「iPhone 5」と「iPhone 5s」の見た目はほぼ同じだが、中身は大きく変わっている。iPhone 5が「A6チップ」を搭載していたのに対し、iPhone 5sではPCとほぼ同等の性能を持つ64ビットアーキテクチャの「A7チップ」を搭載している。CPUとグラフィックスのパフォーマンスがA6チップの最大2倍高速になっており、iOS 7に最適化されている。
普段使いにおいて、そこまで高速化されたと感じることは少ないが、カメラのオートフォーカスでピントが合うまでの時間を短縮できたり、繊細なグラフィックスのゲームをプレイしたときの表現力の高さを感じたりできるというのが、このチップの利点だ。
ではA7になって、具体的にどれほどパフォーマンスが向上しているのか。数値としての差を見るには、ベンチマークテストを行ってみるのが有用だ。今回は「Geekbench 3」「3Dmark」「Basemark X」の3つのアプリでテストし、5回計測した平均値を出した。
CPUの性能を図るGeekbench 3では、シングルコアとマルチコアのスコアを算出した。3DmarkではCPUとグラフィック性能を図る最もハードな「Ice Storm Unlimited」を試した。グラフィック性能を図るBasemark Xでは、端末のディスプレイ解像度に合わせてテスト用のグラフィックが動作する「On-Screen」、フルHD(1080×1920ピクセル)の解像度で動作する「Off-Screen」の数値を記載した。
結果は以下の表の通りだ。いずれのアプリでもiPhone 5sは2倍近かったり、それ以上のスコアとなった。
Geekbench 3(Single-Core Score/Multi-Core Score) | 3Dmark(Ice Storm Unlimited) | Basemark X(On-Screen/off-screen) | |
---|---|---|---|
iPhone 5s | 1407/2554 | 14561 | 27.778FPS/16.121FPS |
iPhone 5 | 715/1283 | 5706 | 16.078FPS/7.665FPS |
こうして見ると、明らかにiPhone 5sの処理性能が高いことが分かる。これまで5を使っていて動きが遅いと感じることはほぼなかったが、5sに慣れてしまうと5ではストレスを感じるのかもしれない。
これだけ高性能なCPUを搭載していると、バッテリーの消費が気になるところ。筆者が実際にiPhone 5sを使った率直な感想としては、iPhone 5に比べるとバッテリーの消費は少し早いような気がしている。ただ、スタミナに関しては工夫が施されているようで、メインチップであるA7の負担を、もう1つの「M7コプロセッサ」が肩代わりして効率化が図られている。
M7コプロセッサは、加速度センサー、ジャイロスコープ、コンパスを処理するための独立したチップで、歩いているか、走っているか、車に乗っているかなど、人の動きを判別して、それに応じた処理をバックグラウンドで行ってくれる。例えば、就寝中などで端末を使っていないときは3GやLTEへの接続を減らしたり、車から降りて歩いたらマップのルート案内がドライブ用から徒歩用に切り替わる、といった具合だ。後日、詳細な検証を行う予定だ。
M7コプロセッサを活用したアプリとして、「M7歩数計−Steps」(無料)が提供されている。シンプルにその日に歩いた歩数を記録するためのアプリなのだが、M7モーション コプロセッサを利用するため、常にバックグラウンドで起動しておく必要がないのが特徴だ。しかも、これまでの歩数計アプリはインストール、起動してからの歩数しかカウントされなかったが、M7歩数計は初回起動時から過去の歩数も表示してくれるのがうれしい。バックグラウンドで起動しないため、消費電力を抑えられるのも最大の利点だ。
このように、M7モーション コプロセッサを活用したフィットネスおよびライフログアプリがApp Storeに続々と登場している。最近、運動することを心がけている筆者にとってはこういったアプリが使えるiPhone 5sはかなり頼れるパートナーになりつつある。意識せずに先進的な機能を誰もが使える仕様に感心する日々だ。
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