五感ならぬ“三感”に訴えるスマートフォンに満足した2013年ITmediaスタッフが選ぶ、2013年の“注目端末&トピック”(編集部田中編)(2/2 ページ)

» 2013年12月31日 11時30分 公開
[田中聡,ITmedia]
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メタルの質感に惚れ込んでしまった「HTC J One」

 日本市場に目を向ければ、2013年はXperiaの躍進が大きなトピックだったが、個人的にはXperia Z/Z1よりも印象に残っているスマートフォンがある。「HTC J One」だ。「ひとめ惚れの予感です。気持ちよすぎるHTC」は、2012年末に発売された「HTC J butterfly」のキャッチコピーだが、HTC J Oneも、まさにひとめ惚れだった。

photophoto 業界へのインパクトを考えてXperiaを最初に述べたが、筆者にとってのベストスマートフォン2013は、HTC J Oneだ。この(ほぼ)フルメタルボディが何よりのお気に入りポイントだ

 何といってもメタルの質感がものすごく気持ちいい。ディスプレイと側面を除いたら、(ほぼ)フルメタル。これだけでグッと来るし、実際に触っても、まさに金属そのもの。冬に暖房のない部屋に置いたままにしておくと、ヒンヤリ冷たくなるが、これぞ金属の証でもある。HTC J Oneはリアカバーを外せるのだが、このカバーはまさに金属そのもの。机の上に置いたときの「カラン」という音が、また何ともいえない情緒を感じさせてくれる。本体よりも存在感のあるカバーなんて、これまで見たことがない!

photophoto 追加色として発売されたメタルレッドも所有欲をくすぐる色だった(写真=左)。まさにメタルそのものなリアカバーも格好いい(写真=右)

 HTC J Oneに触れてから、プラスチックのスマートフォンがどれも安っぽく思えてくるほど、このフルメタルボディに惚れてしまった。Xperia Z/Z1同様、HTC J Oneも背面を表にしていつも会社のデスクに置いて“主張”している。通知が気付きにくい? 便利さを代償にするだけの価値が、このメタルボディにあるということだ。Xperia Z/Z1のガラスも格好いいが、質感はHTC J Oneの方が上回っていると思う。持つだけで満足感を得られる――こんなスマートフォンには、今まで出会ったことがない。「褒めすぎだろう」と突っ込まれそうだが、年に一度の本音が言える機会なのでご容赦いただきたい。

 新しい提案をしてくれたカメラも見逃せない。シャッターを押す1秒前から計20枚の写真と3秒の動画を同時に撮ってくれる「HTC Zoe」。初めて聞いたときは「へ〜」と感じただけだったが、実際に使ってみると、「これは新しいカメラの使い方ができる」と感心した。スマイルレタッチやオブジェクト削除といった編集機能は使っていないが、「単なる静止画にちょっとした動きを付けられる」ところにZoeの価値があると思う。例えば食事中の写真を撮るときも、料理だけでなく、乾杯のシーンや、友人や恋人がパクッと食べているシーンなども、動きがある方がライブ感が伝わる。

 そして筆者が特に感心したのが、その日(あるいはイベントごと)の写真や動画を30秒のハイライト動画に自動で編集してくれる「ビデオハイライト」だ。これは旅行、イベント、記念日など、撮影枚数の多いときほど楽しめる。効果も複数選べるし、表示する写真や動画も毎回変わるので、同じイベントで何度も楽しめる。デジカメやほかのスマートフォンで撮影した写真も自動で日付ごとに分類して、ビデオハイライトを生成してくれるので、筆者は直近の2年間に撮った写真はすべてHTC J Oneに入れて見返している。

photophoto Zoeで記録しておくと、こうしたイベントのライブ感も伝わってくる(写真=左)。サムネイルの先頭をタップすると、ビデオハイライトが始まり、思い出を楽しく振り返られる(写真=右)

 動く静止画とビデオハイライトのおかげで、スマートフォンのカメラの新しい楽しみ方を体験できた。冬にHTCスマートフォンがラインアップされないのは残念だが、Zoeはぜひ今後のモデルにも継承してほしい。

 もうひとつ述べたいのが「デュアルフロントスピーカー」だ。スマートフォンのスピーカーは貧弱なものが多いが、HTC J Oneでは正面に2つのスピーカーを搭載したことで、音が明瞭に聞こえる。ちゃんと音楽を聴きたいときは外部スピーカーとつなぐことが多いが、YouTubeでちょっと動画を視聴したり、ゲームをしたりする程度なら、この内蔵スピーカーで十分。また、筆者は移動時にauの「うたパス」をHTC J Oneで聴くことも多いが、イヤフォン接続時のBeats Audioの音質も申し分なく、ポータブル音楽プレーヤーとしても最適なマシンだと感じている。

 4.7インチというサイズ感も、実はちょうどよかったりする。5インチだと大きすぎるし、だからといって4.3インチだとちょっと小さいかな……と。4.7インチは筆者が片手で操作ができるギリギリのサイズであることに加え、解像度もフルHDと妥協しなかったことも気に入っている。スマートフォンの老舗メーカーらしく動作も安定しており、操作性も満足している。一方、画面下のキーは2つでなく3つにしてほしい、電源キーが上にあるので片手(左手)で押そうとすると、誤って右側面のボリュームキーを押してしまう、日本語入力システムがいまひとつ、防水だったらバスルームでも音楽を聴けるのに……など不満もあるが、まあすべての要求を満たす完ぺきなスマートフォンは、なかなかないですよね、ということで。

 こうして振り返ると、HTC J Oneは五感のうち、触覚(フルメタルボディ)、視覚(ビデオハイライト)、聴覚(デュアルフロントスピーカー)を満たすスマートフォンだった。ちなみにXperia Zは「ガラスの一枚板」と「モバイルブラビアエンジン2」から、そしてXperia Z1は「さらに美しくなったガラスの一枚板」「明るく撮れるカメラ」「X-Reality for mobile」から、視覚の満足度が非常に高かった(視覚だけならXperia Z1>Z>HTC J One)。次点として、三辺狭額縁設計を施したシャープの「AQUOS PHONE Xx 302SH」も、視覚を満足させる一台として推したい。

 五感のうち、残る味覚と嗅覚をスマホで満たすのは難しそうなので(その昔、“いい匂いがする”アロマケータイなるものもあったが)、五感ならぬ“三感”に訴えるスマートフォンをいかに開発できるかが、メーカーの腕の見せ所ではないだろうか。もちろん三感以前に、使い勝手やバッテリーの持ちなど、スマホとしての基本性能を高めることも重要だが、初期のAndroid端末と比べると、今のスマートフォンは性能が安定しており、使い勝手やスペックの差は減りつつある。だからこそ、今後は人間の感性に訴えることが重要なポイントの1つになるだろう。2014年も「うおお!」と思わせるスマートフォンの登場を楽しみにしている。

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