iOS対応とストア拡充で「dマーケット」はどこへ向かうのか――NTTドコモ阿佐美氏に聞く:神尾寿のMobile+Views(1/2 ページ)

» 2013年10月23日 00時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 ドコモは「インフラとサービス」で急成長した会社だ。

 1990年代の携帯電話黎明期、ドコモはDDIセルラー/IDO (後のKDDI)やデジタルホングループ(後のJ-フォン、ソフトバンクモバイル)よりもサービスエリア面で優位に立ち、競争の礎を確立。1999年2月に「iモード」を立ち上げて、世界初の“コンシューマー向けモバイルインターネット市場”を創り上げた。インフラとサービスで他社を圧倒したことが、約5割という高いシェアにつながったのだ。

 そして現在。ドコモはスマートフォン市場で他キャリアとつばぜりあいを繰り広げながら、サービス事業の“スマート化”に注力している。これまで構築したiモードのノウハウを生かしながらも、スマートフォン時代に合わせたキャリアならではのサービス事業を展開しようとしているのだ。その鍵となるのが「dマーケット」であり、この冬から本格稼働するdocomo IDなどの各種サービスである。

 ドコモがAppleの「iPhone」の取り扱いを開始し、プロダクト(端末)におけるキャリア間競争は遠からず終結する。その中で、dマーケットをはじめとするドコモの各種サービス事業は何を目指すのか。また、ドコモの競争力の源になり得るのか。NTTドコモ スマートライフビジネス本部 本部長の阿佐美弘恭氏に、dマーケットの現状や取り組みについて聞いていく。

Apple/Googleと共存共栄を目指すdマーケット

photo NTTドコモの阿佐美弘恭氏

――(聞き手、神尾寿) 3キャリアがAppleのiPhone取り扱いを開始する中で、ドコモは改めてネットワークとサービスを競争軸に据えようとしています。ネットワーク競争は3キャリアで同じようにLTEへの投資を強化しているわけですが、ドコモは「dマーケット」などサービス分野にも注力していることが(他社にない)特長になっています。

阿佐美氏 iPhoneを出すから云々ではなくて、ここ数年でドコモがやってきている姿勢はあまり変わってないのですよ。フィーチャーホンからスマートフォンへの流れは見えてきている。ここではiモードのようにネットワーク・端末・サービスすべてを(キャリアが)コントロールする垂直統合モデルでの展開は難しくなっています。ここ数年は、ハードウェアやOSプラットフォームに一体化させずに、(スマートフォン向けの)サービスを展開できるようにする準備をしてきました。

―― そもそも“OSプラットフォームに縛られないこと”を前提にしていたから、iPhone対応もしやすかったわけですね。

阿佐美氏 ええ。基本的な考え方の中に「垂直統合モデルをやめて、キャリアのサービスは端末にひも付いたOSプラットフォームやエコシステムから自由になる」というものがありました。これに基づいて、Androidスマートフォンの開発ではGoogleと協議しながら、彼らのエコシステムとドコモのサービスを共存させる形を構築してきました。その中でかなり早期の段階で、キャリアのサービス事業を端末やOSプラットフォームから切り離し、マルチプラットフォーム化することを決めました。これは2010年ごろの話ですね。

photo ドコモはマルチOSでサービスを展開していく

―― スマートフォンに取り組む初期段階から、iモードの垂直統合モデルをやめる方針だったのですね。

阿佐美氏 そうです。スマートフォンではOS側のプラットフォーマーがサービスとセットで展開することが見えていました。しかしドコモとしてはサービス事業はきちんと続けていきたいですし、グローバルなプレーヤーにはない強みもありました。ですから、キャリアのサービスを端末やOSから切り離して、(GoogleやAppleなどが持つグローバルなエコシステムと)共存しやすい形にした方がいいと判断しました。

―― 日本ではキャリアがエコシステムを構築していましたが、スマートフォン時代はGoogleやAppleもエコシステムを提供する形になっていた。そこでの交通整理が必要になっていた、と。

阿佐美氏 もともとキャリアが(iモードのような)エコシステムやサービスを提供する国は、日本くらいしかありませんでしたからね。モバイルインターネットを広く普及・浸透させるには、端末・ネットワーク・エコシステムの3つが必要です。多くの国ではキャリアはネットワークしか提供していませんでしたから、スマートフォンを広げるにあたっては、(OSを提供する)GoogleやAppleがエコシステムやサービスまで用意する必要があったのでしょう。

 一方で、日本ではキャリアがエコシステムを作り、この10年、一般層向けにコンテンツサービスの市場を広げてきた。iモードでの実績やモバイルでサービスを販売するノウハウについては、GoogleやAppleの方々に評価していただけています。ですから、お互いのエコシステムを共存共栄させるモデルを作る、という考え方で一致しているのですよ。

―― 今回のiPhone導入でも、Apple側はドコモのサービスを排除するのではなく、共存共栄を図るという形になりましたね。

阿佐美氏 サービスやコンテンツについてはローカル市場ごとへの最適化が必要なわけですが、そこでのドメスティックな取り組みについては、ドコモの強みが認められているのですよ。グローバルでの広さではiTunes/App StoreやGoogle Playというストアがあり、彼らのエコシステムに優位性があります。しかし日本市場により特化し、日本のお客様に合わせたエコシステムやサービスの深さということならば、これまでiモードをやってきたドコモに優位性があるわけです。ですから、両者がうまく共存した方が、結果としてより多くコンテンツやサービスが提供できるようになる。

―― 音楽や映像のサブスクリプションモデルなどは、ローカル市場ごとにコンテンツホルダーとの調整が不可欠で、AppleやGoogleのエコシステムだと、どうしても「北米市場が優先」「北米市場のみ」といった形になってしまう。ドコモのdヒッツやdビデオ/dアニメを見れば分かるとおり、“日本ではキャリアが手がけた方が先進的なサービスがスムーズに開発・展開できる”のは事実なわけです。このあたりが共存共栄の鍵といえそうですね。

 ところで今の話ですと、ドコモは「AppleやGoogleのエコシステムとドコモのエコシステム」は共存を目指すという姿勢ですが、メーカーのエコシステムについてはどう考えていますか。例えば、ソニーやサムスンも、独自のコンテンツストアを構築していますが。

阿佐美氏 そこは“バランス”だと考えています。ただ、メーカーがきちんとエコシステムを作り、それが成立していくというのなら、「あってもいい」のかなぁ、と思いますね。しかし、その前提として、(メーカーのエコシステムが)お客様の付加価値になっていく、というのが重要ですが。

 ドコモの姿勢としては、エコシステムは複数が共存して切磋琢磨するのが望ましいと思います。我々も、dマーケットをよりよいものにすべく、AppleやGoogleに負けない価値を作っていかなければいけませんから。

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