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» 2013年10月27日 15時50分 公開

石野純也のMobile Eye(10月15日〜10月25日):新iPadのインパクト/auスマパス強化の狙い/iPhone効果が現れたドコモ (2/3)

[石野純也,ITmedia]

スマートパスを強化し、上位レイヤーで差別化するau

 KDDIは24日、「auスマートパス」の強化施策を発表した。コンセプトは、「いろんなラッキーがやってくる」(代表取締役執行役員専務 高橋誠氏)。従来から行ってきたクーポンの強化に加え、タイムセールや限定の商品をタイムライン上に載せていくことで、ユーザーに「日々お得感を感じていただきたい」(同)というのが、今回掲げた戦略だ。従来からauスマートパスにはクーポンが掲載されていたが、この効果が高かった。高橋氏が紹介した「前回はローソンの店頭から、あっという間にピュアロールケーキがなくなった」という事例からも、人気の高さがうかがえる。ローソンのほか、モスバーガーやジョージア、東急ハンズといった全国規模の会社とも手を組み、「東京だけでなく、全国のみなさんがおトクを感じられるようにしていく」(同)方針だ。

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photophoto 「いろんなラッキーがやってくる」というコンセプトの下、「auスマートパス」を強化。クーポンなど、お得なサービスを強化していく

 この延長線上にあるのが、ECでのお得感を強化する施策だ。KDDIは三越伊勢丹やエイチ・アイ・エス、一休との取り組みを発表。三越伊勢丹との間にはKDDIが資本提携したOrigamiが入り、限定商品の販売などを展開していく。エイチ・アイ・エスとの関係も同様で、auスマートパス専用の安価な海外ツアーを提供する。発表会では、商品例として5日のハワイツアーが先着100人に、4万9800円で販売されることなどが明かされた。また、一休は、自社の持つ高級レストランやホテルの割引サービスを提供する。これらの商品や割引サービスが、auスマートパスのタイムラインに掲載されるようになるというのが、発表の目玉となる。

photophotophoto 伊勢丹、エイチ・アイ・エス、一休といった企業と協業することで、プレミアム感も演出

 Androidに比べタイムラインへのアクセス率が低くなっていたiOS向けには、アプリを提供してauスマートパスへの導線を強化する。高橋氏によると、「Androidはショートカットを(端末に)埋め込んでいて、ブラウザにも(ブックマークを入れるなど)工夫をしているので、アクティブ率は非常に高い」。一方で、iOSは「1回スマートパスに入ってもらっても、ブラウザのショートカットがないので再訪率が上がらない。最大のポイントなので、これを店頭でセットアップする方向でやっていく」(同)という。

photophoto iOS向けのアプリを開発し、ユーザーに「auスマートパス」への導線を分かりやすくしていく方針(写真=左)。モノクロの配色だったタイムラインには、クーポンやプレゼントなど「ラッキー」の部分を強調するため、黄色の星印を採用した(写真=右)

 また、発表会ではApple Careの免責額7800円を2回まで支払うという補償サービスをあらためてアピールした。アプリがダウンロードし放題になるAndroidに対し、iOSではApp Storeの規定もあり、それが実現できていない。Webアプリは両プラットフォーム共通で提供しているが、クオリティはまだネイティブアプリの方が高い。こうしたプラットフォームの違いによるサービスの差を埋めるため、「iOSであれば7800円の免責分を補償するが、そういう要素で満足度の向上を図っていく」(同)というのがKDDIの目論みだ。

photo アプリの取り放題はないものの、Apple Careの免責を補償することで満足度を高めている

 auスマートパスは、すでに800万会員を超える規模に成長した。高橋氏も「有料のサービスで これだけの会員を取れているのは、Yahoo!プレミアムの900万ぐらい。かなり大きな有料系会員サービスになっている」と自信をのぞかせる。800万人の会員から得た月額料金の390円を、ユーザーに還元して満足度を上げていくのが今回の取り組みの柱だ。コンテンツやサービスのオープン化を掲げ単体での収益拡大を目論むドコモに対し、KDDIはauスマートパスなどのサービスを差別化の武器にしている。高橋氏も「auスマートパスはauに閉じてやっていき、差別化の要因にしたい。今の段階ではネットワークで差別化をしているが、次に来るのは上位レイヤーの差別化という整理がきっちりできている」と語る。現段階ではどちらの方針が正解かは分からないが、少なくともこれがドコモとKDDIの大きな違いと言えるだろう。

photophoto 「auスマートパス」の会員数は、800万を突破した(写真=左〜。年度内に1000万加入を目指す(写真=右)

 一方で、auスマートパスは、店頭での獲得がここ最近、少々強引になっている節がある。かく言う筆者も、昨年「HTC J butterfly」を、今年「GALAXY Note 3」を購入した際に“必須条件”と店員に告げられた。つまり、auスマートパスをつけないと“端末代が上がる”のではなく、“端末の購入や契約そのものを断られた”ということだ。筆者の事例はあくまでいち体験談に過ぎないが、同様の声は、ネット上でも散見される。iPhone 5s、5cや冬モデルが一斉に発売されたタイミングで店頭に訪れるユーザーが増え、こうした対応に納得がいかない不満の声が噴出したのかもしれない。

 KDDIは「会社として強制はしていない」と言うが、販売奨励金の額を調整するなどして、代理店が従わざるをえない環境を作った可能性はある。いずれにせよ、auの看板を背負って販売をしている時点で、ユーザーがKDDI側の意思と受け取っても致し方ないだろう。この点について、高橋氏は「(店頭対応は)頭を悩ませながらやっている」とコメント。「店頭で入っていただき、無料期間にできるだけ使ってもらってとどまっていただきたいが、一方で解約したい方がいるのも事実。お客様の声も出ているので、聞きながら改善していきたい。(中略)お客様のご迷惑にならないよう、CS(カスタマーサポート)や営業とも徹底的にやっている」(同)

 Android端末では毎月割との相殺があり、2013年2月からauスマートパスを外すと315円割引が減額されることになった。つまり、390円のauスマートパスを外すと、毎月の支払いが315円上がるということだ。一方で、事実上2年間は月75円でauスマートパスを利用できるため、ここまで述べてきたようなクーポンを駆使すれば、あっさりと“元”は取れる。ネイティブアプリが無料になることに魅力を感じているユーザーも多いだろう。

 iPhoneについても、月390円でApple Careの免責費用が無料になるのは安心感が高い。だからこそ継続率も高くなっていると思われるが、その半面、auスマートパスは店頭で解約ができず、リテラシーの低いユーザーがどう対処していいか分からなくなる事態も容易に想像できる。せっかく培ってきたサービスが、こうした強引な手法で反感を買われてしまうのは残念だ。高橋氏も改善の意向を示していたが、できることから、早急に対処してほしい。

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