尽なように思える。

 かといって、本当に勉強した方がいい保護者は、問題があること自体を認識していないか、分からない分からないと言うだけで学ぶことを放棄しているかの、どちらかである。テキストがないので学ぶ機会がないといつも言われるので、MIAUではわざわざ紙の本を作って一般書店で売ったりしているが、実際にはリアル書店ではなく、ほとんどがAmazon.co.jpで売れてるみたいなことが起こっている。

 ただ朗報としては、日本図書館協会が大量に購入して全国の図書館に配本してくれているようなので、買わなくても学べる環境が整いつつある。このような機会を利用して、保護者の学ぶ機会を創出することが、微力ながらも我々にできることである。

小寺信良

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は、ITmedia +Dモバイルでの連載「ケータイの力学」と、「もっとグッドタイムス」掲載のインタビュー記事を再構成して加筆・修正を行ない、注釈・資料を追加した「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)(amazon.co.jpで購入)。


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