タブレットで変わる、学びのカタチ(2)小寺信良「ケータイの力学」

» 2013年07月22日 13時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 前回はトイザらスで販売されている子ども向けタブレット「MEEP!」を取り上げた。今回はこの7月末から販売を開始する、「tap me」(タップミー)を取り上げる。

 tap meを作ったのは、バンダイ傘下のメガハウス。フィギュア、ゲームなどを開発、販売しているメーカーだ。Androidタブレットそのものの製造は中国だが、日本の協力会社とともに企画から内部の作り込みまで行なった、日本主導の製品である。価格は2万790円。

 ハードウェアとしては、先のMEEP!と大きくは違わない。共に7インチタブレットであり、シリコンバンパーが標準で付けられている。強いて上げれば、背面にもカメラが付いているところぐらいだろうか。

photophoto メガハウスの子ども向けタブレット「tap me」(写真=左)。背面カメラも搭載(写真=右)

 ただ製品のコンセプトはかなり違う。同じように保護者用モードがあるが、MEEP!がPCを使ってクラウド経由でタブレットを管理するのに比べ、tap meはPCが使えない保護者を考慮し、タブレット本体内に保護者モードを設けた。保護者が「パパママモード」使えば、普通のAndroidタブレットとなる。ホームボタンを押すとパパママモードを抜け、子供用のモードになるといった作りだ。

photo 子ども向けのホーム画面

 tap meで利用できるアプリは、メガハウスが運営する独自のマーケット「キッズアプリマーケット」からしかインストールできない。これらはお遊びアプリだけでなく、日本語対応の学習用のアプリも開発元と直接交渉して、独自マーケットで配信している。保護者がGoogle Playを使ってアプリをインストールすることはできないが、教育にしろゲームにしろ、きちんと検証済みのアプリしかインストールできないことは、Androidに不慣れな保護者でも安心できる要素だ。

photo 独自のアプリマーケット「キッズアプリマーケット」(画面は開発中のもの)

 またバンダイの子会社ということで、バンダイチャンネル用のアプリもある。これも子ども向けのコンテンツしか選択できないよう、フィルタリングされている。バンダイチャンネルにアダルトコンテンツがあるのか、と思われるかもしれないが、いわゆる「大きいお友だち」系のコンテンツは排除するという仕掛けである。

photo バンダイチャンネルが利用できるのはポイントが高い

日本の教育事情にフィット

 保護者向けの初期設定ですることは、保護者用のパスワードの設定とWi-Fi設定だ。その後、子ども向けモードで何を閲覧許可するのかを選択する。MEEP!では、写真や動画の利用など、メディアごとの時間設定が可能だったが、tap meではタブレット全体の利用時間しか決められない。

photophoto 初期設定はタブレットのみで可能(写真=左)。タイマーによる時間制限は可能(写真=右)

 小さい子ども向けには、さらに別の機能制限アプリを組み合わせることで、利用可能なアプリを絞り込むことができる。子どもが何人かいて、タブレットを使い回す時には便利だ。

photo 別アプリを活用することで、複数の子どもにも対応可能

 タブレットを遊びだけでなく、知育教材として使いたいのであれば、子どもが自発的にアプリを使っていく必要がある。それにはやはり日本語が使えるアプリであることは最低限の条件であろう。例えばひらがなの練習やかけ算九九の覚え方のアプリがあるといった点は、日本で企画された商品が生きる部分だ。

photo 日本語の学習アプリが充実

 背面カメラを用意したのは、子どもは写真遊びが大好きという調査結果を基にした仕様だという。カメラアプリでは、額縁やスタンプを貼る、いわゆるプリクラ的なアプリも用意されている。

 Android OSのバージョンは4.0で、若干古いと思われるかもしれないが、4.0まではFlash Playerがサポートされているところがポイントだ。実は子ども向けのWEBサイトでは、わかりやすく解説するためにFlashアニメを使っているところも多い。

 例えば「アルミ缶リサイクル協会」のサイトで、子どもがリサイクルの仕組みを学ぼうとしても、iPadやAndroid 4.1以上の端末では、何も表示されない。子ども向けサイトがあることは保護者や教育者にとっては有り難いが、現状はPCでの利用を想定しているところもまだまだ多く、Flashの対応は必須といえる。

 奇妙なことに、このtap meもMEEP!同様、トイザらスで販売されるという。他の量販店おもちゃ売り場などでも置かれる可能性もあるが、現時点ではMEEP!がトイザらスにしか置いてないため、子ども向けタブレットの両方が比較できるのは、トイザらスの店頭だけということになりそうだ。

小寺信良

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は、ITmedia Mobileでの連載「ケータイの力学」と、「もっとグッドタイムス」掲載のインタビュー記事を再構成して加筆・修正を行ない、注釈・資料を追加した「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)(amazon.co.jpで購入)。


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